自ら作り、直接顧客とつながり、販売する。化粧品通販は、D2Cという言葉がなかった時代から、D2Cモデルでビジネスを行ってきた。ダイレクトマーケティング手法は時間をかけて洗練され、他業種のEC事業者もそのテクニックを学んできた。
SNSや動画など、新たな手法が登場すればまっ先に取り組むのもこの業界である。化粧品ECは猛者たちが集う熾烈な激戦区なのだ。そこで存在感を放つのは、メンズスキンケアブランド「BULK HOMME」。なぜ、BULK HOMMEは日本のD2Cブランドにおける先駆け的な存在になれたのか。CEO野口卓也さんに話を聞いた。
失敗続きのはてに見出したメンズスキンケアでNo.1の夢
「いつか世の中の常識を変えたい。そのためには起業するのが一番と考えていました」
両親が経営者という環境で育ち、起業することが自然だったというバルクオムCEOの野口さん。しかし、23歳までは事業を立ち上げては倒産を繰り返す、失敗の連続だったと言う。
「それでも諦めきれずに事業の種を探していたところ、『化粧品は良いビジネスになる』と聞いて、少々不純な動機ながら市場を調べたり、ビジネスプランを作成したりしていました」
しかし、すでに市場は厳しい競争状態にあり、新規参入は「簡単じゃない」という結論に至る。ただし、その周辺まで見渡せば、男性向け化粧品が新しい市場として拡大していることもわかってきた。
「自分の行動を振り返っても、男性が見た目を気にするのは普通になりつつあるのに、メンズスキンケア製品の市場には圧倒的なナンバーワンブランドがまだ存在していないように感じました。この市場で成功したら、日本人男性のライフスタイルを変えることができるかもしれない。それはすごくおもしろくて、やりがいがあることじゃないかと思ったんです」
はじめは「化粧品を作る」という発想もなく、ECサイトをはじめようとしたものの、“目利き”ができないことで頓挫する。それで開き直り、「わからないならいっそ、自分で良いと感じられるものをゼロから作ったほうが早いのではないか」と考えるようになったと言う。
「私自身も美容男子というより、ちょっと小ぎれいにしたい程度のライトユーザーでした。そのくらいの男性が人数的にももっとも多く、おそらく使いたいという製品にもまだ出会っていない。そうした男性がスキンケア製品を使おうと思ったときに、第一の選択肢として『BULK HOMMEなら間違いない』と頭に浮かぶような、絶対的なブランドを作りたいと考えたのです」