「イシイのおべんとクン ミートボール」やハンバーグ、とりそぼろなどでおなじみの石井食品株式会社。同社の直販チャネル強化を実現すべく、グループ会社の株式会社ダイレクトイシイが運営するECサイトが「無添加調理専門店 イシイのオンラインストア」だ。同サイトは、2020年6月に「ダイレクトイシイ」という名からリニューアル。共働きの増加など、家庭を取り巻く環境にも変化が起きている中で、顧客に直接無添加調理(※石井食品での製造過程においては食品添加物不使用)の加工食品を届ける意義をどう感じているのか。約50年前から通販事業を展開する石井食品は、コロナ禍やDX推進の動きを踏まえて今後どのような売り場作りを目指していくのか。ダイレクトイシイで取締役を務める沼田拓朗さんに話を聞いた。
直販チャネル開拓は1970年代から
スーパーやコンビニなど、小売流通を介した商品展開が目立つ石井食品だが、「実は、1974年には玄米を中心に通信販売を開始していた」と語る沼田さん。インターネットが今ほど普及する以前から、個人顧客からの注文を電話・FAXなどで受け付けており、その歴史はすでにおよそ50年にも及ぶ。
「こうしたチャネル展開は、『メーカーと顧客の距離を縮めたい』という創業一家の思いがあったと聞いています。当時はスーパーや卸を通して多くの顧客に商品を届けることが主流でしたが、試食販売時に配布するリーフレットや新聞広告などで訴求して集客を促していました。直販EC開設当初はあくまで『電話・FAXのおまけ』という状況です」
そこに新風を吹き込んだのが、現在石井食品の代表取締役社長執行役員を務める石井智康さんだ。ITエンジニアの経歴を持つ同氏は、2018年6月に現職に着任。顧客との距離をさらに縮め、価値ある体験提供を実現すべく、現在のイシイのオンラインストアへとリニューアルを行った。
「リニューアルを実施した2020年6月は、コロナ禍初頭とも言える時期です。緊急事態宣言による不要不急の外出自粛要請や飲食店の営業時間短縮などにより、多くの人が自宅で食事をするようになりました。そこで増えたのが、家庭内で食事を作る方々からの『手抜きはしたくないけど、手間をかけずに短時間でおいしい料理を作りたい』『加工食品でも手作り感のあるものや旬の食材が食べたい』といった声です。イシイのオンラインストアは良質な加工食品を提供することでこうした声に応え、家事の負担と罪悪感の軽減に貢献したいと考えました」