ロイヤリティ向上に貢献するPost Purchaseの可能性
Narvar設立以前は、William Sonoma、Walmartといった小売業や、Appleにてサプライチェーンの最適化に取り組んできたAmit氏。各社で体感した「ロイヤリティ構築の重要性」をサービスに落とし込むべく、2012年にNarvarを設立したと言う。
「ECを今ほど多くの顧客が利用する以前は、『顧客が先に代金を支払い、商品が後から届く』という不安な状況に対して、どこまで最新情報を届け、安心感を与えるかがブランドの努めでした。また、『便利な体験をした顧客は、Amazon・自社ECといったプラットフォームに左右されず、再び同じ場所でものを購入してくれる』ということを、私はApple時代に学んだのです。
しかし、各社がこうした行き届いたサービス提供を1から実現するのは困難です。そのため、ソフトウェアサービスの力を借りて購入商品の追跡や返品プロセスの円滑化に取り組むことにしました」(Amit氏)
すでにアメリカを中心とする世界各国では、Post Purchase分野における施策の重要性が認められ、1,200社以上がNarvarのサービスを活用している。EC市場の成長が見込める日本の市場においても、欧米同様にPost Purchase分野の可能性があると考え、2021年に日本進出を決めた。
「当社のサービスは物流が絡むため、ただ日本語対応するだけでは成立しません。たとえば、アメリカ向けの配送であればFedEx、ヨーロッパ向けにはDHL、日本向けにはヤマト運輸もしくは佐川急便といったようなローカライズが必要です。また、返品についても利便性を高めるために、ローソン、セブンイレブン、ファミリーマートなどとの提携を進めてきました」(Amit氏)
現在、「Ship(出荷)」「Track(追跡)」「Notify(通知)」「Return(返品)」の4つの軸から主にサービス提供を行うNarvar。ブランドがこうした購入後の体験にフォーカスを当てることの意味について、Amit氏は次のように語った。
「ただ商品の行方を開示するだけであれば、すでに運送会社が提供する追跡サービスを活用すれば良いでしょう。しかし、支持されるブランドはタッチポイントのすべてで一貫した体験を提供しています。加えて、こうしたサービスを自社のサイト内で提供すれば、ブランドへの期待値が高い購入直後のマーケティングアプローチを実現したり、商品開発に役立つ意見の収集や配送遅延、パッケージ損傷といったクレームに値するフィードバックの収集も可能です。良好なコミュニケーションを築く手段のひとつとして、日本でもアシックスやテーラーメイドゴルフなどで導入が進んでいます」(Amit氏)