IoTでデータの送信、蓄積、可視化、分析。
まずは製造業から導入が進む
――「IoT Data Analytics」とは、どのような製品なのでしょうか。
山崎 ひとことで言うなら、IoTで得たデータを、業務を効率化させる情報に変換するエンジンです。データの送信、蓄積、可視化、分析の4つからなり、個々のサービスは従来当社で提供していた内容になりますが、Azureを利用してこれらをクラウドに統合したのが最大の特徴です。
――「IoT」という言葉をどう定義していますか?
山崎 これまでのデータは、すべて人の手で計測や蓄積されたものでした。IoTは、人以外がデータの発生元になるというイメージです。我々も、従来はお客様からいただいたデータのみを分析してきましたが、それ以外に、自動で集まってくるさまざまなデータが分析可能になれば、今まで見えなかった事実がわかるようになると期待しています。
執行役員 ビジネスエンジニアリングディヴィジョン エンジニアリンググループ グループ長
山崎宗隆さん
――具体的に、どんなことが可能になるのですか?
庄司 製造業のお客様であれば、予兆保全、品質改善、歩留まり向上(=不良品発生率の低下)、異常検知などに効果を発揮します。たとえば、工場の製造工程は非常に複雑なため、不良品の発生原因が掴みきれません。そのため、膨大なデータを機械学習によって分析し、その原因を突き止めます。早い段階で異常に気がつくと、それだけ生産ラインが効率化し、稼働率が高まるようになるのです。
――そういったニーズは以前からあったのでしょうか。
庄司 センサーひとつひとつがネットワークに接続されるようになったのは最近のことなので、ニーズは徐々に高まってきたように思います。こんなことができるようになったのか、といったように。
山崎 大手だと予兆保全、中小だと生産工程の改善を求めるお客様が多いですね。あとは、データを紙で記録している工場はいまだに多く、それをリアルタイムに収集する仕組みを作って可視化したい、という要望もよく聞きます。もちろん、エクセルに落として分析するのも可能ですが、その手間を省き、より効率的にできるようになったのがIoT Data Analyticsです。
膨大なデータが必要な機械学習には
手軽に開始できるMicrosoft Azureが最適
――今回の製品に、Microsoft Azureはどのように利用されているのでしょうか。
山崎 先ほど申し上げた、データの送信、蓄積、可視化、分析のすべてで活用しています。センサーなどのハードウェアから集めたデータを、機械学習によって分析するのが我々の仕事です。
――「機械学習」について詳しく教えていただけますか?
庄司 機械学習は、「人工知能」という分野の1カテゴリーです。具体的には、大量のデータを収集・解析して、もっとも確率の高い結論を導き出そうというものですね。
ただ、人工知能や機械学習に対するイメージは、人によってかなり差があります。何でもできる万能なものと考える人もいれば、逆に大したことはできないと思っている人もいる。
我々としては、「このデータが品質を下げる要因となっています」とか、「このくらいの確率で故障の発生を当てられます」といったことを示し、その効果をお客様に知っていただくフェーズだと考えています。
――なぜAzureを採用したのですか?
庄司 分析に利用するアルゴリズムの種類など、機械学習に関する各種機能の優秀さ、およびデータを扱うシステム周りもあわせて考慮し、Azureの利便性を高く評価しています。機械学習は膨大なデータを扱うため、サーバなどハードウェアのリソースが必要になってきます。Azureの良さは、そのリソースも規模によって自由に選べる点です。これをオンプレミスでやるとなると、ハードウェアが更新されたら買い換えるなど、大変な労力がかかります。
山崎 サーバを購入していた時代は、まずやりたいことを決め、それにはどの程度の機材が必要なのかを見積もらないといけませんでした。そこから稟議を申請し、購入して、セットアップとなると、あっという間に数ヶ月経ってしまいますよね。それに、やはり購入したらそれに見合った成果は出せないと、というプレッシャーもあります。クラウドであれば、とりあえず小さくはじめて、結果を確認して、それから拡張できますから。
執行役員 第3データサイエンスグループ グループ長
庄司幸平さん
庄司 機械学習の難点として、一度分析してみないと、どの程度の結果が得られるのかがわからない、という点があります。オンプレミスでそのリスクを抱えるのと、辞めようと思えばすぐに辞められるクラウドでは、状況がまったく違いますね。
分析をより身近に。誰もが機械学習を利用できる未来が来れば
――開発にあたり、IoT共創ラボと協力されたそうですが?
庄司 IoT共創ラボは、「IoTって言葉が流行っているけど、結局何ができるの?」というところから、東京エレクトロンデバイスさん、マイクロソフトさんの声がけにより、複数の企業が知恵を出し合う場所として始まりました。当社はその一員ですね。
山崎 そもそも、IoTを1社で実現するのは現実的ではありません。データ収集にはセンサーなどのハードウェアが必要で、収集にはネットワーク、分析にはソフトを使うわけですから、いろいろなノウハウを持った会社が集まらないとIoTは実現できないんです。
――その中で御社は分析を担当されるわけですが、ご苦労はありましたか。
山崎 一般的に「データ」とは、データベースのテーブルに入れることができる、整ったものを指します。IoTでセンサーから出てくるようなデータは、そのように構造化されたものではありません。また同じデータでも、ハードウェアの仕様によって形や構造、並び順などが変わってきます。分析や可視化をするためにはデータを整える必要があるため、そこには技術がいりますね。
データ分析が得意な会社、クラウドでシステム設計するのに強い会社は多くありますが、その両方、クラウド上で構築したシステムと分析のノウハウを組み合わせて提供できる会社となると、かなり少ないと思います。精度の高い分析結果を導き出すにはこれまでの知見も必要になりますし、それらをまとめて提供できるのが我々の強みだと捉えています。
――今後の展開を教えてください。
庄司 我々のノウハウをより標準化し、パッケージソリューションに落とし込めたらいいなと考えています。機械学習がより低予算で利用できれば、製造業などの業種に関係なく、それこそ個人も含めたよりたくさんの方に使ってもらえるのではないでしょうか。Azureが安価で実現できるのも、多くの方がクラウド基盤を使うようになる未来を見越してのことだと思いますから。
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