定量データだけでは不十分 顧客理解のカギは「実感」
前回、CRMで実現したいことをイメージしたうえでシステム環境を整備するべきだと語った山崎さん。今回のテーマは、理想のCRMの実現のためにシステム整備同様欠かせない、顧客データの統合である。
「顧客理解を深めるためには、オンオフ問わず点在している顧客データを統合する必要があります。顧客の行動データはもちろん、アンケートやコールセンターのログといった顧客の声や、施策を行った結果のデータも加える必要があります。どの施策のコンバージョン率が高かったといった施策の評価だけでなく、どの顧客が、どんな施策から、どのような商品を購入したのかという顧客個人にフォーカスしたデータも重要です」
CRMもほかの施策同様、PDCAを回して改善を積み重ねていくべきである。何度も回せば、その回数だけP、つまり計画を立てるステップはめぐってくる。その際に、定量データだけを見ていては、「実感」をともなったアイディアが出てこなくなると言うのだ。
折しも2019年4月、翔泳社から『たった一人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング』(西口一希)が刊行された。実感をともなったアイディアを生み出すヒントが、ここに書かれていると山崎さんは言う。
「施策を実施して反応した顧客が仮に100人だとして、この100人は全員同じ人ではありません。100人がどのような人なのかを、きちんと分析することが重要です。顧客属性や購買傾向の分析はもちろん、実際にアンケートをとって『なぜ買ったのか/買わなかったのか』を直接聞いてしまうのも有効だと思います」
単にデータをまとめるだけではなく、結果とそこに至った理由や背景を掛け合わせる。そうして結果を横断的に見ることができなければ、顧客理解のためのデータとしては不十分なのだ。そして、顧客理解が正確で深いほど、顧客体験(CX)、顧客との関係性、顧客のファン化にも良い影響が出てくることは想像に容易い。