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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

E-Commerce Conference 2019 レポート(AD)

[イベントレポ]満足しきった生活者と良好な関係を築くためには「マイナス体験」を取り除くべし

イノベーションの限界をどう突破するか

 イノベーションを起こす時、必ず直面するのが成長の鈍化だ。イノベーションなくして新しいサービスは生まれない一方、細かい部分にこだわりすぎてもサービスや顧客に与えるインパクトはそれほど大きくない。また、イノベーションは必ずしも顧客だけに向けられたものではない。新しい取り組みを始めるにあたり、社内に変革を起こしていくこともイノベーションと捉えられる。各社はどこにイノベーションの限界を感じ、社内外に向けてどのようなイノベーションを起こしてきたのか。

 小西氏は、電子チケットよりも紙のチケットに価値を感じるユーザーが根強くいることにイノベーションの壁を感じたという。

「チケットの高額転売に対する、万全ではないとしてもひとつの対策として生まれた電子チケットですが、使いたがっているユーザーは意外と少ないです。手元に残るという点に紙のチケットの価値を感じているほうが多いので、それと同等のメモリーを電子チケットの世界でも実現してあげることが大事だと考え、現在取り組んでいます」

 自分たちが起こしたイノベーションを相手が超えてくるケースが、転売屋による買い占めbotだ。人の手より素早く良い席を買い占めるというプログラムを、誰がどのように動かしているのか正体が掴めず、「これが効くのでは?」と思って対策を打つものの、相手がどんどんそれを超えたテクノロジーで対抗してくるという。

「この10年間負け続けていましたが、研究を続けることで相手の正体が少しずつわかってきました。とはいえ、さすがに相手のイノベーションを我々だけで越えることは難しいので、アカマイさんのソリューションを使って8~9割くらいは駆逐できたと思います」

 このように、日々進化するテクノロジーの領域は“餅は餅屋”理論で支援事業者側に任せたほうが良いと語るのは熊村氏だ。

「広告やプロモーションはユーザーが受け身になるテクノロジーですが、Eコマースの場合は買い物をするユーザーが直接、しかも能動的に触るテクノロジーです。この領域の技術進化は目まぐるしいので、餅屋である我々に任せてもらったほうがEC事業者さんは本当の意味でのイノベーションに頭を使えると思います」

 老舗アパレルブランドの例をとって、デジタルトランスフォーメーションから学べるのは「スピードが命」という教訓だと熊村氏は語る。一方で、スピーディーなイノベーションの難しさについてもこう分析する。

「少しでも遅れると残念な結果になるという意味ではスピードが命なのですが、実際のところスピードを伴ってイノベーションを起こそうという話にはなかなかなりません。なぜなら、ほとんどのイノベーションは『後がないシチュエーション』で結果的に起こることが多いからです。先行事例を見ていると、企業が危機的状況に陥って初めてイノベーションが起こるので、イノベーションを起こしてやろうと思って何かを始めることはあまりないはずです。企業が危機的状況になかったとしても、選んだ戦略に対して愚直にコミットしていくことが非常に重要だと思います」

 伊東氏は、イノベーションを起こそうとした結果、かえってパフォーマンスの質を下げてしまった事例を紹介した。

「こちらは、日本の某Eコマースサイトのトップページに含まれているリクエスト数を可視化したものです。SNS連携や第三者配信広告、ユーザーの動向を測るための分析エンジンといった新しい手法を取り入れ続けた結果、トップページに含まれるリクエスト数が929個もカウントされました。果たして企業はこのリクエストを全部把握できているのでしょうか? 実店舗で行うようにウェブサイトでも時折棚卸しを行って本当に必要なものを見極めなければ、かえってサイトのパフォーマンスが悪くなり、直帰率が上がって売上に悪影響を及ぼす可能性があります」

 「速度で体験を高める」というより、「速度が遅いというマイナスを取り除く」ことが重要だとわかる好例だ。

次のページ
相反する問題にどう取り組んでいくか

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この記事の著者

渡辺 佳奈(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、現在はコーヒーショップで働く傍らライターとしても活動する。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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