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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

これからのブランドと接客を考える

1点ものの販売には「人」の価値が必要 デジタル活用の本質をバリュエンスジャパン藤井さんと考える

 2020年以降、小売のありかたや接客の概念に劇的な変化が訪れています。変わりゆく時代の中で、企業・ブランドを運営する方々は自身の個性や長所を活かしながら、新たな挑戦を続けていることでしょう。当連載では、PLAY inc.の四元さんが小売や接客、ECビジネスに携わる方とともに「これからのブランドと接客」について語ります。今回は、バリュエンスジャパン株式会社で、ユーズド・ヴィンテージショップ「ALLU(アリュー)」のEC・実店舗運営に携わる藤井さんとの対談(後編)です。

前編はこちら

客数を伸ばすユーズド・ヴィンテージショップ「ALLU」の藤井さんがデジタル視点で行った実店舗改革とは

ECの王道が通用しないリユースの世界 「人」で安心を担保する

四元(PLAY inc.) ECでリユースを売る難しさについてお聞きしたいのですが、バリュエンスジャパンに入社して感じたことはありますか?1点ものであるがゆえ、効率化とは相反するようにも思えるのですが、売りかたのコツなどがあればお聞きしたいです。

藤井(バリュエンスジャパン) 「1点ものを売る」というビジネスは特殊で、ベンダー時代のコンサルティングのノウハウがまったく通用しませんね。「市場を知り、商品の特性を知る」という入り口の部分は共通していますが、特性を把握するにも時間を要しましたし、ウェブ接客、在庫の効率化、レコメンド強化といったECの王道とされる施策を講じても成果が出ず、焦ったこともありました。

 しかしよく考えれば、リユースを利用するお客様は目的の商品をめがけてALLUに来ることがほとんどです。ですから、希望条件と合致しなければ競合に行くのは当然のことです。最初は「直帰率が高いから改善しよう」と頭ごなしに考えていたのですが、それでは成果が出るわけがありません。お客様は「ユーズド品が欲しいからALLUを見る」のではなく、「ブランドAのバッグが欲しいからリユースショップで探そう」と思っている。こうした特性を理解することで、焦りはなくなりました。

 そのため、ALLUには今の時代とは逆行したサービスを多数取り入れています。リユースを検討するお客様は「真贋は確かか」「写真で見えない汚れや傷がないか」といった不安を抱えながら商品検討を行っています。こうした不安を安心に変えるために、ALLUではあえてカスタマーサポートの電話番号を「カートへ入れる」ボタンより大きく記載して積極的に問い合わせを受け付けるようにしました(コロナ禍のため、2021年4月時点では休止中)。CSでの対応についても、「時間をかけてでも、とにかくお客様が安心するまで情報提供をするように」と伝えています。

 この発想は実店舗でも同様で、お客様と一緒に買い物をしている気持ちで寄り添った接客をすることを実店舗スタッフにも徹底して伝えています。たとえその場での購入にはつながらなくても、お客様に忘れられない体験を提供することができれば、次にリユースで商品を探す際にALLUを思い出してくれるはずです。すぐに買ってもらえるかどうかよりも、良い印象を持ってもらい、次に思い出してもらえるかを重視していますね。

バリュエンスジャパン株式会社 リテール販売推進部 部長 藤井和也さん

四元 それはとても理にかなっていると思います。僕はデジタル化が進んだ利点のひとつに、「お客様との接触回数を増やすコストが劇的に下がった」という点があると考えています。セールスは基本的に接触回数が増えれば増えるほど成約率が上がる、かつ高額商品であるほどその傾向は強いと言われていますよね。リユース、かつブランド品を扱うALLUでECの中にアナログの要素を入れることで、これまでECでは削ぎ落とされていた親切さや接客の要素を補完している。そう考えると藤井さんは、時代に逆行しているようで最先端、かつ効率的なことを行っているように僕は感じます。

藤井 人の手で行うことを非効率と考える方もいるかもしれませんが、私は「人は人のぬくもりから信頼を感じる」と思っています。「このバッグはとても状態が良いですよ」と言葉で伝えたとしても、伝えかたや伝える人によって受け止めかたは大きく異なるはずです。私はデジタルの領域でずっと仕事をしてきたにもかかわらず、テクノロジーの発展とともに寂しさを感じていて、便利になればなるほどコミュニケーションが減っているという課題感を持っています。私が人として持つこうした感覚は、大切にしなくてはならないと考え、施策に反映するよう心がけていますね。

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活用法を誤ると人はデジタルに喰われる 本質の追究が鍵に

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/9086 2021/05/07 07:00

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