生成AIによる「ワンクッション」で精神的負担も軽減
CS部門の現場課題を知った中山氏は、暗黙知をデータ化できる「KARAKURI assist」を開発した。同ソリューションの主な機能は、「テンプレートの蓄積・整理」「文章の自動チェック」「生成AIの活用」の三つ。一つ目の「テンプレートの蓄積・整理」は、新人スタッフが初期にぶつかる「テンプレートが見つからない」という課題を解消する。
「テンプレートは、関係するスタッフが目にできるところに保存されていなければ、見つけられません。他スタッフが良いテンプレートを作成しても個人のPCに保存されていることが多く、そのスタッフの退職と同時にナレッジが失われてしまいます。KARAKURI assistはクラウド上でテンプレートを管理でき、マネージャーはそのすべてを確認できます。スタッフ全員へのテンプレートの共有も可能です。テンプレートが増えても、検索すれば該当のものがヒットします」
テンプレートが探し出せても、そのまま返信できるわけではない。状況に応じて細かい文言の調整が必要となる。こうした過程で誤字脱字などが発生することを踏まえ、KARAKURI assistには二つ目の機能として「文章の自動チェック」が搭載されている。
「たとえベテランスタッフであっても、打ち間違いなどのミスは起こります。しかし、すべてのメール文章を複数のスタッフで確認するのは、工数と労力が必要です。自動で文章チェックができれば、各スタッフの業務量を減らせます。日本語のミスだけでなく、会社名や製品名の正しい表記もチェック項目に追加登録できるなど、カスタマイズも可能です」
こうした機能に加えて、2023年7月にリリースされた新機能が「生成AIの活用」だ。KARAKURI assistに「このような文章を作成して」と指示すると、リクエストに沿った内容や表現の文章が作成される。様々な言語への翻訳や問い合わせ内容をもとにしたFAQ作成などへの応用も可能だ。中山氏は、「生成AIによって『あったら良いな』を実現したい」と話す。
「お客様から長文の問い合わせメールが入った際、生成AIに要点を抽出させれば対応スピードが上がります。また、クレームなど強い表現の問い合わせメールが入った場合は、確認するスタッフの精神面に負担が生じますよね。全文を確認する前に、生成AIによる要約で『ワンクッション』挟めば、精神的負担を軽減できます。こうした使い方もおすすめです」
CS部門の課題を様々な切り口で改善するKARAKURI assistだが、導入が難しければ本来の目的である業務効率化と離れてしまう。そのため中山氏は、KARAKURI assistを「Google Chromeの拡張機能」として開発した。
「KARAKURI assistは、新たなシステムに入れ替えるのではなく、これまでのシステムで対応できなかった部分をカバーするイメージです。使用頻度の高いテンプレートをショートカットキーに割り当てることもでき、『3回キーボードを打つだけ』でメールが作成できるほど簡単に操作できるよう開発しました」
この手軽さが、KARAKURI assistの大きな強みだ。