三越伊勢丹が実践 追跡ページから別商品の購入を促す方法
では、どうすれば購入後体験を向上し、顧客の定着につなげられるのか。白石氏は、二つの事例をもとに具体的な施策を解説した。
一つ目が、株式会社三越伊勢丹だ。同社はNarvarのソリューションのうち、「Narvar Track(追跡ページ)」を導入している。これにより、配送状況のわかりやすさの追求に加えて、別商品の購入促進やLTV向上に向けた施策を実行しているという。
三越伊勢丹のECサイトは、Narvarのソリューションを導入する以前、購入画面内から配送状況を確認すると配送会社が提供する追跡ページに遷移する仕様だったが、現在は独自の追跡ページが設けられている。白石氏は「三越伊勢丹の世界観が表現されたデザインにできるのも、メリットの一つ」と語る。
同事例におけるポイントが、配送状況を確認するため追跡ページを閲覧した顧客に、新たな商品との出会いを提供できる点だ。三越伊勢丹では、追跡ページの上部に最新のセール情報を表示しているほか、ライブコマースのような動画コンテンツも掲載。また、「晴雨兼用傘」など季節に合わせたおすすめ商品への導線も設け、新たな商品への興味を引き出すなど、売上増につながる工夫を施している。
その結果、三越伊勢丹では追跡ページ経由で商品詳細ページを訪問する顧客の数が、自然流入の約2倍となった。同様に、購入頻度と購入単価もそれぞれ1.2倍に増えている。
従来、配送会社の追跡ページ以降は、顧客のトラフィックを取得・分析するのが困難だったが、自社で追跡ページを用意すれば顧客行動の分析が可能となる。これにより、購入後の関心を踏まえたコンテンツの出し分けやレコメンドなど、マーケティング施策を深められるのは大きな利点だといえよう。
「三越伊勢丹は、自社のお客様に買い物を楽しんでもらうため、実店舗において『予期せぬ出会いの提供』を非常に重視しているそうです。たとえば、実店舗の5階にあるアパレルブランドで商品を購入した後、1階の入り口まで移動する最中に、様々なブランドが目に留まりませんか。ときには、元々買うつもりがなかった商品を購入する場合もあるでしょう。当社は、こうした実店舗と同じような体験を、オンライン上でも提供できるよう支援しています」