教育機関を対象にクラウド型で提供 増収増益予想のチエルとは
一方、学習参考書など教育関連が主力の出版社、旺文社の100%子会社として出発したチエルは、それらの流れとは一線を画す。
メイン商品であり、延べユーザー数が300万人を突破しているクラウド型教材配信プラットフォーム「チエル・ドット・ネット」は、ネット環境が整備されていることが前提であり、パソコンやタブレットが不可欠であることは共通するが、販売の対象は不特定多数の個人ではなく、大学や高校、中学校、教育委員会などの教育機関向けである点が大きく異なる。
チエル自身は、エンドユーザーである教員への教育システム導入の提案や学生のニーズ収集を実施。実際の販売は代理店に委託しているのも大きな特徴だ。
コンピュータによる語学学習支援システム「CaLobo EX」は全国1,330校超、海外20か国以上での導入実績を誇るという。17年10月期に限れば、語学研修プラットフォーム「CaLabo Language」の新製品を、都立高校の3割に当たる50校への導入も実現している。
チエルの売上高はおよそ20億円。規模が小さいのは現実だが、黒字経営を継続中であり、18年3月期も増収増益予想だ。17年3月期に比べて売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれもが、10%以上伸びるとしている。
クチコミ収集が中心で原価負担が軽く、40%前後という高い営業利益率をマークしているイトクロとは対照的に、教材やシステム開発費、研究開発費などの負担も加わるが、チエルの営業利益率も10%超での推移だ。
決算上は負債に計上されるが、教材の導入など複数年契約にともなう「前受金」が経営の安定化に寄与しているともいえるだろう。「製品の保守契約」や「大学への常駐契約」においても、複数年契約による前受金もあるとしている。
アプローチするエンドユーザーもその方法も対照的なイトクロとチエルだが、将来的な少子化対策が不可欠ということでは共通する。