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国内外の事例に学ぶ コロナ禍で消費者のSNS活用が広がる今、企業が行うべき発信とは

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2020/09/18 07:00

事例から見る コロナ禍で浮き彫りになったアーンド活用の大切さ

――コロナ禍で上手にSNS活用を行っている企業・ブランドの実例をご紹介ください。

野村 当社が担当した案件を例に挙げると、WHO(世界保健機関)はコロナ禍におけるSNS活用にいち早く取り組んでいました。ソーシャルグッドの取り組みとしてインフルエンサーを募ったところ、チャリティキャンペーンにもかかわらず多くの人々が手を挙げ、手指消毒の仕方を各々が個性溢れる方法で発信したところ、多くの共感を集めることに成功しました。また、金融や交通インフラ企業のローカルビジネス支援の取り組みも、企業のスタンス表明としては印象的な取り組みであったと言えます。BtoBtoCのビジネスを行う企業が、B(パートナー企業)もC(利用者)も巻き込んだプラットフォーマー的な動きを率先して行うことで、自社のビジネスの重要性を伝える。平時における顧客獲得などの取り組みと比べても、今の時代にマッチした有効なメッセージ発信であると言えます。

後藤 ユニークな取り組みの例を挙げると、すみだ水族館がゴールデンウィークに開催した「緊急開催!チンアナゴ顔見せ祭り!」は大きな話題を集めていました。チンアナゴの動画をただ配信するだけでなく、「チンアナゴが人間の顔を忘れてしまいそうなのでご協力ください」と発想を転換することで、消費者巻き込み型の企画に発展できた好例と言えます。また、3月のトイレットペーパー品薄時にユーザーの不安を一掃する観点で丸富製紙が行った情報発信も印象的でした。自社内のトイレットペーパーの在庫や配送業者のトラックが出入りする模様を動画で撮影し「安心してください」と発信。製紙業界のみならず物流・小売業界の混乱の抑制にも貢献した同ツイートは、大きな反響を集めました。

野村 新型コロナウイルス感染症の流行は、ブランディングの重要性に気づく良いきっかけだったと言えます。これまでは、都心の一等地に実店舗があることが大きなステータスとされていましたが、自由に出歩くことが推奨されない状況下では、それも効力を発しません。消費者との接点がオンラインにシフトすればするほど、大企業であれ、スタートアップであれ、ひとつのブランドとして横並びになりますから、自社を選んでもらうためにもブランディングは必要不可欠と言えます。

 ブランディングを強化する上では、顧客が評価する仕組み、戻ってきやすい仕組みを構築しなくてはなりません。アーンドをフル活用するには、良質な顧客体験の提供も必要です。シェアしたくなる環境やサイクルをどう作れるかが大きな鍵を握ります。自社アプリで顧客を囲い込む企業も多いですが、消費者のスマートフォンに入り、かつホーム画面に入るアプリの数には限りがあります。その中にいち企業・ブランドが入り込むことは非常に難易度が高いですが、SNSはほとんどの人のスマートフォンのホーム画面に入っていることが多いはず。うまく活用しない手はありません。

 また、SNSもスーパーアプリ化が進んでいます。Facebook社がFacebook MessengerとInstagramのDM機能統合のテストを行っている旨が先日報道されていましたが、こうした各プラットフォームの動きの背景を理解することも必要です。私はこの動きに対し、今のSNSに不足している購買後のカスタマーサポートの強化という目論見があるのではないかと考えています。SNS経由で購入した顧客の負の声をチャネルを変えずに拾い上げ、リアルタイムにトラブルシューティングしていく。情報に溢れ、ブランドスイッチも速い時代において、継続購入につながるアプローチやフォローを迅速に、そしてシンプルに行うことは非常に重要です。SNSでこうした要素が補完できれば、より取り組みの重要度が増す企業・ブランドも多いのではないでしょうか。

後藤 日本の人口は減少の一途を辿っていますが、SNSの利用者は今後も増加し、日本のインフラとして発展していくことは間違いありません。そんな中で、既存のSNSのアップデートはきちんとキャッチアップしつつ、近年のTikTokのように新たなSNSの動向もしっかりと追い、自社に合いそうなものは臆せずどんどん活用してみる。こうしたチャレンジ精神も今後はよりいっそう求められます。

 SNSは、あらゆるファネルの消費者へアプローチできるツールです。多方面へアプローチできるからこそ、新規顧客と既存顧客への発信内容をSNSごとに分けるなどの工夫も必要とされますが、無料から始められて情報を誰にでも届けることができる、この利点を存分に活用していただきたいと感じています。

野村 これは究極かもしれませんが、企業が広告に大金を使って商品のことを一方的に告知しなくとも、体験した消費者が自ら商品のスペックや良い点を語ってくれ、他の消費者が購買者となるサイクルが中心になる時代が近い将来訪れるのではないかと私は考えています。オウンドメディアやペイドメディアから発信される情報に抵抗感を覚える消費者もいる時代、消費者の声に耳を傾けながら協業型マーケティングに積極的に取り組むことで、アーンドメディアから良い結果が生まれる可能性も十分にあります。ダニエル・ウェリントンは、Instagramにアップされたアーンドの投稿の中から反響が良いものをリポストし、短期で大きな売上につなげています。こう聞くと容易に聞こえるかもしれませんが、投稿を促進させたり、潜在顧客に刺さるコンテンツを選んだりするに技術は必要です。日本企業は、まだまだ消費者の力を上手く活かしきれていないと私は感じています。コントロールできない情報をどうプラスに活かしていけるか、これを突き詰め実践を重ねた企業は成果を残せるはずです。

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