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ECzine Day 2025 June【オンライン+スタジオ観覧型イベント】

2025年6月12日(木)10:00~17:25

ECzine Day 2025 June レポート(AD)

開封率・クリック率30%、値下げ常態化から脱却できた施策を紹介 ルックHDがMA活用で得た学びを共有

 「IL BISONTE」「Marimekko」「A.P.C.」など、インポートからオリジナルまで様々なブランドを展開するルックホールディングス。同社は、店舗と自社ECをつなぐOMOの推進により、売上やLTVを着実に伸ばしている。2025年6月12日開催の「ECzine Day 2025 June」にて、同社 経営企画室CRM課 課長の西村陽介氏と、EC特化型のMA/CRMツール「EC Intelligence」を提供する株式会社シナブル 執行役員 曽川雅史氏が登壇。両社がタッグを組むことで実現した会員IDの統合やMA活用、それらによって得られた成果が共有された。本記事では、その詳細を紹介する。

2016年からOMO実現に向け積み重ねたルックホールディングスの道筋

 アパレル&ライフスタイル分野を軸に、多角的な事業を展開するルックホールディングス。「IL BISONTE」「Marimekko」「A.P.C.」など運営するブランド名を挙げると、その多彩さがうかがえるだろう。

 そんな同社が、ブランドやチャネルを横断して顧客情報を一元管理すべく2016年に導入したのが、メンバーシップ制度「LOOK MEMBERSHIP」だ。統合の背景にあったのは、チャネル・ブランド間のクロスセル促進と、各ブランドに定期的に来店したいと思える仕組みを作り上げる考えだと、西村氏は振り返る。

「店舗だけ・ECだけといった単一のチャネルを利用するお客様よりも、両方を利用するお客様のほうが購入総額が2〜3倍になる傾向があると見えていたものの、当時の店舗では顧客情報を紙で管理し、他店舗での購買状況を把握できない状況でした。

 ECサイトと店舗のデータも連携できておらず、お客様がそれぞれのチャネルでどの程度の頻度、どれだけの金額を購入しているかが見えていなかったのです。ロイヤリティの高いお客様に適切な対応ができておらず、大きな課題となっていました」(ルックホールディングス・西村氏)

株式会社ルックホールディングス 経営企画室CRM課 課長 西村陽介氏
株式会社ルックホールディングス 経営企画室CRM課 課長 西村陽介氏

 メンバーシップ制度の導入により、ルックホールディングスは「Marimekkoで商品を購入した顧客にIL BISONTEやA.P.C.のお知らせを送付し、他ブランドにも興味をもってもらう」といったブランド横断型の導線設計が可能となった。その上で、2018年に同社は次なるステップとしてLOOK MEMBERSHIPの会員IDを基盤としたMAの導入を決断する。

「MAツールを比較する際は、『自社ECだけでなく店舗の購買データも取り込めるか』『運用のしやすさや拡張の柔軟性』『QCD(コスト・品質・納期)のバランスが良いか』に重点を置いて検討しました。

 シナリオ配信機能が既に実装されているなど、機能面で大手MAツールと遜色なく、コストパフォーマンスも良かったため『EC Intelligence』を最終的に選んだのですが、JavaScriptやHTML・CSSを使ってカスタマイズできる点も魅力的でした。ブランドごとの戦略や描きたい顧客体験に合わせて、柔軟に対応できる可能性を感じたのです」(ルックホールディングス・西村氏)

「EC Intelligence」の決め手
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「近年は、ノーコードで直感的に使えるMAツールも増えていますが、汎用性と拡張性を両立させるにはノーコードとスクリプトを併用する必要があります。この開発思想をくみ取って評価いただけたのは、うれしいかぎりです」(シナブル・曽川氏)

 こうして、密な顧客アプローチ基盤を得たルックホールディングスは、OMO実現に向けた施策を一つずつ形にしていった。ここから、代表的な二つの施策を紹介しよう。

CVR3%を記録 プロパー販売率増と在庫消化もできたOne to One施策

 一つ目は「顧客別タイムセール」の実施だ。顧客の閲覧・お気に入り登録情報を基に、興味に合わせたクローズドなセールを案内。対象者を絞ることで、顧客へ特別感を提供しながら利益の確保と在庫消化を実現している。

「こうした施策を実施する背景には、コロナ禍の来店客数減や在庫過多に起因する値下げ販売の常態化がありました。コロナ禍以降もその傾向が続き、ブランドとしては値引き前提の販売スタイルから脱却してプロパー販売率を高めながらも在庫消化を行わなければならず、そこで実施したのが顧客別タイムセールです」(ルックホールディングス・西村氏)

 顧客別タイムセールでは、自社ECとEC Intelligenceを連携し、タイムセール対象商品を閲覧・お気に入り登録した顧客の情報を抽出。対象者のみにセール価格が表示される専用ページと顧客属性に合ったシナリオを作成し、EC Intelligenceを使ってターゲットを絞ったセール情報の配信を実現している。

顧客別タイムセールの仕組み
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「この施策では、メールの開封率とクリック率が30%以上、CVR3%以上を記録しました。オープンなセール回数を減らして利益率を改善しつつ、在庫の消化も実現しています」(ルックホールディングス・西村氏)

「この高い反応率は、必要な人に必要なタイミングで情報を届ける重要性と、メールがまだまだ有効なチャネルであることの裏づけといえるでしょう。自動化できるところは自動化して運用の手間を抑えつつ、アプローチする顧客をセグメントすることで精度の高い施策を実現している点がポイントです」(シナブル・曽川氏)

株式会社シナブル 執行役員 曽川雅史氏
株式会社シナブル 執行役員 曽川雅史氏

店舗スタッフ×EC Intelligenceで接客力UP 顧客理解度向上へ

 二つ目に紹介された施策は、店舗スタッフの接客力を支援する「Customer Closet」だ。同施策は、会員IDをキーに各ブランドの自社ECと店舗の購買履歴を紐づけ、優良顧客をセグメント。購入商品を画像つきで一覧化し、店舗スタッフにHTMLメールで情報提供するものとなっている。

 同施策で注目すべきは、MAツールを使って店舗スタッフの体験向上を図っている点だ。この施策は、「『お客様の購入商品をわかりやすく把握したい』という現場の声から生まれた」と西村氏は説明する。

「Customer Closet実施以前の店舗スタッフは、品番が記載された購入履歴を見てお客様への対応をしなければならず、商品の把握やスタッフ間での情報共有に手間がかかっていました。既存顧客や来店客の対応に追われる中で、自店以外の顧客の把握にまで手が回らないという課題に対し、解決策として導き出したのがCustomer Closetです」(ルックホールディングス・西村氏)

「同施策では、顧客データから条件に合致する会員IDと購買履歴をCSV出力し、EC Intelligenceにデータと送信先アドレスをアップロード。送信時にCSV出力したデータが自動的に差し込まれるHTMLテンプレートを活用して、各店舗にメールを配信しています」(シナブル・曽川氏)

Customer Closetの仕組み
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 こうした情報共有のフローが構築されたことで、ルックホールディングスが運営する店舗では「より深い顧客理解が可能になった」と西村氏は続ける。

「購入商品が画像で一覧化されているため、店舗スタッフはお客様が既にお持ちのアイテムとのコーディネートや、趣味嗜好を踏まえた提案を意識的に行えるようになりました。顧客満足度を高めるための、重要なインプットになっていると思います」(ルックホールディングス・西村氏)

実践から見えるOMO推進に必須な二つの目線 次なる一歩は“未来の情報活用”

 OMOを推進する際に特に大事なのは、顧客目線と現場目線の設計だ。たとえば、顧客別タイムセールではブランドの課題解決だけでなく、顧客への利便性提供を両立できたからこそ、好調な成果を記録したといえる。Customer Closetの取り組みも同様だ。

「Customer ClosetをHTMLメールで運用している理由は、新たなシステムを導入するよりもメールのほうが使い慣れていて検索や確認がしやすいといった声があったからです。定型フォーマットで送信できる、顧客ごとにフォルダを分けるなど整理して、いつでも見返せる点も店舗スタッフにとっては好都合でした」(ルックホールディングス・西村氏)

 このようにして、単なるツール導入にとどまらず、新たな体験構築を実現したルックホールディングス。ツール体験に対する満足度は、2018年からEC Intelligenceを使い続けている事実からもうかがえるが、実際にはどのような成果を得られているのだろうか。

「当社のお客様は、ブランド名を起点に購入される方が多いのですが、LOOK MEMBERSHIPを通じたブランド横断型のアプローチにより、他ブランドを認知していただく機会が増えたのは大きな成果だといえます。また、チャネルを問わずポイントやサービス内容を共通化できたことで、お客様の利便性向上も実現できたと思います。

 社内に目を向けると、顧客データの統合によりOne to Oneでのアプローチが可能になりました。たとえば、あるブランドの商品を購入された方にそのブランドの歴史を紹介するメルマガを送ったり、デニムを購入された方にお手入れ方法を案内したりと、デジタル施策の最適化も進んでいます」(ルックホールディングス・西村氏)

 紹介した施策例を振り返ると、売上やLTVの向上、利益率の改善を叶えるために必要な行動、環境といったファクターがおのずと見えてくる。一つは、時間をかけてでも一歩ずつ着実に行動を積み重ねること、もう一つは顧客に加え、店舗スタッフなど成果を得るために欠かせないステークホルダーの「かゆいところ」を丁寧に拾い上げ、運用に反映することだ。ツールの使い勝手は、これらの進捗を大きく左右する。

「EC Intelligenceを使い続けている理由は、シナブル様の対応の早さやサポート体制に加え、操作説明が動画で提供されており、わかりやすいところにもあります。Q&AページのURLを送って終わりではない点も、非常に心強かったです」(ルックホールディングス・西村氏)

 ルックホールディングスでは、この基盤を生かして「店舗受取」「試着予約」といったOMO施策も進めている。既にこれらの成果も見え始めており、今後は顧客データを活用した販促や提案活動をさらに強化し、売上拡大を図っていくという。

「たとえば、EC購入して店舗受取を選んだお客様がどんな商品を閲覧していたか、EC Intelligenceを通じて店舗スタッフに事前共有すれば、来店時にコーディネート提案やクロスセルのアプローチが可能です。より的確、かつ売上やLTV向上につながる働きかけを実現したいと考えています」(ルックホールディングス・西村氏)

今後に向けての抱負
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 同社が描くビジョンに対し、シナブルの曽川氏は次のように期待を寄せ、セッションを締めくくった。

「ルックホールディングス様は、Customer Closetで『購買履歴』という過去の情報活用を進めた上で、次は『店舗受取』『試着予約』『閲覧履歴』といった来店前の関心、つまり未来の情報活用に取り組もうとされています。

 これまで見えなかったお客様の興味関心を接客前に把握できれば、お客様からの『提案してほしい』というニーズにも応えやすくなり、店舗スタッフもよりポテンシャルを発揮できるはずです。体験の価値や満足度を高める、まさにOMOの理想形だといえるでしょう。EC Intelligenceを提供することで、当社もこの実現に貢献できればと考えています」(シナブル・曽川氏)

オムニチャネル戦略を成功に導くMAツール

 店舗とECの垣根をなくすオムニチャネル戦略を成功させるには、正確なデータ統合と活用が不可欠です。EC IntelligenceはAIによる自動パーソナライズと配信最適化機能を搭載し、最適なチャネル・タイミング・内容でのアプローチを可能にします。オムニチャネル戦略の実行力を高めたい方はこちらからお問い合わせください。

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提供:株式会社シナブル

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://eczine.jp/article/detail/16960 2025/07/22 11:00

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