顧客1人ひとりにあわせたレコメンドを実現しモチベーションもアップ
コミュニケーターがひと目で顧客を理解できる理由――。それは、コミュニケーターが受電したタイミングでServiceCloudにCTI(Computer Telephony Integration)連携を行い、即座に顧客情報を画面に表示することが可能となったからだ。さらにノース・モールの場合は、CommerceCloudの「代理ログイン機能」を用いることで、たとえばService Cloudの顧客管理画面から、Commerce Cloudの受注画面を利用するといったことが可能になる。同じSalesforceのCloudを導入しているからこその、スムーズな連携が実現している。
「たとえば、『ECサイトのID・パスワードがわからない』というお問い合わせをいただいた際、以前はコミュニケーターだけでは完結できず、お客様には一度電話を切ってお待ちいただき、『お問い合わせ票』という紙の書類にお問い合わせ内容を書き、申請して承認を得たのちに担当部署に書類が回るというフローでした。それが今では、代理ログインでコミュニケーターが自ら解決したり、Service Cloud上の画面から問い合わせ内容を記入した電子書類が立ち上がり、デジタル上で承認フローへ進め、専門部署へ申請することが可能になっています。コミュニケーターがその場で解決できない『二次対応』案件が減りましたし、スピードが上がったことで、予想以上のおもてなしをするために時間が使えるようになりました」(中西さん)
ノース・モールで活用している機能として「ケース」「顧客カルテ」がある。顧客との会話のやりとりを、コミュニケーターがログとして書き残し、蓄積していくものだ。過去のやりとりを見ることで、コミュニケーターはその時の問い合わせ内容も大方予測することができると言う。また、顧客の声は商品ID等に紐付けたデータ抽出が行えるため、たとえば品切れ商品が再入荷した際に「いかがですか?」とオススメする電話をコミュニケーター側からかけるといったアクションも可能になっている。さらに、顧客から寄せられたポジティブな声を積極的に記録するよう指導、それをもとにコミュニケーターを表彰するなど、モチベーションアップにつなげている。
なお、従来は紙に書き記すなどアナログな作業が中心だったことから、Service Cloud、Commerce Cloudが稼働する前に、デジタル入力にまつわる研修をコミュニケーターに実施。管理画面については、順を追ってボタンを押していけば顧客と話をしながらでも操作できるようUIを工夫した。コミュニケーターは新たなデジタルへの変化に戸惑うことなく、「システムが導入されたことで、より良いコミュニケーションが行える」という意識で、仕事に取り組むことができていると言う。
Salesforce導入の成果として、もっとも顕著に表れているのはコミュニケーターによる電話でのアップセルだ。以前は、たとえば最新のカタログに掲載されている3〜5点をレコメンド商品としてあらかじめ設定。すべての顧客に一律同じ商品を勧めていた。導入以降は、1人ひとりの顧客にあった商品を紹介できるようになったと言う。実は、レコメンド商品の充実化についても、Salesforceを導入する目的のひとつだった。
「お客様とお話ししながらコミュニケーターが見ている管理画面に、お客様のご注文商品から、そのお客様にオススメの商品が自動でいくつか表示されます。また、お客様の情報がひとめでわかるようになったことでお話しできる時間も増えましたから、ご興味ご関心もわかりやすくなりました。システムに表示されるレコメンド商品の他にも、コミュニケーターが自ら考えて『私はこれがオススメなのですが、いかがですか?』と自由に、ランダムにご提案できるようになっています。導入前の半年と直近の3ヵ月を比較したところ、コミュニケーターの電話によるアップセル売上金額は3〜4倍になりました。商品の種類については、導入前は決められた3〜5点に限られていたのが、200種類以上の商品を販売できています。お客様それぞれに合わせたご提案ができるようになったことは、『顧客絶対主義』の行動規範からも非常に良かったと思っています」(中西さん)