それぞれの立場で向き合うパーソナライズの形
マーケティングや小売、サービス全般においてパーソナライズがトレンドとなっているが、実際に各社がどのように取り組んでいるのか紹介してもらった。
イープラスではトップページの「おすすめ公演チケット情報」というスペースに、ユーザーの興味に応じて個別の情報が掲載されるような仕組みが動いている。
ログイン時のクッキーで個人を特定する仕組みのため、大きな予算を割いて実装したが、ユーザーがこのことに気づいて価値を感じてくれているのかが不安だと小西氏は語る。
一方、熊村氏は「ユーザーがパーソナライゼーションに気づいてくれないほうが良い」と対照的な考えを明かした。セールスフォース社ではパーソナライズを「1 to Some」と「1 to 1」の2種類に分けて考える。
たとえば1 to Someの場合、過去の平均注文金額が低いユーザーだけに50%オフのバナーを表示したり、ある金額以上の購入を行ったVIPユーザーに対してシークレットセールの招待メールを配信したりしている。
1 to 1の場合、並べ替えのパーソナライズに取り組んでいる。非ログイン状態でページにアクセスした際、アノニマスでありながらも人によって見るページが違うため、トップスを見ているユーザーにはこの商品をレコメンドする、というふうに商品の並べ替えを行ったところ、効果があったという。
ユーザーの個人情報を持たない基本ポリシーを貫くアカマイは、パーソナライゼーションに違った角度で取り組んでいる。
「ユーザーのネットワーク環境や企業側の意思に応じて適切なコンテンツを出すということをやっています。たとえば画像。今はウェブサイトの75%を画像が占めていますが、画像が多いぶんページがサクサク動かないという問題が生じます。どうしてもきれいなコンテンツを出したいウェブサイトと、多少画像が荒くても良いからサクサク動かしたいウェブサイトというふたつの選択肢があった場合、ユーザーのネットワーク環境に応じて画像を最適化して配信することによりユーザー体験を損なわないようにしています」
モデレーターを務める川添氏は、事業会社の立場からこの取り組みをありがたいと話す。
「同じようなことを事業会社が単独でやるには、大きな投資が必要になってしまいます。パーソナライズというひとつの言葉に縛られず、『それって何を解決するんだっけ』『どの粒度で解決するんだっけ』ということを我々はもう少し俯瞰して考え、自分達でできないところはプロの手を借りることが大事だと思います」