顧客に自己解決を求めるのはNG 提案型の発想へ切り替えを
多くのA/Bテストを行う中で、「顧客は思いがけないところで離脱している」ことに加え、「セルフサービスの前提はもう成立しない」と発見した深田氏。そもそも、気づかない、もしくは見ようと思わない顧客に自らフリクションを解決してもらうことは難しい。そこで必要となるのが、提案や解決策を提示するアプローチである。深田氏は、これについて3つの事例を紹介した。
1. 顧客の目的に合わせて遷移先を提案
ECサイトのトップページはコンテンツが多く、顧客がどこに遷移すべきか迷いやすいため、直帰率は高くなりやすい。本事例では、新規顧客に向けて目的別の案内を行うことで116%の購入完了改善率を記録。こうした案内表示には「タイミングも重要」だと深田氏は語る。
「顧客のリアルタイムの行動から、『行き先を見つけることができていない』と検出し、数秒以内に行き先の候補を提示。さまざまな遷移先が存在する場合はテストを重ね、セグメントを分割するなどしながら最適解を確かめていきます」(深田氏)
2. まだ使っていない機能の利用を提案
顧客の動きをとらえたアプローチとしては、未使用の機能利用を促すことも効果的だ。本事例では、商品検討中の顧客に対して商品一覧ページの絞り込み検索機能を案内したところ、購入完了改善率が113%となった。
「お気に入り機能を実装するECサイトは増えていますが、実際に利用している顧客が全体の10%を超えるケースを、残念ながら私はほぼ見たことがありません。こうした有効活用できる機能を適切に提案すれば、利用率を上げるだけでなく、コンバージョンにも寄与するなど高い効果が期待できます。顧客に一方的に使いかたを学んでもらおうとするのではなく、提案型で一緒に覚えてもらう。こうすることで、着実に成果へとつなげることができます」(深田氏)
2. アプリの利便性を案内
本事例では、アプリの存在を周知する目的のパターンAと、ダウンロードキャンペーンの訴求を行うパターンBのふたつのポップアップでA/Bテストを実施。パターンAのほうが成果が大きく、顧客の多くはアプリの存在を知らない、もしくはあまり理解していないことが判明した。そこで、パターンAに絞って訴求したところ、アプリダウンロードボタンのCTRが250%以上を記録したと言う。
深田氏は、「顧客に自ら見て動いてもらう」といったセルフサービスの考えが通用しなくなった背景には、「コロナ禍によるECサイト利用者層の拡大や、情報との付き合いかたが受動的なデジタルネイティブ世代の動きが関係している」と説明する。
「YouTubeやTikTokなど、積極的にレコメンドを行うチャネルに慣れている顧客は、むしろこうした体験に気持ち良さを感じているとうかがえます。つまり、自己解決してくれることを期待しても、動いてくれる可能性は低いということです。提案・提示して行動を促す視点や発想が、今後ますます重要になると言えるでしょう」(深田氏)