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越境ECの需要は分散している
越境ECを検討する事業者にとって、自社の商品がどの国や地域にどれだけの消費者ニーズがあるか、事前に理解しておくことは重要です。しかし、そのような情報をどうやって手に入れれば良いのかわからず、越境ECに二の足を踏むケースも多いでしょう。そこで今回は、越境ECの検討材料となる具体的なデータをお届けします。
次のグラフは全世界の消費者を対象に実施された、越境ECで直近3ヵ月以内に購入した商品に関するアンケートの結果です(調査時期2023年9月)。なお、日本の商品に限ったアンケートではない点に注意してください。
1位は「アパレル・靴」で39%、次いで「スマホ、ゲーム機器、AV機器」20%、「コスメ・美容」17%、「スポーツ用品・レジャー・趣味」14%となっています。1位「アパレル・靴」の割合は2位の2倍であり、越境ECでの消費者ニーズが世界的に高いことを示しています。
ちなみに、このアンケートは2023年9月時点における“直近3ヵ月以内に購入した商品”に関する回答結果です。仮に1年以内であれば、それぞれの回答率はさらに高くなっていたことでしょう。したがって、実際の消費者ニーズはこの数値よりも高いはずです。そう考えると、越境ECでは、あらゆるジャンルに消費者ニーズが分散していると考えられます。
東南アジア市場が“熱い”のは本当?
続いて、日本商品の消費者ニーズを国・地域別に探ってみましょう。とはいっても、私が知る限り越境ECに関する国・地域別の販売データの統計は残念ながら存在していません。そこで、一般貿易を通じた輸出額の統計である財務省貿易統計を用いて、独自に計算してみました。
ただし、この統計では1個あたり20万円以下の輸出品はデータとして加算されていません。つまり、直送モデル(日本に在庫を保管し注文が入るたびに海外へ発送する)で国際配送されている荷物の大半は、データに反映されていないのです。とはいえ、日本の商品の輸出額に関するデータであるため、相手国・地域における消費者ニーズを探る上では、貴重な情報といえます。
食品、化粧品、医薬品、家電、アパレル、日用品といった個人が使用する商品を対象に、2024年1月~11月まで(本記事の執筆時点での最新データ)の日本から海外に向けた輸出額は、上記のグラフのとおりとなりました。トップはアメリカ向けで8,407億円、次いで中国7,925億円、香港2,938億円、台湾2,685億円、韓国2,175億円です。アメリカと中国が断トツで、また、アメリカを除けば東アジアが上位を占めています。
近年、東南アジアの消費者ニーズが高まっているとわれていますよね。しかし、このデータを見ると、アメリカや東アジアほどでもないとわかります。