常に時代の最先端を走り、次々と新しいファッションやアート、カルチャーなどの提案を行ってきたパルコ。その原点とも言える「渋谷PARCO」が2019年11月22日、“次世代型商業施設”として生まれ変わった。渋谷の新しいランドマークとなるビルには、オムニチャネル型売り場「PARCO CUBE」やXR技術を活用した空間演出など、テクノロジーを駆使して買い物客をワクワクさせる仕掛けが多数盛り込まれている。先進的なデジタル戦略を牽引するキーパーソンのひとりである林直孝さんに、渋谷PARCOにおける「デジタルSC(Shopping Center)プラットフォーム」の実現と今後の可能性などを聞いた。
テクノロジーとリアルの融合で店舗における“接客を拡張”する
1969年に池袋PARCOがオープンして以来、パルコは一貫して「インキュベーション」「街づくり」「情報発信」をテーマとして事業に取り組んできた。同社にとって店舗は、この3つの取り組みを体現する場であり、進化させ続ける場とも言えるだろう。とりわけ1973年オープンの渋谷PARCOはいわゆる“渋谷カルチャー”の発信地として先駆的・先鋭的であり、この「原点」をもっとも強く体現する存在にほかならない。
その渋谷PARCOが11月22日、渋谷に帰ってきた。「世界へ発信する唯一無二の“次世代型商業施設”」をコンセプトに掲げ、これまで手掛けてきた「ファッション」「アート&カルチャー」「エンタテインメント」に、「フード」と「テクノロジー」を加えた5つの構成要素で、ジャンルミックスな消費提案や情報発信を行うと林さんは言う。
「テクノロジーについては、これまで『接客を拡張する』をコンセプトとしてさまざまな施策に取り組んできました。その最新の表現が渋谷PARCOです。決して終着点ではなく、進化の通過点という認識ですが、リアル店舗でテクノロジーの価値がダイレクトに提供されるという意味でたいへん重要な節目であると感じています」
パルコでは、2013年頃からテクノロジーを「店舗のサービスや接客を拡張するもの」と位置づけ、パルコ公式EC「カエルパルコ(現在は「PARCO ONLINE STORE」に改称)」やスマホアプリ「POCKET PARCO」などを打ち出し、ネット上での接客プラットフォーム拡張を図ってきた。その後、渋谷PARCOが建て替えのため一時休業した2016年頃から、テクノロジーによる“リアル店舗での接客の拡張”を重要テーマとして認識するようになったと言う。
「3年後に新生渋谷PARCOのオープンが決まっており、そこでテクノロジーを活用し、どのように快適で楽しい買い物体験を提供できるのか考えるようになりました。そのための手段として既存のPOSや在庫データ、先端技術のAIやIoT、ロボット、VR/ARなどの活用を意識するようになり、これらを構想としてまとめたのが2017年に発表したデジタルSCプラットフォームです」