よくあるミスや機会損失、改善すべきポイントをチェックリスト化
検索連動型広告やディスプレイ広告、SNS広告といった検索連動型広告専門のコンサルティングを手掛けるアナグラム。同社マネージャーの小山氏は、これまで200社以上の運用型広告(Google広告など)のアカウントを分析してきたが、十分なパフォーマンスを発揮できていないケースも多かったという。
「リスティング広告をはじめとする運用型広告は、運用の担当者によってパフォーマンスが激しく上下します。そこで、よくあるミスや機会損失、特に気をつけていただきたいポイントなどをチェックリストとしてまとめました」
検索連動型広告で押さえておきたい基本的な対策
サービス名・サイト名で検索したときに広告が出ているか?
まず、自社のサービス名やサイト名でリスティング広告を出すことについて、小山氏は「やらないとどうなるのか?」を指摘する。
「広告枠を競合に取られて自社より上に表示されると、せっかく自社のサービス名やサイト名で検索してきた方が競合サイトへ行ってしまうリスクが高まります。賛否両論ありますが、基本的にはサービス名・サイト名で広告を出すことをお勧めします」
広告表示オプションが適切に設定されているか?
「広告表示オプション」は、通常の広告文の下に追加情報を載せる機能だ。サイトリンク(サイト内の別のページへのリンク)、価格表示、アプリリンク(ダウンロード)、電話番号(スマートフォンでは通話ボタンも表示)など、さまざまな種類がある。
広告表示オプションを設定しないと広告文で伝えられる内容が少なく、表示されたときの物理的な面積がどうしても狭くなる。さらに小山氏によれば、広告表示オプションの設定なしでは広告自体の表示頻度も落ちてしまう(GoogleやYahoo!の広告表示判断の加点要素になっている)ため、必ず設定するべきだという。
適切なキーワード設定で機会損失を最小限に抑える
獲得できる検索語句にもれなく出稿されているか ?
たとえば商材がメンズジャケットで、検索語句「メンズジャケット 通販」では広告が表示されるが、「メンズ アウター 通販」では表示されないといったケースでは、キーワードのマッチタイプの設定を見直す必要があるかもしれない。
キーワードのマッチタイプには、次の4種類がある。
完全一致
登録したキーワードと検索語句が完全に一致する場合にのみ広告が表示される。
フレーズ一致
同じ語順の検索語句(フレーズ)を含む場合に表示される。
絞り込み部分一致
語順にかかわらず登録したキーワードが検索語句に含まれる場合に表示される。
部分一致
登録したキーワードに関連性が高いと判断された検索語句まで拡張して表示される。
先に挙げたメンズジャケットの例なら、絞り込み部分一致の「メンズ ジャケット 通販」では検索語句「メンズ アウター 通販」にマッチしないが、同じ組み合わせを部分一致キーワードで登録すれば、「メンズ アウター 通販」や「メンズ アウター 冬」などの検索語句にも拡張して広告表示される可能性がある(マッチングのアルゴリズム次第で必ず表示されるわけではない)。これにより、機会損失の抑制が期待できる。
明らかに関係がない検索語句に多くのコストを使っていないか?
逆に、部分一致が想定外の領域に広がって関連性の薄い検索語句に広告が表示されるようになり、結果的に無駄なコストがかかってしまうケースもある。
明らかに関係がない検索語句は1つひとつ除外キーワードに設定して表示されないようにする、あるいはマッチタイプを部分一致から絞り込み部分一致に変更するなどの対処が必要だ。
「そこは広告管理画面の検索語句レポートを見ながら、適宜調整していくのが最善策です」(小山氏)
リターゲティング広告をもっと有効に活用する
手持ちのウェブサイトにもれなくリターゲティングタグを入れ、有効活用できているか?
ある程度の流入があるサテライトサイトなどを所有しているなら、タグを埋めることで容易にリターゲティング配信ができるようになる。
「心当たりがあれば、もれなくリターゲティングタグを埋めましょう」(小山氏)
リターゲティング広告を、トップページ、商品詳細ページ、商品カートで分けて管理できているか?
トップページよりも商品詳細ページで離脱、さらには商品カートで離脱した顧客のほうがコンバージョン率が高くなる。後者に対する表示頻度を上げ、コストをかけて追いかける設定をすることで、全体の費用対効果を上げることができる。
Googleアナリティクスのスマートリストを利用しているか?
Google広告とGoogleアナリティクスを連携させると、「スマートリスト」というGoogleアナリティクスで自動生成されるリターゲティングリストが利用できる。
「滞在時間などGoogle広告にないシグナルを使って生成されるリストなので、獲得の上積みが期待できます」(小山氏)
ダイナミック広告を活用しているか ?
特に商品点数の多いECサイトでは、閲覧履歴を参照して直前に見ていた商品バナーを表示するダイナミック広告が「最後のひと押し」として有効だ。
「自社のダイナミック広告がどのように表示されるのかは、ブラウザのシークレットタブを開いて自サイトを閲覧後、Infoseekなど広告枠の多い他サイトに行くと確認できます。ぜひ一度試してみてください」(小山氏)
ディスプレイ広告やSNS広告、最新のプロダクトも試してみる
リターゲティング以外のディスプレイ広告・SNS広告に十分に取り組めているか?
GoogleはAndroidやGmail、Googleマップなどで非常に詳細なユーザーデータベースを持っている。Facebookも、ユーザーの生年月日や性別、学歴・職歴、位置情報(チェックイン)など膨大なデータを保有。こうした巨大企業ならではの膨大な顧客リストを使ったターゲティングは、やはり利用してみる価値がある。
小山氏は特に成果の出やすい鉄板プロダクトとして、Google ディスプレイネットワーク(以下、GDN)の「コンテンツターゲット」「購買意向の強いユーザー層」、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(以下、YDN)の「サーチターゲティング」、Facebookの「類似オーディエンス」を挙げた。
新しいプロダクトにチャレンジできているか?
GDNの「ライフイベントターゲティング」では、「最近大学を卒業した」「最近引っ越した」など、ライフイベントに基づくターゲティングが可能。「年収ターゲティング」も利用できるようになった。
「特にGoogleでは、こうした新しいプロダクトが毎月のように出ています。チェックして気になったものは、ぜひチャレンジしてみてください。Googleの担当がついているなら、どんどん話を聞いて教えてもらいましょう」(小山氏)
成果に応じた適切なコスト配分や予算調整も重要なポイント
デバイス別、性別、年齢別などの配分が適切か?
デバイスや性別、年齢ごとの広告配信のコスト配分が適切ではないために、全体の成果を損ねているケースが多いという。たとえば図のように、男性には55万円のコストをかけてコンバージョンが3件、女性には70万円使って同24件といったバランスのまま配信を続行しているようなケース。本来なら、男性を除外するだけでCPAが大幅に改善されるはずだ。
「媒体の提供する自動入札機能を利用していれば、目標のCPA・ROASに向けて自動で調整されるので、それほど心配はありません」
媒体やターゲティングごとの予算を厳格に切り分けすぎていないか?
月額の予算が決まっていて動かせない、さらには「検索連動型広告に1日○万円」「リターゲティングに○万円」といった細かいレベルで厳格に区切っている会社も少なくないそうだ。こうした運用は、機会損失が発生しやすい。費用対効果が良いのにもかかわらず、「予算上限のため配信ストップ」となってしまうからだ。
「成果を追いながらPDCAを回し、柔軟に調整していくべきです。状況に応じて予算配分をある程度変動できるような体制・環境を整えておくということも大切です」(小山氏)
当日はこれらを含む、全21のチェックリストが紹介された。運用型広告は、わずかな調整の差によってその成果が大きく変化するケースも多い。このチェック項目をもとに、改めて運用の方法を見直してみてはいかがだろうか。