適切な値上げは長い目で見ればお客様のメリットになる?
前回の記事では、顧客単価を上げる方法として、お客様ひとりあたりの商品購入点数を増やす「クロスセル」を主に説明しました。今回は、顧客単価を上げるもうひとつの方法として、「商品単価を上げる方法」とその意義についてお伝えします。
お客様に提供する商品やサービスの価格を何らかの理由で上げる際、次のような悩みや心配ごとにぶつかり、ためらった経験がある方もいるのではないでしょうか。
「もうこの価格でお客様や市場には浸透しているし……」
「価格を上げるとお客様から何を言われるだろうか……」
「そもそも安い価格で提供するほうが『善』なのでは……?」
顧客単価を上げる方法について、前回の記事で「より高単価の商品を販売する」「お客様の買い物1回あたりの商品購入点数を増やす」の2点を紹介しましたが、前者を実現するために商品・サービスの価格を上げるのは、とくにハードルが高く感じてしまうかもしれません。しかし、実は商品・サービスそのものの価格を上げると、長い目で見れば私たち売り手のみならず、買い手であるお客様にもメリットが存在するのです。
いったいそれはどういうことか、を説明する前に、そもそも商品の価格がどのように決まっているのかを考えてみましょう。
「買ってほしい」と思うなら、まず価値を伝えよう
まずは、商品・サービスが購入される「売買」という行為はいつ、どんな瞬間に発生するのか考えてみてください。
こうした行為は、商品・サービスの「価値」が「販売価格」と同等、もしくはそれよりも大きいとお客様に感じてもらえた際に発生するものです。たとえば、自動販売機で110円で販売されている缶コーヒーが店頭で500円で販売されていたら、あなたはどう感じるでしょうか。「ずいぶん高いな」と思う人がほとんどかと思います。反対に50円で売られていたらどうでしょうか。「安いからまとめ買いしよう」と思うかもしれませんよね。
私たちは、こうした判断を無意識のうちに自分の中に根づいた「価値」と比較して行っています。500円の缶コーヒーを高いと感じるのも、50円の缶コーヒーを安いと感じるのも、元々の価値が110円だとわかっているからです。
この原理は大昔から変わっていません。たとえば、原始時代に海辺の住人と山間部の住人との間で物々交換が成立していたのは、相手の持っているものが自分の身のまわりには少なく、お互いに相手の持つものの価値を認めていたからです。
現代では、交換する対象が「お金」という指標に置き換わりましたが、根本の原理原則は変わっていません。商品・サービスの価格がお客様の感じる価値より高すぎる場合、その商品・サービスは売れませんし、「この価格で商品・サービスを買ってほしい」と思うのであれば、まずお客様に「商品・サービスの価値」を伝えていく必要があります。