お客さまとのつながりから考える、オムニチャネル化のポイント
ランチェスターでは、2017年11月より、ブランドとファンがよりよい関係を構築するためのモバイルアプリプラットフォーム「EAP」をリリースしている。
「EAPが持ついちばんの特徴は、いろいろなサービスを統合できること。クーポンの配信やニュースコンテンツの提供が可能になったり、会員証の機能を持たせることができたり。もちろん、ECサイトと実店舗の垣根なく購買履歴や獲得ポイントは一元化されます。これによって、ユーザーは1人ひとりにパーソナライズされた体験を得ることができるんです。ただし僕たちは、EAPを『アプリ開発ツール』とは呼んでいません。EAPは、iOSやAndroidへの対応、管理画面やAPI、他社のポイントシステムとの連携も簡単にできます。そんな、プラットフォームとしての価値こそがEAPの最大の魅力であり、アプリであることはあくまでもUIのひとつに過ぎない。開発する上でいちばん難しいのも、アプリというフォーマットを作ることではなく、複数のテクノロジーを統合して最適化することなんです」
モバイルアプリプラットフォーム「EAP」は、シンプルで洗練されたUIをベースに、各ブランドのニーズに合わせて最適なデザインや機能の開発が可能。
エンジニア出身の田代さんが設立したランチェスターには、それぞれの分野でのスペシャリストとなるエンジニアたちが多数在籍している。そんな同社だからこそ、高い技術力を要する「トータルな最適化」を実現することができたのだ。
「UXの違いというのは、ユーザーの満足度にとても大きな影響を与えます。僕らがアプリの企画を行う際にもっとも大切にしていることは『どのような機能を持っているのか』ではなく、『どのようなコミュニケーションによってUXを構築したいのか』ということ。多くのアプリ開発には、このUXの視点が抜けていることがとても多いように感じています」
では、同社が手がけたアウトドアメーカー「パタゴニア」のアプリを見てみよう。パタゴニアでは、このアプリを「パタゴニアの製品を選ぶ/買う/長く使うお客さまのためのツール」と位置づけている。
「同社はオムニチャネルやスマホアプリを通じて『どのようにお客さまとつながりたいか』というコンセプトづくりが徹底的にオリジナルでした。彼らの場合スマホアプリは、お客さまとの絆を深め、同社のミッションである環境問題の解決を実現するために存在するもの。製品を通じてお客さまと長くつながりたいと考えているパタゴニアにとって、会員証機能や修繕などの相談といった機能は必須ですが、ポイント付与機能は必要ない。同様に、アプリで配信するコンテンツには、製品のセールス情報は一切含まれていません。同社が支援するさまざまなアクティビティの情報や、環境問題への取り組みを訴求するコンテンツのみを提供しているんです」