外より中から!在住外国人は訪日外国人にとってのコンシェルジェ
――今年50周年を迎えるフリーマガジン「Tokyo Weekender」は、ENGAWAさんが創刊当初から制作されているんですか?
牛山 弊社が事業を引き継いだのは2015年からです。Tokyo Weekenderについてまだまだ知らない方もいると思いますので少し説明させていただきます。
Tokyo Weekenderは、1970年に日本在留のジャーナリストによって、日本に住む外国人のために作られた英字のライフスタイルマガジンです。当時はまだ英語で日本について発信するメディアが少なく、在住外国人の方々は、英語で書かれた日本の生活情報をとても必要としていたんです。月1回、2万部発行で、東京都内300ヵ所の外国人が訪れるホテル、レストラン、観光案内所、空港などに置かせていただいています。
東京に住んでいる外国人には認知度が高く、読者層としては、在住しているビジネスリーダーや富裕層の外国人が多いです。例えば、駐在の会社役員の方や東京にある大使館関係の方とか。昨今では在住外国人だけでなく、インバウンド客の閲覧も増えてきています。もちろん紙媒体だけではなく、Tokyo Weekenderウェブ版もあります。
日本の旅やイベント情報などインバウンドに特化した情報だけではなく、東京・日本のライフスタイル(ファッションや文化、人物など)情報をより深く発掘し、外国人スタッフの目線でお届けしています。
――在住外国人の会員組織もあるとお聞きしました。
牛山 Tokyo Weekender独自の会員コミュニティ「Insiders Club」という組織があります。これはほぼ東京在住の2,000名の外国人が会員です。クリスマスパーティなど定期的にイベントを行ったり、Tokyo Weekenderからお得な情報を添えたメールマガジンを送ったりしています。
在住外国人にアプローチしたい企業様には、会員に新商品を品評してもらったり、新しいお店に来ていただくような活動も行っています。外国人自身の生の声をリサーチしたい場合にはとても有効だと思います。
外国人にプロモーションする上で、海外にいる方に直接アプローチすることももちろん有効ですが、日本に対してロイヤリティの高い在住外国人にアプローチし、その人たちに推奨してもらうことも、信頼性が高い情報として受け取ってもらう上では非常に重要なアプローチだと考えます。
――インバウンド客を集客したい場合も、在住外国人にアプローチすることが有効なのですか?
牛山 弊社の外国人スタッフもよく申していますが、「親や友達、友達の知り合いが日本に遊びに来た時はほぼガイドさんだ」と。つまり日本に訪れる外国人にとっては、在住外国人はコンシェルジェ状態なわけです。今はSNSで情報を得る外国人も多いですから、日本在住の外国人の方のSNSで紹介されているレストランやホテルなどの情報は非常に重要視されています。
それではその在住外国人はどうやって情報を得ているかというと、friend to friendで情報交換をしていることが非常に多いです。僕らがメインターゲットとしている東京に住む外国人は、割と狭いコミュニティなのです。つまり漠然と海外へアプローチするよりも、在住外国人から発せられる情報が、インバウンドのお客様にとっても信頼性が高く影響力のある情報であるということになります。私たちも海外旅行をする際、現地の友達とかに情報得たりしますよね? それと同じということです。
――なるほど、確かにそうですね。Tokyo Weekenderさんは東京を拠点に発行されていますが、他のエリアのものはないのですか?
牛山 定期誌ではないのですが、関西エリアと九州エリア版を作った実績もあります。これだけインバウンドが活況になってくると、都道府県やDMO、市区町村単位でのご依頼も多数いただきます。九州版のKyushu Weekenderは旅行をメインテーマに制作しましたが、弊社の外国人スタッフが実際に現地に行き、彼らの目線で発見した世界に通用する地域の魅力を記事にしたものが掲載されています。
――やはり外国人目線で作るという点を重要視しているのですか?
牛山 弊社の強みのひとつは「人」の部分だと考えています。弊社には、アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、中国、台湾、タイ等、10ヵ国以上の外国人スタッフがいます。マーケターやデザイナー、ライター、エディターといったプロフェッショナルです。外国人に向けたマーケティングを行う際には、外国語ができる・できないの話ではなく、そもそもの価値観、文化、宗教などバックグラウンドが違うことを考慮しなくてはなりません。日本の魅力を外国の方に伝えるには、各国、各人に最適なコンテンツを適切な作法で伝えていくことが重要だと思っております。そうなるとより多様なプロフェッショナルな人財がいることは大きなアドバンテージだと感じています。