機械学習で価格戦略を データを見ることから始めよう
オークファン得上さんは、EC×機械学習分野における第一人者だ。その経歴を振り返ると、家電をECで販売する「PCボンバー」で価格自動算出システムを作り、マイニングブラウニーを起業。Webサイトのクローリング、画面キャプチャの自動化、テキストマイニング等のツールを提供し、EC-CUBEそのものの開発にもかかわった。そのマイニングブラウニーが、2014年12月にオークファンの傘下に入り、得上さんは同社の技術統括部 執行役員部長というポジションについている。
「オークファンのビジネスの軸は3つで、まずはその名のとおり、ネットオークションの市場を横断して検索できるメディアを持っています。次に、ネット上で仕入れができるサイト『NETSEA』を運営しています。もともとは、DeNAさんが運営していたのを譲っていただきました。最後に、データを軸にした法人向けサービスに取り組もうとしていまして、私がジョインしたのもそのためです」
オークファンが3つ目の軸としようとしている、データを軸としたビジネスに、得上さんのこれまでの経験と、機械学習とが密接にかかわっている。
「これまでECで行われてきたマーケティングは、プロモーション、ランディング、コンバージョンを最適化するという考えかただったと思いますが、これからはその先にある『利益』も見据えていくべきだと思います。今の日本のEC市場は、コンバージョンだけを考えて価格を下げ続け、利益を圧迫しているという問題があるのではないでしょうか」
そのような状況の日本に対して、海外では利益とコンバージョンのバランスをとるために、「プライス・オプティマイゼーション(価格最適化)」に注目が集まっていると得上さん。有名なツールベンダーが専用ツールをローンチするほか、最先端のEC企業として注目が集まるAmazonはそれを自ら行っている。そのために、プロモーションから物流まで最適化を続け、結果として、その時、その人に最適な価格を自動で表示することに成功している。
「日本では、ITを駆使した価格戦略に、価値が置かれていないように感じます。一度価格を決めたら変更しない、セールの時期だけ一時的に下げてもとに戻すといった具合です。競合他社が価格を下げたから、自社は下げたくないけれど下げざるを得ないというのは、いちばん避けたいところですが、実際に行われていることではないでしょうか。そうではなくて、毎日適切な価格を算出して、競合のセールにも動じない、自信を持った価格設定ができるようにならなくては」
しかし、すべての商品で継続して価格を調整し続けるというのは、とても人間にできる仕事ではない。そこで必要になってくるのが、プライス・オプティマイゼーション・ツールであったり、機械学習を使ったサービスの開発だったりするのだ。
「日本向けのプライス・オプティマイゼーション・ツールは、数年のうちにオークファンが提供する予定です。その頃には、機械学習も今よりは使いやすくなっているでしょう。それまでにEC事業者さんに取り組んでいただきたいのは、データを見始めること。商品のマスターデータ、注文データ、アクセス状況をExcelで見るだけでも、さまざまなことが見えてきます。BIツールを使って集計を行い、ダッシュボードを毎日見る習慣がついてくると、機械学習の必要性に気づくはずです」
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