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2022年12月1日(木)10:00~16:10(予定)

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[イベントレポ]満足しきった生活者と良好な関係を築くためには「マイナス体験」を取り除くべし

 日本の生活者は困っているのか?――モデレーター 川添隆氏の、そんな問いかけから本セッションは幕を開けた。情報や選択肢が多すぎる現代でEコマースや小売の顧客体験を考えるにあたり、コンビニにおけるレジ待ちのように「便利な一方で生活者が感じるマイナスの体験」を潰していくことが重要であるというテーマのもと、3名のパネリストがそれぞれの立場から議論を交わした。

5年前と変わらないこと、変わったこと

モデレーター:川添隆氏[ビジョナリーホールディングス]
パネリスト:小西雅春氏[イープラス]/熊村剛輔氏[セールスフォース・ドットコム]/伊東英輝氏[アカマイ・テクノロジーズ]

 最初のテーマは「5年前と変わらないこと、変わったこと」。デジタルマーケティングについて話す時、つい最新の技術やトレンドばかり追いかけてしまいがちだが、一方で本質的に変わらない部分もあるはずだ。

 イープラスでインフラ領域を担当している小西氏は、変わらないこととして転売とbotの存在を挙げた。また、変わらない取り組みとしてメールによるアプローチを昔から行っている。実際、メールからのCVは今も昔も根強いという。現在はビッグデータを活用し、メールに掲載する情報の精度を高めていくという新たな取り組みも始めている。

株式会社イープラスシステム部 システム運用グループ 統括マネージャー 小西雅春氏
株式会社イープラス システム部 システム運用グループ 統括マネージャー 小西雅春氏

 一方で、スマホ移行は大きな変化と言える。セキュリティなどの観点からガラケーのサービスを終了する方向だ。現在はほぼ8割以上がスマホ利用のため、以前はPC、スマホ、ガラケーの3軸で施策を考える必要があったが、スマホの取り組みに集中できるようになったのは嬉しい変化だという。また、依然としてなくなることのないbotに対し、専用のAIが最近登場した。正体が掴めず対策のとりようがなかったbotに対処できるようになった実感があると小西氏は語る。

 セールスフォースでデジタルマーケティング領域のエバンジェリストを務める熊村氏は、変わらないことを「ECをはじめとするデジタルそのものの立場」だと主張。経営陣から予算配分や人材確保において後回しにされてしまうデジタル部門の立場は、実のところまだ変わっていない気がすると氏は指摘する。

 また、ビジョンの大きさと目先の施策のアンバランスさも日本企業に特有の変わらない傾向だという。デジタルトランスフォーメーションなどのキーワードに感化され、5年先、10年先のビジョンは見据えるものの、明日から何をするかという現実解を見出せないところに弱点があると印象を語った。

株式会社セールスフォース・ドットコムエバンジェリスト / プリンシパル ビジネス コンサルタント 熊村 剛輔氏
株式会社セールスフォース・ドットコム エバンジェリスト / プリンシパル ビジネス コンサルタント 熊村剛輔氏

 アカマイテクノロジーズでウェブパフォーマンス製品のマネージメントに携わる伊東氏。世界に24万台あるサーバーからウェブのコンテンツやゲーム、ストリーミングビデオの配信を行うというアカマイのテクノロジー自体は5年前から変わっていないが、利用者がインターネットに接続して、好きなタイミングで好きなコンテンツにすぐアクセスしたりといったことが、ここ数年で当たり前に行われるようになってきた。

 また、アカマイをはじめとする海外のメーカーが着々と日本語対応を行い、日本人に優しいUIや機能を作って進出しているため、物流の問題は別として国境を越えてEコマースを展開する際の垣根がなくなっていると伊東氏は語る。

アカマイ・テクノロジーズ合同会社Web Experience Product Management シニア・プロダクト・マネージャー 伊東英輝氏

アカマイ・テクノロジーズ合同会社
Web Experience Product Management シニア・プロダクト・マネージャー 伊東英輝氏

それぞれの立場で向き合うパーソナライズの形

 マーケティングや小売、サービス全般においてパーソナライズがトレンドとなっているが、実際に各社がどのように取り組んでいるのか紹介してもらった。

 イープラスではトップページの「おすすめ公演チケット情報」というスペースに、ユーザーの興味に応じて個別の情報が掲載されるような仕組みが動いている。

 ログイン時のクッキーで個人を特定する仕組みのため、大きな予算を割いて実装したが、ユーザーがこのことに気づいて価値を感じてくれているのかが不安だと小西氏は語る。

 一方、熊村氏は「ユーザーがパーソナライゼーションに気づいてくれないほうが良い」と対照的な考えを明かした。セールスフォース社ではパーソナライズを「1 to Some」と「1 to 1」の2種類に分けて考える。

 たとえば1 to Someの場合、過去の平均注文金額が低いユーザーだけに50%オフのバナーを表示したり、ある金額以上の購入を行ったVIPユーザーに対してシークレットセールの招待メールを配信したりしている。

 1 to 1の場合、並べ替えのパーソナライズに取り組んでいる。非ログイン状態でページにアクセスした際、アノニマスでありながらも人によって見るページが違うため、トップスを見ているユーザーにはこの商品をレコメンドする、というふうに商品の並べ替えを行ったところ、効果があったという。

 ユーザーの個人情報を持たない基本ポリシーを貫くアカマイは、パーソナライゼーションに違った角度で取り組んでいる。

「ユーザーのネットワーク環境や企業側の意思に応じて適切なコンテンツを出すということをやっています。たとえば画像。今はウェブサイトの75%を画像が占めていますが、画像が多いぶんページがサクサク動かないという問題が生じます。どうしてもきれいなコンテンツを出したいウェブサイトと、多少画像が荒くても良いからサクサク動かしたいウェブサイトというふたつの選択肢があった場合、ユーザーのネットワーク環境に応じて画像を最適化して配信することによりユーザー体験を損なわないようにしています」

 モデレーターを務める川添氏は、事業会社の立場からこの取り組みをありがたいと話す。

「同じようなことを事業会社が単独でやるには、大きな投資が必要になってしまいます。パーソナライズというひとつの言葉に縛られず、『それって何を解決するんだっけ』『どの粒度で解決するんだっけ』ということを我々はもう少し俯瞰して考え、自分達でできないところはプロの手を借りることが大事だと思います」

株式会社ビジョナリーホールディングス(株式会社メガネスーパー)執行役員 デジタルエクスペリエンス事業本部 本部長 川添 隆氏
株式会社ビジョナリーホールディングス(株式会社メガネスーパー)
執行役員 デジタルエクスペリエンス事業本部 本部長 川添隆氏

イノベーションの限界をどう突破するか

 イノベーションを起こす時、必ず直面するのが成長の鈍化だ。イノベーションなくして新しいサービスは生まれない一方、細かい部分にこだわりすぎてもサービスや顧客に与えるインパクトはそれほど大きくない。また、イノベーションは必ずしも顧客だけに向けられたものではない。新しい取り組みを始めるにあたり、社内に変革を起こしていくこともイノベーションと捉えられる。各社はどこにイノベーションの限界を感じ、社内外に向けてどのようなイノベーションを起こしてきたのか。

 小西氏は、電子チケットよりも紙のチケットに価値を感じるユーザーが根強くいることにイノベーションの壁を感じたという。

「チケットの高額転売に対する、万全ではないとしてもひとつの対策として生まれた電子チケットですが、使いたがっているユーザーは意外と少ないです。手元に残るという点に紙のチケットの価値を感じているほうが多いので、それと同等のメモリーを電子チケットの世界でも実現してあげることが大事だと考え、現在取り組んでいます」

 自分たちが起こしたイノベーションを相手が超えてくるケースが、転売屋による買い占めbotだ。人の手より素早く良い席を買い占めるというプログラムを、誰がどのように動かしているのか正体が掴めず、「これが効くのでは?」と思って対策を打つものの、相手がどんどんそれを超えたテクノロジーで対抗してくるという。

「この10年間負け続けていましたが、研究を続けることで相手の正体が少しずつわかってきました。とはいえ、さすがに相手のイノベーションを我々だけで越えることは難しいので、アカマイさんのソリューションを使って8~9割くらいは駆逐できたと思います」

 このように、日々進化するテクノロジーの領域は“餅は餅屋”理論で支援事業者側に任せたほうが良いと語るのは熊村氏だ。

「広告やプロモーションはユーザーが受け身になるテクノロジーですが、Eコマースの場合は買い物をするユーザーが直接、しかも能動的に触るテクノロジーです。この領域の技術進化は目まぐるしいので、餅屋である我々に任せてもらったほうがEC事業者さんは本当の意味でのイノベーションに頭を使えると思います」

 老舗アパレルブランドの例をとって、デジタルトランスフォーメーションから学べるのは「スピードが命」という教訓だと熊村氏は語る。一方で、スピーディーなイノベーションの難しさについてもこう分析する。

「少しでも遅れると残念な結果になるという意味ではスピードが命なのですが、実際のところスピードを伴ってイノベーションを起こそうという話にはなかなかなりません。なぜなら、ほとんどのイノベーションは『後がないシチュエーション』で結果的に起こることが多いからです。先行事例を見ていると、企業が危機的状況に陥って初めてイノベーションが起こるので、イノベーションを起こしてやろうと思って何かを始めることはあまりないはずです。企業が危機的状況になかったとしても、選んだ戦略に対して愚直にコミットしていくことが非常に重要だと思います」

 伊東氏は、イノベーションを起こそうとした結果、かえってパフォーマンスの質を下げてしまった事例を紹介した。

「こちらは、日本の某Eコマースサイトのトップページに含まれているリクエスト数を可視化したものです。SNS連携や第三者配信広告、ユーザーの動向を測るための分析エンジンといった新しい手法を取り入れ続けた結果、トップページに含まれるリクエスト数が929個もカウントされました。果たして企業はこのリクエストを全部把握できているのでしょうか? 実店舗で行うようにウェブサイトでも時折棚卸しを行って本当に必要なものを見極めなければ、かえってサイトのパフォーマンスが悪くなり、直帰率が上がって売上に悪影響を及ぼす可能性があります」

 「速度で体験を高める」というより、「速度が遅いというマイナスを取り除く」ことが重要だとわかる好例だ。

相反する問題にどう取り組んでいくか

 最後のテーマは「相反する問題にどう取り組んでいくか」。オンラインとオフライン、社内の旧勢力と新勢力、ROIと直感、業績とブランディングといった、相反する二項をどう取り込んでいるのか、三者に語ってもらった。

 チケット業界ではイープラスのようなプラットフォーマーによる販売のほか、今は野球チームなどの興行主による直販もメジャーになってきた。プラットフォーマーとブランドの対立構造はアパレル業界などでも見られるが、小西氏はどう捉えているのか。

「プレイガイドにはプレイガイドの強みがあると思っています。いろんな種類のチケットを取り扱っているので、興行の相関性がデータから見えてきます。たとえば、『50代のプロ野球ファンはこのロックミュージシャンのことも好き』というデータは、幅広いチケットを取り扱っているから得られるものです」

 熊村氏は、二項対立が生じる原因はボトムアップの組織にあると指摘し、対立構造を作らせないことがリーダーの役割であると述べた。

「トップダウンの場合は業務が細分化された状態で上から業務命令が下るので、相容れない部門同士をリーダーがコントロールしやすいシチュエーションであると言えます。いかに二項対立を作らずイノベーションを起こすかが重要です。優秀なリーダーは、対立構造が生まれた時点でマズいと感じるはずです」

 縁の下の力持ちであるインフラのソリューションを提供するアカマイ。派手なテクノロジーではないぶん、導入検討時にマネージャー層から理解を得られず説得に苦戦する担当者も多そうだ。

「企業としてEコマースビジネスを始めたのは良いものの、予算や人手といったリソースをなかなか割いてもらえないご担当者様はまだまだ多い印象を受けます。ただ、世の中の流れとしてEC化率は上がっていて、Eコマースもひとつの重要な店舗だと認識されるようになれば、商品の並べ替えレコメンデーションやサイトパフォーマンスの向上がいかに重要か理解してもらえるはずです。我々は情報提供でサポートするので、ご担当者様には地道に説明してもらい、マネージャー層の理解を得てもらいたいです」

 最後に、モデレーターを務めた川添氏のコメントでセッションは閉じられた。

「新しいテクノロジーや壮大なビジョンへ目を向ける前に、サイトパフォーマンスの低下や転売とbot、社内外の対立構造といった『顧客にとってのマイナスの体験』を拾い上げて芽を摘むことの重要性をお三方のお話から感じました。会場のみなさまも、ECサイトの小さな困りごとに目を向けて改善や対策を行ってゆくと良いのではないでしょうか」

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