スマートフォンが変えた、最適なECの商品検索
表示速度の改善、EC事業者ごと異なる検索結果の見せかたなど、ZETAの探究は続くが、目下、出張さんが取り組んでいる課題は、スマートフォン対策だ。
「もっともっと、スマートフォンに特化していかなくてはと考えています。自身の行動を振り返っても、パソコンで検索する場合とスマートフォンで検索する場合では、まったく目的が異なりますよね。そして、パソコンを中心に作られたサイトの検索結果は、スマートフォンでは非常に見にくい。たとえば、パソコンで『シャツ』を検索した場合、出てきた検索結果をすべてクリックしてページを開いておき、じっくり比較しながら見るという行動をとることが多いのではと思います。一方、スマートフォンはその作業がしにくいので、上から順番に見ていくしかなく、数アイテム見たところで離脱してしまうのではないでしょうか。
パソコンでもスマートフォンでも、求めている商品が上部に出てくるのに越したことはありませんが、スマートフォンのほうがよりそのニーズが高い。スマートフォンは、アクションが少なければ少ないほど購買につながりやすいので、そこを意識して商品検索を作っていかなくてはと考えています。とくに力を入れるべきなのは『キーワード検索』です。スマートフォンでキーワード検索するユーザーは、ピンポイントでその商品を求めているので、正確にたどり着けるようにする必要があるからです」
そう述べながらも出張さんは、そのキーワード検索の手間すら省かせたいとの野望を持っている。
「よく検索されているキーワードを出すサジェスト機能はもちろん、ユーザーが見ている商品の傾向などから、そのユーザーが次に検索するワードが予測できると思います。たとえば、Facebookの検索の入力欄にカーソルを置くと、前回検索したユーザーが出てきますよね。それは、Facebookで行う検索は、ユーザーを探していることが多いからです。こういったことをECサイトでも実現したいと考えています。表示すべきは、キーワードでなく、実際の商品かもしれない。こういったことができると、スマートフォンでの商品検索がひと味違ってくると思います」
手間を省く究極系なら、購買履歴データ等をもとにしたパーソナライズはどうだろうと発想するが。
「あまりパーソナライズしすぎても、分断されてしまうというか……。ECサイトでの私たちの行動って、ごく一部ですよね。たとえば、街を歩いていて偶然に口紅の広告を見かけ、『いいな』と思ってネットで調べ、ECサイトで買ったという行動があるでしょう。その行動についてECサイト側でわかるのは、そのユーザーが『口紅』と検索してたどり着いたということだけであり、街を歩いていて偶然広告を見たといったことはわからないわけです。こうした一部の行動だけをベースにしてパーソナライズするというのは、無理があるのではと考えています」
人はどのようにスマートフォンで検索し、購入までの行動を行うのか。新しいデバイス、カルチャーだけに、これが正解というものはない。そういった不確定要素が多い環境の中で、スマートフォンでの検索結果のあるべき姿を、出張さんはどのように見つけていくのだろうか。
「自分の体験や想像もありますが、実際にECサイトにおいて、ユーザーを特定せず全体の傾向として、スマートフォンとパソコンでどのように使われかたが異なるのかの調査も行っています。それにより、スマートフォンのECでは『絞り込み』があまり行われない傾向にあることがわかってきました。たとえば、家電のECサイトをPCで見ると、『エアコン』『空気清浄機』といった商品カテゴリが左側に並んでいますよね。スマートフォンサイトでは、こうしたカテゴリをボタン等で設置しているサイトもあるのですが、調査結果を見ると、あまり使われていません。
実際に自分が、冷蔵庫が欲しいと思ったときにスマートフォンをどのように使うか考えると、家電ECサイトのトップから、カテゴリで絞り込んでいくという行動ではなく、『冷蔵庫』というキーワードで検索するなと思います。このような例からも、これまでのパソコンサイトでの商品検索が、スマートフォンでは使われにくいため、スマートフォンに特化した商品検索にしていかなければならないと思います。今後も、スマートフォンならではの商品検索の傾向を探していきたいと考えています」