SNSでモノが売れるのか。ジゲンさんにホントのところを聞く
藤原 マーケターとして、SNSマーケティングをやったほうがいいんだろうなとは思っているんだけど、どこかで100%は信用してないんです。ジゲンさんは、ソーシャルメディア大好きおじさんなんですが(笑)、マーケティングの本質を知ったうえでSNSを使っている人だから、ぜひ話を聞きたいと思いました。そんなジゲンさんと語りたい今回のテーマはズバリ「SNSでモノが売れるのか」。これって、ECの永遠の課題でもあります。ぶっちゃけ、どうなんですか?
ジゲン 僕としては、「売れますわな」としか言えないです。まず、藤原さんもコラムで書かれているように、デジタルでの消費は5%に過ぎず、95%がリアルで買っています。従来のデジタルマーケティングは、たった5%のほうを効率よく刈り取ってきました。効率は良いけれどパイが狭いから、それ以上広がっていかないわけです。
一方で、消費行動へのデジタルのエフェクトを考えると、デジタルへの5%にはもちろん、リアルの95%にも影響を与えています。しかし、その影響をカウントすることは難しすぎるのが現状です。僕はそれを解明したいと思って、Twitterや各種SNSに張り付いています。ただ、インスタ映えがものすごい経済活動を起こしていることは間違いないですよね。どれだけの人が、インスタ映えのために観光地に旅行に行って、スタバのフラペチーノを飲んでいるかということです。
次に、ユーザーの購買行動を左右するうえでもっとも重要なのは、「コンテンツ(商品)とサービス」です。まずはここを充実させることから始めます。2番目に「ユーザー行動」を起こしてもらうことがあり、3番目にようやく「消費行動」になります。インスタ映えは2番目の「ユーザー行動」で、フラペチーノを飲むのが消費行動になるのかな。インスタ映えした結果、フラペチーノがどれだけ売れたかは換算できないけれど、エフェクトを与えていることはわかりますよね。
藤原 そうなると、テレビCMに似ているかもしれませんね。ECに限らず、たとえばレストランでも集客のためには、インスタ映えするメニューが必要だったりしますよね。最近、名古屋のコメ兵のオフィスの近くにも、韓国のチーズが伸びるホットドッグのお店ができまして、若い子たちが食べて、SNSに投稿しまくっているわけです。それを見ていると、インスタ映えのために便乗するのは嫌なのですが、一方でユーザーの行動が変わっているならば、そこにフィットした商品を開発していくことも必要なんだろうなと思います。でも同時に、それに媚びてもいけないなとも思います。
ジゲン そのご意見も示唆に飛んでいて、そもそもソーシャルメディアとは何かというところに行き着きます。SNSは、パーソナルメディアの集合体です。これまで、四大マスメディアが発信する情報を受容するしかなかった人たちが、自ら発信するメディアを持ったということです。藤原さんも、僕も、メディアを持ちました。手放しますか? 受容するだけに戻りますか? 絶対に止まらないですよね。「インスタ映えの流行はもうすぐ廃れる」と揶揄したところで、パーソナルメディアの流れは止まらないです。
ただし、ある程度の段階が来ると、「情報を受容するだけでよい」人たちも出てきます。実は先日、神戸の異人館に行ってきました。すると、異人館を改装したスタバを見に来た、関西弁じゃない女の子4人組を見つけました。みんなで「インスタ映えだ」って騒いでいるけれど、その場で撮ってその場でアップするのはふたりだけで、残りのふたりは、そのふたりが撮った写真を「インスタ映えじゃん」と言ったり、フラペチーノを飲んでいる。つまり、実際にインスタ映えという行動を起こすユーザーと、インスタ映えに付き合っているユーザーに分かれる。でも、行動を起こすユーザーも自分ひとりでは神戸まで行かないし、付き合っているユーザーも嫌じゃない。わざわざ神戸まで足を運んで、フラペチーノ飲んでいますからね。でも、このユーザー行動、消費行動をCPA換算できないんです。スタバで来店動機をとったら、少しはわかるかもしれませんが。でも、4人を実際に動かすという莫大な経済効果を、Instagramが起こしていることは間違いないでしょう。