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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2015 Autumnレポート(AD)

日本マイクロソフトが語る「超低予算で実現できるEC向け人工知能とは」

2015年10月14日(水)に目黒雅叙園で開催した「ECzine Day 2015 Autumn」のセミナーレポートをお届けします。日本マイクロソフト増渕大輔さんが、「超低予算で実現できるEC向け人工知能とは?インテリジェントな事例をご紹介」と題し講演。ゲストスピーカーとして、オークファン得上竜一さんも登壇しました。

クラウド、人工知能で進む、ECビジネス基盤の変化

 人工知能と、EC/Webビジネスのかかわりかたには、大きく2パターンあると増渕さん。ひとつは人工知能を用いて、自ら新しいサービスを作るというもの。もうひとつは、人工知能が使われているサービスを調達し、利用するというパターンだ。

 これまで、人工知能を活用して自らサービスを作り出すのは、先進企業にだけ許される特権のように考えられてきたが、環境の変化により、非常にカジュアルにできるようになってきたと言う。今回の増渕さんのセッションテーマも、「超低予算で実現できるEC向け人工知能」だ。

日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエバンジェリズム統括本部
エバンジェリスト 増渕大輔さん

 そもそも、人工知能はすでにWeb制作と密接にかかわっており、知らずに利用しているパターンもある。海外発の「Squarespace」「Macaw」などのWeb制作ツールは、デザイン、コーディング不要で、人間の仕事を奪いかねない勢いだ。

 「HTML5に代表されるように、Webそのものがデータベースになっています。その中を機械がクローリングすることで、優れたデザインを覚えることができます。数年後には、デザインの作業自体が、人工知能に代替されるようになると言われているのは、こういった仕組みによるものです」

 同様の流れで、従来のECビジネスに必要とされていたIT基盤も、変化しつつあると増渕さん。従来は、Webサーバーや会員データベースを管理するインフラ環境に大きなコストがかかっていたが、その問題をクラウドが解決。これまで分断されていた「分析」をより高度なレベルでつなぎ、人工知能が将来の予測も可能にする。会員データベースやWebフロントとは、人工知能を用いた新たなサービスで連携していくわけだ。

従来の仕組み

新しい仕組み

人工知能の機能のひとつ、機械学習でできること

 さらに今、注目されている人工知能の活用例のひとつが「人工知能」だ。人間が自然に行っている学習能力と同様の機能を、コンピューターで実現しようとする技術・手法で、以下の用途にすでに用いられている。

機械学習の活用例

  • スパムフィルター
  • 音声認識・画像認識・顔認識・文字認識(OCR)
  • 検索エンジン・結果ランキング
  • リコメンデーション
  • DNA解析・病気の予測診断
  • 保険・証券取引

 マイクロソフトでは、既存の例とは異なる形で機械学習を利用したサービスを提供。月130万ユーザーにフォローされ、Twitterを賑わせるLINEアカウント「りんな」だ。相手に対してパーソナライズし、会話のキャッチボールを楽しむことができるというもの。

 「こうしたEQの高い人工知能によるマーケティング活動は、今後非常に重要になってくるとの考えから、一般企業様にもご利用いただけるよう『りんな API for Business』を開始しています。会話のデータベースを作る必要があるので、その分だけハードルが高いかもしれませんが、それでも人工知能を用いるのに、ひと昔前はサイエンティストのような存在が必要だったことを考えると、非常にカジュアルに導入できるようになってきています」

 そして、実際に機械学習を用い、EC事業者向けにサービスとして提供しようとしているのがオークファンだ。同社で執行役員 技術統括部長 得上竜一さんが、ゲストスピーカーとして登壇した。

◆[ECzineDay講演資料ダウンロード]トレンドの人工知能・機械学習の活用例、海外では進んでいるプライス・オプティマイゼーションという概念、そしてデータプラットフォームとして進化するMicrosoft Azureのうち、EC事業者がチェックしておきたい機能とは? 日本マイクロソフトの講演資料ダウンロードはこちら

機械学習で価格戦略を データを見ることから始めよう

 オークファン得上さんは、EC×機械学習分野における第一人者だ。その経歴を振り返ると、家電をECで販売する「PCボンバー」で価格自動算出システムを作り、マイニングブラウニーを起業。Webサイトのクローリング、画面キャプチャの自動化、テキストマイニング等のツールを提供し、EC-CUBEそのものの開発にもかかわった。そのマイニングブラウニーが、2014年12月にオークファンの傘下に入り、得上さんは同社の技術統括部 執行役員部長というポジションについている。

株式会社オークファン 執行役員 技術統括部長 得上竜一さん

 「オークファンのビジネスの軸は3つで、まずはその名のとおり、ネットオークションの市場を横断して検索できるメディアを持っています。次に、ネット上で仕入れができるサイト『NETSEA』を運営しています。もともとは、DeNAさんが運営していたのを譲っていただきました。最後に、データを軸にした法人向けサービスに取り組もうとしていまして、私がジョインしたのもそのためです」

 オークファンが3つ目の軸としようとしている、データを軸としたビジネスに、得上さんのこれまでの経験と、機械学習とが密接にかかわっている。

 「これまでECで行われてきたマーケティングは、プロモーション、ランディング、コンバージョンを最適化するという考えかただったと思いますが、これからはその先にある『利益』も見据えていくべきだと思います。今の日本のEC市場は、コンバージョンだけを考えて価格を下げ続け、利益を圧迫しているという問題があるのではないでしょうか」

 そのような状況の日本に対して、海外では利益とコンバージョンのバランスをとるために、「プライス・オプティマイゼーション(価格最適化)」に注目が集まっていると得上さん。有名なツールベンダーが専用ツールをローンチするほか、最先端のEC企業として注目が集まるAmazonはそれを自ら行っている。そのために、プロモーションから物流まで最適化を続け、結果として、その時、その人に最適な価格を自動で表示することに成功している。

 「日本では、ITを駆使した価格戦略に、価値が置かれていないように感じます。一度価格を決めたら変更しない、セールの時期だけ一時的に下げてもとに戻すといった具合です。競合他社が価格を下げたから、自社は下げたくないけれど下げざるを得ないというのは、いちばん避けたいところですが、実際に行われていることではないでしょうか。そうではなくて、毎日適切な価格を算出して、競合のセールにも動じない、自信を持った価格設定ができるようにならなくては」

 しかし、すべての商品で継続して価格を調整し続けるというのは、とても人間にできる仕事ではない。そこで必要になってくるのが、プライス・オプティマイゼーション・ツールであったり、機械学習を使ったサービスの開発だったりするのだ。

 「日本向けのプライス・オプティマイゼーション・ツールは、数年のうちにオークファンが提供する予定です。その頃には、機械学習も今よりは使いやすくなっているでしょう。それまでにEC事業者さんに取り組んでいただきたいのは、データを見始めること。商品のマスターデータ、注文データ、アクセス状況をExcelで見るだけでも、さまざまなことが見えてきます。BIツールを使って集計を行い、ダッシュボードを毎日見る習慣がついてくると、機械学習の必要性に気づくはずです」

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EC事業者がMicrosoft Azureで使いたい3つの機能

 そして再び、増渕さんが登壇。オークファンでは、用途によってクラウドを使い分けているが、法人向けデータビジネスの根幹となる、機械学習を行うプラットフォームには「Microsoft Azure」を採用している。Microsoft Azureは、単にホスティングサーバーとしての役割を果たすだけでなく、データプラットフォームとして使えるよう、さまざまな機能を搭載しているからだ。

 「Microsoft Azureは、今日この時間では説明しきれないくらい多くの機能を積んでいるのですが、EC事業者さん、Webマーケターさんに使っていただくと便利だろうというのは、以下3つの機能です」

  1. 高性能サーバーホスティング
  2. 新サービスの開発基盤
  3. 高度な分析基盤

 ひとつめの「高性能サーバーホスティング」については、はじめの登壇の際にも解説があったとおり、クラウドでコストや管理の手間が大幅に削減されている。ふたつめの「新サービスの開発基盤」については、アプリや動画を配信する際、作ったサービスをホストするだけですぐに提供できる環境が整えられた。

 3つめの「高度な分析基盤」についてだが、ここで今日のテーマである、人工知能・機械学習が登場する。Azure Machine Learningでは、予測モデルやREST APIのようなWebサービスの作成が可能だ。Webフォーム、またはExcelシートにパラメータを入力するだけで、予測結果を表示できる。

 分析については、機械学習だけでなく「データのストリーム処理」にも注目したい。これまでの分析は、ある静止点のデータを取り扱うことが常識であったが、ソーシャルメディアやWebのアクセスログなど、クラウドにより、常に流れゆくデータを扱うことができるようになっている。

 「流れゆくデータを分析することで、新しいインサイトを得ることが可能です。そうした大量のデータを、『Data Lake』と言われるクラウド上のダムのような場所に一度溜め込んでおいて、必要な部分をデータウェアハウスに入れたり、機械学習に取り込んだり、そういったデータの使いかたが現在、推奨されています。そのデータを適宜取り出し、ブラウザ上でデータの抽出・分析・可視化、共有ができるのが、Excelにも搭載されているPower BIです」

 最後に増渕さんは、これまでの流れを振り返り、人工知能が「超低予算」で、カジュアルに使えるようになっているとし、「トレンドの移り変わりが激しいEC/WEB業界の流れを、人工知能をうまく使うことで、乗り切ってみてはいかがでしょうか」と述べ、講演を締めくくった。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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