流入元はYouTubeとX 鍵を握る情報発信の“選択と集中”とは?
ホロライブプロダクションがグッズ販売において重視しているのが、タレントの意志だ。一條氏は理由をこう話す。
「自社ECサイトにおける1番の目玉アイテムは、タレントプレミアムグッズと呼ばれる商品群です。これらの商品は、企画段階からタレントとやり取りを重ね、本人の監修を経た上で自社ECサイトに限定して販売します。グッズから垣間見えるタレントらしさこそが、ファンにとって何よりの価値だと考えています」(一條氏)
実際、自社ECサイトや実店舗には各タレントの個性が反映されたグッズが並んでいる。自ら「こんなグッズを作りたい」とアイデアを出すタレントも少なくない。
「たとえば、ラーメン好きのタレントが他社とのタイアップ企画で限定ラーメンを販売したり、オリジナルグッズとして丼を作ったりしています。それぞれの好みや性格にどれだけ寄り添えるかが重要です。結果的に、ファンも喜んでくれる企画が生まれます」(一條氏)

タレントらしさに価値をおくコト消費の特徴が表れているのが、グッズが売れるタイミングだ。ホロライブプロダクションのグッズ販売は、基本的に所属タレントの誕生日記念生配信や音楽ライブといったイベントと連動している。「その配信画面から自社ECサイトへ流入するケースが多い」と一條氏は話す。
「YouTubeの概要欄には、商品詳細ページのURLを記載しています。2024年の夏からは、YouTube上で商品やブランドの訴求ができる『YouTube ショッピング』との連携を本格的に進めてきました」
また、YouTubeに次いで各タレントのXアカウントからの流入数も多いという。
「バーチャルな存在であるVTuberには、その性格や個性に惹かれるファンが多く存在します。そのため、タレントが普段から情報発信を行っているXとの相性が良いですね。ホロライブプロダクションの公式アカウントよりも、“推し”タレントのアカウントをフォローしているファンが多いです。そこで所属タレントには、イベントやグッズに関連するポストに商品詳細ページのURLも掲載してもらっています。タレント間のSNS上でのコミュニケーションが活発で、誰かがグッズをXで投稿すると皆がリポストしてくれるのも良い文化です」(一條氏)
あくまでも一つの投稿を、複数でリポストするのがポイントだ。
「特定の投稿のview数が上がると、Xの『トレンド』に表示されやすくなります。また、限定商品の場合は競争が激しく、予約や販売の開始を告知してすぐに売り切れてしまいます。タイムラグなくファンに正しい情報を受け取ってもらうには、その出発点を集約したほうが良いと考えています」(一條氏)
「グッズが販売されると、多くの方が自身のSNSアカウントで感想を投稿してくれます。それらをタレントだけでなく社員も必ず見て、次のグッズの参考にしています。日常的にSNSをチェックしたり情報収集したりすることが好きな社員が多い点は、当社の特徴かもしれません」(前田氏)