積み重ねてきた顧客との関係をデジタルでさらに濃く、深く
スノーピークでは「人生に、野遊びを。」をコーポレートメッセージに、ものづくりのまちとして知られる燕三条の技術を活かし、高品質なアウトドア用品を販売。保証書は一切添付せず、製造上の欠陥が原因の場合は無償で修理を行う、手厚いアフターサービス付きだ。顧客との関係を、「BtoC」ではなく「Bwith-C」と表現。キャンプ場を併設した本社では、スノーピークのスタッフと顧客がともにキャンプをし、社長も混じって語り合うという文化だ。
国内84ヶ所の店舗(2017年12月時点)で販売を行うスタッフも、キャンプを愛するキャンパー。前述のようなキャンプイベントへの案内や、ステップアップ製品の提案を直接顧客に行い、マスコミュニケーションでの宣伝は一切行わない。スタッフのキャンプや製品に関する知識は深く、顧客との関係も当然ながら濃いものとなる。
こうした“手のかかる”スタイルでビジネスを営むうち、時代がスノーピークの背中を押すように、アウトドアブームが到来。また、スノーピーク自身もアウトドア用品の物販だけでなく、アパレルブランドの展開や、地方創生コンサルティングなど事業を拡大。結果的にこの数年は、年20~30%増というペースで売上が拡大していった。
「最近の言葉で顧客エンゲージメントと言われる以前から、当社のスタッフはアナログに、そこを頑張ってきました。『今度キャンプに行かれるということでしたが、テントの立てかたをお教えしますので、ぜひお店にいらしてください』といったコミュニケーションを地道にやってきたんです。アウトドアブームに加えて、簡単・便利なだけでなく、人とのつながり、『この人から買いたい』ということを、世の中の人が求め始めたのだと思います」
ビジネスの急拡大により、個々のスタッフの経験だけにもとづく顧客コミュニケーションに限界が訪れた。経験の浅いスタッフでも、アクションが取りやすいようデジタル化を進めようというのが、今回のSAPソリューション採用の背景にもある。
また、スノーピークでは2009年からポイントプログラムを実施。直販店舗のみならず、商業施設に出店している場合でも、ひとつの会員番号にひもづいた購入履歴を蓄積してきた。オムニチャネルというキーワードが日本で流行する以前から、オムニチャネル施策を実施していたのだ。そこに今回、最先端のデジタルソリューションが投入された形である。
「プロジェクト開始から1年半の現時点では、バックエンドのオペレーションでベネフィットが出ているという状況です。今後、SAP Hybrisのコマース、マーケティングソリューションのポテンシャルが活きてくるのは、事業を横断した顧客接点の創造の部分だと考えています。現状、ポイントプログラムでアウトドア用品の購買履歴しか負えていませんが、当社のアパレルも買っている、キャンプイベントにも来ている、キャンプフィールドを利用したこともあるというお客様はすでにいらっしゃるし、今後そうなり得るお客様もいらっしゃるはずです。SAP Hybrisの機能をフル活用して、次のステップはそこを見ていきたいと考えています」