デジタルの融合で店舗におけるCXを変革したOMO先進事例
OMOへの取り組みは、特にオフライン側の実店舗にとって急務と言える。たとえば、書店などは、従来から行ってきたような棚づくりをどれだけ工夫しても、来店者はそこで気になる書籍を見つけると手元のスマホでレビュー情報を検索し、そのままオンラインで購入してしまうパターンも少なくない。
「書店やレンタルビデオショップなど、コンテンツをオンラインのデータとしても提供できるようなジャンルの商品を扱う店舗はこうした状況に陥りやすいです。とはいえ、実物の商品を手に取れるリアル店舗ならではの強みというのもあり、OMOでオンラインと融合することにより、その強みをさらに活かしていくことも可能です」(山崎氏)
そうした取り組みの事例として良く知られているのが、Amazon Booksだ。
オフラインとオンラインそれぞれの強みを活かすAmazon Booksの事例
Amazonがアメリカで展開しているリアル書店チェーン「Amazon Books」では、すべての書籍を表紙が見えるように面陳列している。これにより、リアル書店の強みである「偶然の出会い」や「表紙からのインスピレーション」による購買機会を広げることができる。
その反面、通常の棚ざし(背ざし)陳列よりも店舗で扱える商品数は限られることから、来店者が探している書籍が見つからない確率は高くなるが、そうした「探し物」のニーズにはオンライン側で対応可能。オフラインとオンラインそれぞれの強みを活かし、補完し合うことで、CX向上につなげている。
従来の店舗におけるマーケティングの大きな課題のひとつに、パーソナライズがある。たとえば、商品の陳列を来店者ごとに変更するのは物理的に不可能だ。また、店員の接客にはパーソナライズの余地があるものの、来店者全員に対して店員を個別にアサインするのは難しい。
「スマホのアプリを活用することで、店舗でもECのようなパーソナライズに対応したダイナミックマーケティングが実現できるようになります。店舗内での利用に最適化された『ストアモード』機能を搭載するアプリが欧米では流行しており、アパレルブランドのZARAなどが取り入れています」(山崎氏)
店舗でもダイナミックマーケティングを実現するZARAの事例
イギリスのZARA店舗では、公式アプリを使って、来店前から商品を検索・在庫有無を把握したうえで、ブックマークや買い物かごに入れることもできる。店舗内に入ると自動的にストアモードに切り替わり、目的の商品の売場や店員の所在、事前購入済み商品のピックアップカウンターなどを案内したり、店内で実施中のセール情報を告知したりと、スマホがナビゲーターやコンシェルジュのように機能する。商品はRFIDで管理されており、ECのようにスマホで決済を完了し、セルフチェックアウトすることも可能だ。
従来はECの強みだったパーソナライズやリアルタイムの行動・状況に応じたダイナミックな顧客対応が、店舗においても実現されている。