クラウド、人工知能で進む、ECビジネス基盤の変化
人工知能と、EC/Webビジネスのかかわりかたには、大きく2パターンあると増渕さん。ひとつは人工知能を用いて、自ら新しいサービスを作るというもの。もうひとつは、人工知能が使われているサービスを調達し、利用するというパターンだ。
これまで、人工知能を活用して自らサービスを作り出すのは、先進企業にだけ許される特権のように考えられてきたが、環境の変化により、非常にカジュアルにできるようになってきたと言う。今回の増渕さんのセッションテーマも、「超低予算で実現できるEC向け人工知能」だ。
そもそも、人工知能はすでにWeb制作と密接にかかわっており、知らずに利用しているパターンもある。海外発の「Squarespace」「Macaw」などのWeb制作ツールは、デザイン、コーディング不要で、人間の仕事を奪いかねない勢いだ。
「HTML5に代表されるように、Webそのものがデータベースになっています。その中を機械がクローリングすることで、優れたデザインを覚えることができます。数年後には、デザインの作業自体が、人工知能に代替されるようになると言われているのは、こういった仕組みによるものです」
同様の流れで、従来のECビジネスに必要とされていたIT基盤も、変化しつつあると増渕さん。従来は、Webサーバーや会員データベースを管理するインフラ環境に大きなコストがかかっていたが、その問題をクラウドが解決。これまで分断されていた「分析」をより高度なレベルでつなぎ、人工知能が将来の予測も可能にする。会員データベースやWebフロントとは、人工知能を用いた新たなサービスで連携していくわけだ。
従来の仕組み
新しい仕組み
人工知能の機能のひとつ、機械学習でできること
さらに今、注目されている人工知能の活用例のひとつが「人工知能」だ。人間が自然に行っている学習能力と同様の機能を、コンピューターで実現しようとする技術・手法で、以下の用途にすでに用いられている。
機械学習の活用例
- スパムフィルター
- 音声認識・画像認識・顔認識・文字認識(OCR)
- 検索エンジン・結果ランキング
- リコメンデーション
- DNA解析・病気の予測診断
- 保険・証券取引
マイクロソフトでは、既存の例とは異なる形で機械学習を利用したサービスを提供。月130万ユーザーにフォローされ、Twitterを賑わせるLINEアカウント「りんな」だ。相手に対してパーソナライズし、会話のキャッチボールを楽しむことができるというもの。
「こうしたEQの高い人工知能によるマーケティング活動は、今後非常に重要になってくるとの考えから、一般企業様にもご利用いただけるよう『りんな API for Business』を開始しています。会話のデータベースを作る必要があるので、その分だけハードルが高いかもしれませんが、それでも人工知能を用いるのに、ひと昔前はサイエンティストのような存在が必要だったことを考えると、非常にカジュアルに導入できるようになってきています」
そして、実際に機械学習を用い、EC事業者向けにサービスとして提供しようとしているのがオークファンだ。同社で執行役員 技術統括部長 得上竜一さんが、ゲストスピーカーとして登壇した。
◆[ECzineDay講演資料ダウンロード]トレンドの人工知能・機械学習の活用例、海外では進んでいるプライス・オプティマイゼーションという概念、そしてデータプラットフォームとして進化するMicrosoft Azureのうち、EC事業者がチェックしておきたい機能とは? 日本マイクロソフトの講演資料ダウンロードはこちら