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国内外の事例に学ぶ コロナ禍で消費者のSNS活用が広がる今、企業が行うべき発信とは

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2020/09/18 07:00

企業のSNS活用は運用目的の整理から 使い分けで多角的な表情を見せよう

――ユーザーが用途別にSNSを使い分ける今、企業はどのようなスタンスでSNSを活用すると良いでしょうか。

野村 私はInstagramのような視覚で訴えかけるSNSを「右脳メディア」、Twitterなどテキスト主体のSNSを「左脳メディア」と呼んでいますが、人の目に見えない「企業の顔」を視覚的に訴えられる点に右脳メディアのおもしろみがあると感じています。たとえばInstagramに投稿する写真ひとつにしても、「どんな色・景色をきれいだと考えているか」「どういった人にどういった使いかたをしてもらいたいのか」といった企業のスタンスが色濃く表れますよね。

 また、コンテンツマネジメントの視点からとらえると、同じ右脳メディアでも活用の仕方は分かれます。なぜなら、時間の概念が異なるからです。たとえば、動画で視覚的に訴えるという意味ではInstagramもYouTubeも情報発信が可能ですが、現時点でInstagramは、ストーリーズの投稿も含め、フロー型で現在及び近い過去にフォーカスしているメディアと言えます。一方でYouTubeはストック型ですので、より遠い過去でも閲覧しやすい構造になっています。

 使い分けについては、インフルエンサーからも学べるものがあると思います。たとえば、HIKAKINさんはYouTuberとして活躍していますが、彼自身は複数のSNSを活用していますよね。彼のSNSを見ると、それぞれで発信内容の方向性を変え、異なる顔を持っているように感じられるはずです。自身の軸をぶらすことはありませんが、YouTubeから発信を始めたインフルエンサーがサブチャンネルとしてInstagramを活用する、インスタグラマーが長尺の情報発信ツールとしてYouTubeを使うなど、より深く自分を理解してもらうための使い分けを各自で行っています。企業のアカウント運用もこうした位置づけができると、より発信内容に磨きがかかるはずです。

後藤  SNSユーザーの調査データを見ても、Instagramは「好きなことや趣味に関する情報発信に使っている」という回答がほかのSNSよりも多く、自己表現ツールとして活用されていることが見受けられます。また、これまではセレンディピティな出会いを得られるメディアの代表格としてTwitterが挙げられていたかと思いますが、最近はInstagramにもその傾向が強まっています。「発見タブ」の実装や該当箇所への広告出稿のニーズからも、偶然の出会いの創出といった需要の増加がうかがえます。

――企業が今後SNS運用を行う上で注意すべき点について教えてください。

野村 SNSは無料でアカウント開設できるがゆえに、運用の目的を整理できていないアカウントがまだまだ多いと感じています。SNSは単なる情報発信ツールではなく、コミュニケーションプラットフォームです。双方向型のコミュニケーションをするのにふさわしい場所であり、かつ企業と個人がつながるだけでなく、個人と個人、消費者同士がつながっている点も大きな特徴と言えます。相手の話を聞いてそれに応えるのがコミュニケーションの基本であり、身体でたとえると口だけに注目してしまう方が多いですが、耳も目も存分に活用し、表現をブラッシュアップする必要があります。アーンドメディアとしてSNSを使い、ソーシャルリスニングを行ったりUGCを取り入れたりといったように、消費者が発信する情報も有効活用することが成功の鍵となります。

 また、先が読めない時代だからこそ、企業は第一原理に立ち返る必要があると私は感じています。海外の企業・ブランドは、コロナ禍で不安を抱く人々に対し「私たちは今の状況をこう考えています」「一緒に頑張りましょう」といった発信・呼びかけを積極的に行っています。マーケティング用語の「3C分析」で言うと、今は「Customer(市場環境・顧客)」「Competitor(競合環境)」を非常に予測しづらい時代です。しかし「Company(自社環境)」は、自社次第でいかようにも変化・適応・維持することができます。今こそ企業のフィロソフィーの部分に立ち返り、共感を得られるメッセージ発信ができるかどうかが、企業の明暗を分けるのではないかと考えています。

後藤 総務省の「平成30年通信利用動向調査」を見ても、SNSを広告の代替手段として活用している企業が多いのが現状です。しかし、企業がSNS活用を行う本来のメリットは、広告費を浮かせられることではありません。野村さんも言うように、消費者の生の声を聞き自社の今後に活かせる点、直接顧客とつながれる点に大きな利点があります。これまでは卸業者などが間に入り、直接顧客とやりとりをすることはほぼないという企業・ブランドがほとんどだったかと思います。しかし、SNSがあれば「いいね!」を押す、コメントやDMでやりとりをする、Instagramのストーリーズで反応するといった方法でもコミュニケーションは可能です。つながりを深めるための使いかたが、これからはよりいっそう重要になってくると考えられます。

野村 D2Cが注目を集めているのは、こうしたつながりの作りかたが上手い点にもあると思います。たとえば商品やパッケージの候補を見せ、フォロワーから投票で意見を募るなど商品開発の初期段階からインフルエンサーや消費者の声を積極的に取り入れています。また、SNS上で得た意見をデータとして活用し、OODA(Observe(観察)→Orient(方針策定)→Decide(意思決定)→Act(行動))を高速に回していく、消費者巻き込み型の商品開発も非常に増えています。


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