5万回の試行錯誤から見えた4つのフリクション 顧客目線で設計を見直そう
深田氏は、SprocketがA/Bテストから得た学びを踏まえながら、具体的なコンバージョン改善策を紹介。ひとつめは、「顧客は思いがけないところで離脱している」という発見だ。さまざまな場面で起きるつまずき(フリクション)を、深田氏は大きく3つに分けた。
1. メニューアイコンでの離脱
ある食品系ECサイトでは、「ハンバーガーメニュー」と呼ばれるメニューアイコンをクリックしたことがない顧客が多かった。そこで「アイコンの意味がわからないのではないか」と仮説を立て、クリックすると商品一覧が現れる旨を吹き出しで表示したところ、購入完了改善率125%を実現。同事例は、「顧客がごく基本的なところでつまずいているという理解にもつながった」と深田氏は語った。
2. カゴ落ち(カートページ・フォームページでの離脱)
ECサイトを運営する多くの企業が持つ課題のひとつに、カートページや申し込みフォームページでの離脱がある。いわゆる「カゴ落ち」と呼ばれる現象だ。とくに初めて購入・申し込みをする顧客は、コンバージョンにつながる最後のアクションへ行くまでの過程で不安を感じ、離脱しやすくなる。
そこでSprocketでは不安を払拭するために、カートやフォームページで「ご不明な点はございますか」と代表的なFAQの項目を表示。不明点の解消を容易にすることで、購入完了改善率109%を記録した。
「FAQページを別途設けていたとしても、カートページから遷移して該当する項目を探すことは顧客にとって手間であり、離脱の要因になり得ます。そもそもFAQの存在を知らない可能性もあるため、こうした施策は有効です」(深田氏)
3. ログインエラーによる離脱
リピーターや会員の場合は、ログインエラー時に離脱する傾向が見られたため、SprocketではID(登録メールアドレス)やパスワードを失念した顧客向けに、リマインドページへ遷移できるポップアップ表示のテストを実施。エラーによりストレスを感じているユーザーは、IDの確認やパスワード再発行ページへのリンクを探すことすら手間と感じる可能性が高いと予測し、すぐに該当ページへたどり着ける工夫を施した。こうして離脱を防ぐことで、購入完了改善率は120%となっている。
さらに深田氏は、「こうしたフリクションは、主に4つに区分することができる」と続ける。
「ひとつめは、コンテンツの存在に気づかないことによるものです。顧客がWebサイトをくまなく見てくれることは稀であり、FAQのような基本的なコンテンツであっても、在に気づかず離脱されてしまうケースは非常に多くなっています。
ふたつめは、コンテンツを見ようと思わないことによるフリクションです。『自分には関係がない』『興味がない』と思われてしまうと、重要な情報でも見落としや見過ごしが発生します。3つめは、コンテンツに到達できないという問題です。先ほどのハンバーガーメニューの意味がわからないケースも、このパターンに入ります。
そして4つめは、コンテンツの内容が理解できないというものです。とくに初めて手に取る商材やこれまで経験したことがないサービスにおいては、こうしたフリクションが発生しやすくなります。Webサイトの離脱を改善するには、フリクションが起きている原因のパターンを理解し、顧客視点で丁寧に体験を設計し直すことが重要です」(深田氏)