販売実績がないとなれない!eBayの公認コンサルタントとは
――ご自身もセラーでいらっしゃる本山さんが、イーベイ・ジャパン公認コンサルタントになられた経緯をお聞かせください。
私は、2012年から日本のアニメフィギュアや家電をeBayに出品しているセラーです。毎月約1,000件の商品を50カ国以上に配送しており、これまでに配送した国を数えると100カ国を超えます。
少子高齢化で日本の市場が縮小する一方、海外のバイヤーは日本の商品を切実に求めています。私は自らの越境EC体験を通してそのことを実感しました。成功体験を持つ者のひとりとして日本企業の越境ECを支援すれば、市場の拡大や経済の活性化につながるのではと考え、イーベイ・ジャパン公認コンサルタントになりました。
イーベイ・ジャパン公認コンサルタントの制度は2018年10月からスタートしました。セラーとしての販売実績などに基づいて選ばれた受講者は、3日間の研修を受講します。その後、筆記試験と面接を経て合格した者にのみ公認コンサルタントの資格が与えられるというものです。
コンサルタントによって得意分野は違うと思いますが、私はITに詳しいのでツールやシステムの開発を提案することが可能です。ECの効率化を考えているセラーからご相談をいただくことが多いですね。
――越境ECの始めかたには、海外対応のECモールに出品する方法と、独自ドメインで海外向けサイトを作る方法があると思います。越境ECの先輩である本山さんから見て、モールと独自ドメインの違い、さらに他モールとeBayの違いはどういうところにありますか?
モールの強みは、やはり集客力にあると思います。とくにeBayは、過去1年で一度でもアイテムを購入したことのあるバイヤーの数が1.8億人と圧倒的です。独自ドメインの強みはブランディングがしやすい点にあるので、デザインや仕組みで自社の特色を出しやすい一方、サイトに来てもらうまでの道のりが長い。「まずは売上を上げたい」「越境ECの成功体験を掴みたい」という方にはモールへの出品をおすすめしています。
数あるモールの中でeBayだけに見られる違いは、価格以外の点で競争できるところでしょうか。eBayの場合、商品タイトルを工夫すればバイヤーが見つけやすくなり、価格が高くても売れることがあります。たとえば、商品のメーカー名や型番、コンディション、日本の商品であればそのことが明確にわかるよう「Japan」と入れると検索に引っかかりやすく、そういった情報が多いほうがバイヤーも安心して購入できます。
また、セラーとバイヤーの距離が近いのもeBayの特徴だと思います。オークションという出自ゆえ、やりとりをしながら売り買いを成立させるカルチャーが残っているような気がします。実際、当社にも毎日30件ほどの問い合わせがメールで届きます。大体が「この商品は本物か?」という確認や「商品のより詳細な写真を送ってほしい」というリクエストです。丁寧な対応が売上にもつながるため、密なコミュニケーションを大事にするべきプラットフォームだと思います。
越境EC初心者必見! eBayを使いこなす5つのコツ
――では、実際にeBayで越境ECを始めるようとしている人に、心得ておくべき点があれば教えてください。
5つのポイントがあります。まずはバイヤーからのレビューである「評価10件」を目指してほしいです。eBayにはセラーとバイヤーが相互にフィードバックを送り合えるシステムがあるのですが、評価がゼロのセラーと10件あるセラーでは信用度がまったく違います。当然のことながら、商品が高額になるほど評価が重要視されます。テクニックとしては、まず安価で購入ハードルが低い商品をいくつか出品し、目標数の評価を獲得するといいでしょう。
次に、なるべく多種多様な国や地域から注文を受けるようにしましょう。せっかくeBayという全世界から注文を受けることのできるプラットフォームへ出品するのに、販売対象地域を限定してしまうのはもったいないです。トラブルを避けるため、リスクの高い国を避けるというセラーの方針も理解できますが、売上アップを考えるのであれば販売対象エリアを広く設定しておくことが大事だと思います。
3つめはセラーとバイヤーが良好な関係を築けているかを示す指標である、セラーパフォーマンスを気にかけてください。たとえば「受注した商品の在庫を切らしていた」「バイヤーとトラブルが発生し、eBayからセラーの責任と判断された」といったことが重なると、最悪の場合、アカウントの停止につながってしまいます。欠品させないこと、トラブル発生時は丁寧に解決することが重要です。
eBayに限らないことですが、オンライン販売を行っている以上、ごくまれにセラーにとって不条理だと感じられる事態も起こり得ます。「商品を配送したのにバイヤーに届かない」「バイヤーから返品された商品がぐちゃぐちゃだった」なんてことがあるかもしれません。そんな場合に備えて、売上の数%を保険金のように積み立てておき、いざという時にカバーできる体制を整えておくことをおすすめします。
4つめは言語ですね。越境ECを志すセラーが一番不安を感じるのは言語の壁だと思います。私自身、英語はほとんど話せないのですが、翻訳サービスを使いながら対応しています。また、バイヤーからいただく問い合わせはパターンがほぼ決まっているので、回答内容の定型文をストックしておけば難なく対応できます。言語の問題は「越境ECをやる!」という意気込みさえあればクリアできると思います。
最後に、商品価格の設定です。eBay内で売れている類似商品をリサーチし、それを踏まえた価格設定を行う必要があります。
――価格設定で迷う初心者セラーは多いと思います。具体的にどのようにリサーチをすれば良いでしょうか。
価格リサーチを行う際に使ってほしいのは、eBayのサイト内で検索結果を絞り込む欄にある「Sold Items」という項目です。そこにチェックを入れて絞り込むと、どの商品がいくらで売れたかを知ることができます。オークションでいう「過去落札一覧」のようなものです。
加えて「Explore eBay」というツールも併用すると良いでしょう。ここで検索すると、カテゴリ内でよく売れている商品の価格相場を調べることができます。
価格リサーチはもちろん大事ですが、優先すべきは商品の出品数です。とりあえず赤字にならない程度の価格設定で出品してみると、商品ページの閲覧数などのデータが取得できます。それをふまえて価格の調整に手を着けても遅くはないと思います。
ステップアップのための越境マーケティング手法
――出品数が増え、バイヤーからの評価も上々、ビジネスが軌道に乗り始めたセラーが次のステップとして取り組むのはマーケティングだと思います。モール、とくに越境EC特化型モールにおけるマーケティングはどのように行えば良いのでしょうか。
eBayのマーケティングツールを活用すると良いと思います。ツールにはいくつかありますが、とくにおすすめしたいのは「Promoted Listings」というeBay内の広告機能です。クリック後に購入されない限り広告費が発生しない点や、セラーが広告費を「売上の◯%」という形で自由に設定できる点が魅力です。eBayが設定値の目安を提示してくれるので、トライしやすいと思います。
もうひとつおすすめしたい機能が「ディスカウント」です。単純な割引だけでなく、「Aという商品と一緒にBという商品も購入したら何ドルオフ」という複雑なディスカウントも設定できます。特定URLを知っているバイヤー限定でオファーできる、コードレスクーポンのURLをニュースレターに入れてあげると売上アップにつながります。
冒頭で「独自ドメインはブランディングに強い」とお伝えしましたが、SNSを有効に使えばモールに出品しながら独自性を出すことが可能です。また、海外に向けた情報発信という意味においてもSNSは積極的に使うべきです。
たとえば、梱包作業動画のアップロード。バイヤーから当社に寄せられる問い合わせの中で多いのが「頑丈に送ってほしい」という要望です。日本で一般的に行われている梱包のクオリティは世界基準で見るとかなり高いので概ね問題ありませんが、梱包している様子を動画に撮ってSNSにアップロードすれば、バイヤーも安心して注文することができます。
――最後に、eBayで越境ECに取り組みたい方に励ましのメッセージをお願いします。
日本人は海外から商品を購入することに抵抗を感じがちですが、海外では当たり前のように越境ECで商品を購入しています。また、日本の商品は皆さんが思っている以上に求められています。商品が出品されないことにはバイヤーも購入できないので、まずはとにかく出品してみましょう。
成功しているセラーの特徴は「出品点数が多い」「メールの返信が細やか」「商品写真を6枚以上掲載している」の3つです。出品点数は検索に引っかかるために増やすべきですが、丁寧な対応はバイヤーに商品を安心して買ってもらうための取り組みと言えます。写真については、6枚以上載せると売上アップにつながるというデータが出ているので、ぜひ実践してみてください。
eBayでのビジネスが軌道に乗り始め、新しくツールを導入したくなったり、売上をさらに伸ばしたくなったりした時は、私たち公認コンサルタントに声をかけていただけるとうれしいですね(了)。
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