デジタルが世に浸透するにつれ、企業・ブランドは情報をより多くの人へ届け、顧客像を鮮明にとらえることが容易になった。一方で、人々の興味の移り変わりや情報の鮮度が落ちるスピードはより速くなり、それらに対応すべくビジネス構造の変革やDX推進といった具体的な行動の重要度が増しているのも実情だ。優位性を保つには早期にこれらへ着手することも欠かせないが、手段と目的を履き違えないよう、焦らず着実に足元から土台を固める考えも必要と言える。
今回は、さまざまなアプローチ方法がある中で「商品マスタ整備」に目を向け、DX推進に取り組むアサヒ飲料株式会社 経営企画部 プロデューサー 一條 明彦さんにその意図や成果、今後の展望などを聞いた。
月200時間の工数が5分に 商品マスタ整備から業務改革
営業企画部でエリア販促や店頭プロモーション企画を担当した後に業務系システム基盤構築など経営の土台固めに従事し、2018年より経営企画部で生産性向上、新価値創造の両側面からアサヒ飲料のDX推進に携わる一條さん。RPAを活用した業務自動化・効率化などを実現してきた中である日、POSデータを加工する部門担当者から「商品マスタ整備の工数削減、業務改善ができないか」と相談を受けたと言う。
「POSデータの活用は、小売や量販店のデータ開示が加速したこの10年ほどですでに盛んに行われていました。消費者への直販ルートではない業態については、基本的に商品を販売してくださる小売や量販店などのお取引先様からデータを提供してもらい、売れ行きの把握や今後の販促の方向性を検討しています。POSデータはアサヒ飲料にとってもたいへん重要な情報源と言えますが、お取引先様ごとに独自のフォーマットで整備されており、分析できる状態にするには人の手を加えて統一化する必要がありました」
消費財の中でもとくに商品の改廃が激しい飲料は、「年間約1,400種類もの新商品が世に出ては消えている」と語る一條さん。一度販売した商品のパッケージや内容量をリニューアルして販売する際には、新たなJANコードを発行するという業界の慣習が存在するため、「集約JAN」という形で同銘柄の商品を束ねるといった作業も分析時には必要となる。また、昨今はたとえば「フレーバーウォーター」のような新ジャンルの登場や内容量の多様化が進み、人力で作業する中で区分にばらつきが出るといったミスも生じていたと説明する。
「商品マスタは営業、マーケティング活動の原点と言えるデータです。売上や店頭売価の推移、たとえば100店舗中何店舗に入っているかといった導入率を導き出す足元のデータが間違ってしまうと、正しい成果を見ることができなくなります。生産性・正確性双方の側面から、抜本的にやりかたを変えないといけない。そう考え、情報収集をしていたところ『Lazuli PDP』に出会いました」
コロナ禍以前からリアルの展示会やセミナーなどに頻繁に足を運び、積極的に情報を収集するタイプであった一條さん。メーカーとしては自社のデータだけでなく、POSデータとして開示される他社データの活用も打ち手検討において欠かせないが、毎週発売される新商品のすべてを把握し、適切な分類分けを施すことは人の手では困難だ。ところが、Lazuli PDPでは「NINJA AI」によって自動的にデータクレンジングがなされるため、「ある種『正解』を持つことができた」と一條さんは続ける。
「これまでは正解を導き出すために、担当者全体で月200時間程度の工数が費やされていました。今はこれが5分程度に短縮されています。分析の精度も上がり、浮いた工数はAIが導き出した商品マスタデータからさらに深い発見を得る分析業務などにあてています」