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ブランドは顧客に寄り添う伴走者 重視するのは温度感と余白
川添(ビジョナリーホールディングス) アメリカでは、大手マットレス販売チェーンのマットレス・ファームが会社更生申請をする一方でCasperが台頭するといった情報を受け、「D2Cブランドが既存ビジネスを負かした」という言説も出ているようです。これは増えた額と減った額の整合性がとれていない話なのですが、直接的な影響ではないとは言え、既存ビジネスが顧客理解をないがしろにしてしまったことは認めざるを得ない状況だと思います。
長尾(ヤマト インターナショナル) 弊社は経営方針の一環として、「顧客起点」を掲げています。CITERAとしては具体的な取り組みとして、ロイヤリティの高いファンにアンケートを実施しているのですが、機械的な設問ではなくCITERAらしい親近感を持った聞きかたにアレンジした結果、インセンティブがないにも関わらず、多数の方に回答いただけました。
アンケートで聞いたのは属性のほか、購買方法、ライフスタイル、プロダクトのどこに共感しているか、サービスへの満足度など。集計の結果、自宅で試着ができる「トライアルサービス」があまり認知されていなかったのは意外でした。CITERAは基本ECのみの展開なので、お客様が商品を手に取れるようにと作ったサービスだったのですが、改めて訴求の必要性を感じました。
川添 顧客理解から顧客との関係性に話を進めると、旧来型のブランドと現代型のブランドでは、前者は顧客と取引関係にあり、後者は顧客とコミュニティ的な関係性にあるという話を聞いたことがあります。顧客と双方向でコミュニケーションを取りながら巻き込んでいく、というやりかたができているブランドは少ない気がします。
長尾 顧客を巻き込んでいくビジネスもひとつのやりかただとは思いますが、私たちはどちらかというと顧客に寄り添うことを意識しています。CITERAの服は、お客様が日常をアクティブに過ごせるよう背中を押す伴走者のような存在でありたいと思っているので、メルマガやアンケートを読みもののように作ったり、サンキューレターを送ったり、温度感をすごく大事にしています。
川添 先日あるECサイトの経営者とイベントで話をしたのですが、彼らはブランドの透明性をすごく意識していると感じました。新しい取り組みは「なぜやるのか?」を顧客に伝えていたりと、普通は事業者が顧客に伝えないような内容でも伝えられる関係性が築かれている。長尾さんは、CITERAにおいてコミュニケーションの透明性をどう捉えていらっしゃいますか?
長尾 ブランディングの観点から考えると、ファッションブランドとして「魅せる」部分はあって然るべきなので、すべてをクリアに見せようとは思っていません。お客様の一歩先を行きながら伴走する、そのバランスは難しいですね。なんとなく背景は見せつつ、お客様に想像していただく余白みたいなものを常に残したいです。