競争が激化するD2C
D2Cブームの影響もあり、ライバルが増加していると感じている事業者も多いのではないだろうか。こうした中、さまざまな業種に向けて広告効果測定プラットフォーム「アドエビス」の導入支援を行ってきたイルグルムの辻子氏は、D2C事業者が「さまざまな制限が厳しくなってきているために、広告施策で成果を出しづらい状況に置かれている」と指摘する。
「昨今、広告施策のハードルが高くなっていますが、その要因は大きく3つあります。
ひとつめは、広告媒体と基幹システムで計測したコンバージョン数が大きく乖離している場合があることです。媒体データだけを注視していては、正確なデータの計測とそれによる施策の策定ができません。
ふたつめは、プライバシー保護の観点から強化されているCookie規制です。これにより、ユーザーの行動データの収集が制限され、正しいコンバージョン計測が難しくなっています。
そして3つめは、計測パラメータを手動設定する際に発生する人的ミス。過去には、1万クリック近くの計測漏れが判明した事例もあります。得ることができるはずのデータを逃してしまうのは、大きな機会損失でしょう」
さらに、広告に投資して新規顧客を獲得するビジネスモデルが主流ともいえるD2Cだからこそ、陥りやすい悪循環もある。
「既存顧客が少ない中、新規獲得のために大幅な広告投資を行うと、利益よりも投資額が大きくなります。その赤字を改善するために、クリエイティブ改善や訴求・オファーの見直しなどを通してCPA・CPOを下げようとする事業者もいるでしょう。たとえば、初回購入金額を大幅に割引するなどの施策を実行するケースです。
ところが、最初に商品を安く購入した顧客は、再購入時に定価での購入にハードルを感じてしまいます。結果的には、再購入まで結びつかない訴求となってしまう傾向があるのです。D2C事業者がこの悪循環から抜け出すためには『広告投資コストの効率化』と『LTV改善によるリターン向上』のバランスをとる必要があります」
では、どうすれば利益につながる広告施策を実行できるのか。事業者を取り巻く環境やD2C特有の課題を乗り越え、継続的に成果を出す秘訣を、辻子氏はこう解説する。
「効率的に、そして効果的に広告施策を実行するために要となるのが、適切なPDCAサイクルです。実行した広告施策のデータを分析し、改善すべき点を的確に振り返って次の施策へ活かせば、事業の成長が見込めます。
そのためにはまず、広告運用にかかわる全員が『共通言語を持つ環境』を構築すべきです。社内では基幹システムのデータに基づいて施策を評価する一方、広告代理店では広告媒体管理画面のデータで評価するといったケースが見受けられます。これでは、クリック数やコンバージョン数の乖離が起きていても気づかず、関係者間で評価軸が異なるまま施策を進めてしまう危険性があります。
データを『共通言語化』することで数値の変化をスムーズに共有、すばやく改善策を進めることが可能です。さらには、分析する人によって数値のずれも発生せず、正確に評価ができます」
広告施策は細分化して分析
広告運用にかかわる全員が同じフォーマットでデータを追うことにより、PDCAサイクルを「早く」「正確に」回すことができるが、利益につなげるには施策を「深く」分析することも欠かせない。
「広告施策に投資した金額と商品の売上を単純に比較すると、利益が出ているように見えるかもしれません。しかし、広告ごとにLTVまで分析すると、実際には損失となっている施策を発見することができます。
次の図でいえば、広告③が損失を出している施策にあたります。広告③に対して、CPAおよびLTVの改善案を実行することにより、事業全体で利益が最大化するのです。重要なのは、広告ごとにLTVを計測・管理することです。赤字が出ている施策は取りやめ、その分の予算を利益の出ている施策へ投資するなどの対応ができます」
実際に、「早く」「深く」「正確に」PDCAサイクルを回すことで、LTVの向上を実現した事例もある。
「当社が支援している、健康食品を扱う企業は、広告投資の限界額を拡大したいと考えていました。そこで、広告施策ごとに細分化してそれぞれのLTVを比較しました。
その結果、ほかの施策に対してLTVの数値が3分の1以下となっている広告があることがわかりました。全員が同じデータを閲覧できる状態だったため、改善すべき数値を社内ですぐに共有し、その広告への投資を中止。ほかの施策へ予算を割り振ることで、その後の利益の向上に貢献しました」
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「LTVをベースに広告投資を判断できる環境が整備できていない」「正しくLTV評価ができているか不安」という方向けに、「月間広告費」「限界利益率」「LTV期間」などを登録すると「F2~F3転換率」「LTV利益(上限CPA)」などD2Cビジネスに欠かせない指標を簡単に算出することができる「LTV診断ツール(無料)」をご用意いたしました。
LTVも広告投資の判断材料
事業を成長させる広告施策のPDCAサイクルには、「LTVまで『深く』分析する必要がある」と語る辻子氏。しかし、2回め購入、3回め購入、4回め購入……と、顧客の購買行動を実測していると、LTVの評価には1年から3年ほどの期間を要する場合がある。
「LTVの実測を待って投資の判断をすると、成長機会を逃してしまいます。また、実行した広告施策によってLTVが高まったことが1年後にわかったとしても、そのタイミングで1年前と同じ施策が効果を発揮するとは限りません。投資する広告施策を決定する前に、競合他社が同様の施策を打つという可能性もあります」
ここで辻子氏は、「LTVは予測することができる」と強調する。予測することで競合他社よりもすばやく判断を行い、差をつけることができるのだという。
「初回購入から3回めの購入までは、実測値で広告施策によるLTVの動向を確認しておく必要があります。ただし、4回めの購入以降は、LTVの動きに大きな変化が起きなくなってきます。4回め購入の段階までくると、ブランドと顧客の関係が安定するからです。すなわち、その後のLTVの動きは、過去データから予測できるということです。
F3転換まで成功した広告施策に着目すれば、1年後の実測値を待たずして、成果の良い広告施策に投資することができます。逆に、F3転換以前の結果においてLTVの動向が芳しくなければ、F4転換以降の結果を待たずに施策を取りやめ、効果が出ている施策に注力します」
CPAを頼りに、感覚で投資の意思決定を行っている事業者も多いだろう。LTVを予測することができれば、早い段階で広告投資全体が利益率の絶対基準に達しているかがわかる。また、将来の利益を最大化させるための投資配分へも活用できる。
「LTV Forecast」がF2転換率やLTVの評価までサポート
辻子氏のいう「共通言語化された運用体制」と「LTVを用いた投資判断」の重要性を理解していても、実現するには一筋縄ではいかない。しかし、多くの企業に導入されているアドエビスは、単なる広告効果測定プラットフォームとしてではなく、事業全体の利益拡大に貢献する機能が備わっているという。2022年4月には『アドエビス シンク』へと生まれ変わり、サポート範囲をさらに広げた。
「業界を問わず活用されているアドエビスですが、これまでに1万件の導入実績があります。とくにD2Cを含むEC事業者の導入事例は多く、培ってきたノウハウには自信があります。流入経路からコンバージョン獲得後まで一気通貫で分析し、既存顧客の維持を長期的に評価できるプラットフォームとなっています。
また、アドエビス シンクへバージョンアップしたことにより、クリックやコンバージョン計測の反映時間が最短30分となりました。人的ミスが目立つ計測パラメータの入稿も自動化し、適切なPDCAサイクルと広告運用を支える体制を整えています」
長期的な目線で利益を向上させるため、コンバージョン数だけではなくLTVにも着目しているアドエビス。D2C向けには、新機能として『LTV Forecast』が用意されている。広告効果測定プラットフォームという枠組みを超え、事業の成長に寄り添う考えだ。
「LTV Forecastを活用すれば、顧客が広告に接触してから2回めの購入をしているか、LTVの数値がどう変化しているかまで、細かく分析をすることが可能です。共通言語化された広告運用体制の構築に加えて『LTVを用いた投資判断』をサポートすることで、事業拡大に必要な意思決定の支援を積極的に行っています。
事業者側で注文データおよび前月分の広告費のアップロードを行うと、必要な数値を一覧で見ることができるため、スムーズな改善点の発見に役立つはずです。ご興味のある事業者は、お気軽に問い合わせください」