インテリア通販大手として知られるタンスのゲン株式会社は、品質と価格の面で競合他社と差別化し、日本全国に顧客を獲得している企業です。しかし、同社がEC事業をスタートさせた当時は経験や知識が十分でなく、手探りでビジネスモデルを確立してきたという経歴もあります。
この記事では、そんなタンスのゲンがEC事業に着手した経緯や、ビジネスを軌道に乗せるために採用したデジタル施策などについて、解説します。
タンスのゲン株式会社の企業情報・事業内容の概要
まずは、タンスのゲン株式会社の企業情報と事業内容について解説します。
タンスのゲン株式会社の企業情報
以下の表は、タンスのゲン株式会社の基本情報をまとめたものです。
社名 | タンスのゲン株式会社 |
---|---|
本社所在地 | 福岡県大川市大字下林310-3 |
設立年月 | 1964年1月 |
代表者名 | 代表取締役 橋爪福寿 |
株式公開 | 未上場 |
資本金 | 5,000万円 |
おもなグループ会社 |
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タンスのゲン株式会社の事業内容
タンスのゲン株式会社は、家具や寝具、その他インテリアを通信販売にて扱う、大手EC企業です。福岡県大川市を本拠地とし、同市を世界のインテリアバレーとしてアピールすべく、低価格で高品質な商品の販売を全世界に向けて展開しています。
安くて質が良い商品提供を実現するため、高度な品質管理体制を整備するなどして、顧客満足度の向上に努める国内企業です。
タンスのゲン株式会社の沿革
以下の表は、タンスのゲン株式会社の沿革をまとめたものです。
年月 | 沿革 |
---|---|
1964年1月 | 前身の有限会社九州工芸設立 |
1991年3月 | 福岡県筑後市に九州工芸筑後店開店、小売・オーダー家具を中心に活動 |
2002年7月 |
ネット販売スタート 筑後店で「タンスのゲン」オープン |
2004年3月 | ネット事業を大川本社に移転 |
2008年11月 |
新社屋と配送センターを大川市下林に新築・本社移転 社名を「タンスのゲン株式会社」に変更 |
2014年8月 | 福岡市内に物流拠点を設立 |
2016年11月 | 中国上海に子会社「上海箪笥的根商貿有限公司」設立 |
2021年12月 | ベトナムに駐在員事務所設立 |
1964年、婚礼家具メーカーとして創業した前身の会社は、オーダーメイド家具を扱うなどしながら九州エリアでの事業拡大を進めてきました。2002年にはインテリアメーカーとしては早期にオンライン事業に参入するなど、着実なノウハウの蓄積がうかがえます。
創業者の死去にともない、2004年以降は店舗を閉鎖し、本格的にEC事業に専念する方針を選択した同社は、配送センターや物流拠点の拡張を進め、確実な成長を遂げてきました。近年は海外での商品開発能力を強化するなどして、グローバル市場の開拓に向けた取り組みも加速しています。
ゼロスタートでEC売上200億円を達成したタンスのゲン株式会社の取り組み
EC事業で大きな成長を遂げ、今やEC売上は200億円を超えるタンスのゲン株式会社ですが、実はEC未経験からの方向転換を経験した会社でもあります。
同社がゼロスタートのEC事業で成功を収めた背景には、どのような取り組みがあったのでしょうか。
ECの強み・弱みに向き合った独自の取り組み
2002年にECサイトを立ち上げ、2022年に200億円を突破したタンスのゲン株式会社は、ECの強みと弱みを手探りで体得してきた企業といえます。
家具量販店のシェア拡大を受けて実店舗を縮小し、ECへと舵を切った同社がまず取り組んだのは、ECが持つメリットとデメリットの把握でした。インテリアECの課題はやはり実物を見られないことで、単価が高くサイズをイメージしづらいインテリアは、ECでの購買につながりづらいのが実情です。
同社ではこういったデメリットを少しでも小さくするため、Webページに商品の詳細をテキストで紹介するとともに、写真も多用するなどして情報を伝える工夫を重ね、順調に顧客を獲得していきました。
また、カスタマーサポート機能を充実させたことも、同社の成長に大きく貢献しました。購入者や購入検討者の不安を直接解消できる仕組みを整え、EC黎明期に問題視されたショップの不透明感を払拭することにも取り組んだとのことです。
Shopify導入で時代に合わせたECサービスの提供を実現
タンスのゲン株式会社がEC市場で強力なシェアを獲得できている理由のひとつに、時代に合わせた柔軟なサービス提供を体現していることが挙げられます。
2020年9月、同社は人気ECサービスのShopify(ショッピファイ)を導入してECサイトをリニューアルし、顧客課題の解消と満足度の拡大に取り組みました。Shopifyは越境ECサービスとしても強力なプラットフォームであるため、海外市場の開拓を志す同社にとっては、その面でも相性の良いサービスといえます。
リニューアルによって、従来のECサイトでは実装が難しい、動画コンテンツやgif画像を使った商品アピールなどが可能になり、注文件数は導入から1ヵ月で2,500件を突破したとのことです。
同社では従来ECモールでの販売に力を入れてきましたが、顧客とのコミュニケーションやサポートが理想通りに実現しづらいことを課題としてとらえています。また、ECモールでは競合との競争が激しく差別化も難しいため、自社の強みを活かしきれないことから、自社ECの刷新に至ったとのことです。
タンスのゲン株式会社の近年の動向
続いて、タンスのゲン株式会社の近年の動向についても確認しておきましょう。
土日祝日と当日配送の体制を構築。利便性向上に向けた取り組み
タンスのゲン株式会社は2022年8月、正午までに決済が完了した注文に対しては、土日祝日であっても即日出荷するサービスを開始しています。
インテリア商品は土日祝日に購入されることが多い反面、発送自体は週明けが一般的であったため、商品を迅速に手元に届けることができないという課題を抱えていました。
そこで同社では土日祝日であっても即日出荷ができる体制を整えることで、ユーザーの利便性向上を進めています。
家具や寝具のB2B販売サイト「タンスのゲンBUSINESS」開設。民泊事業者やホテル向け
一般消費者向けのみならず、タンスのゲン株式会社は法人向けのサービスも展開しています。2019年3月、民泊やホテル事業者に向けた家具や寝具のB2B販売サイト「タンスのゲンBUSINESS」を立ち上げ、市場シェアの拡大に踏み切りました。
タンスのゲンBUSINESSは、法人の利用しやすさに特化したプラットフォームです。10万円以上の注文の場合は末締め決済も可能で、大量注文には専門のスタッフが対応し、速やかな在庫の確保や別注を実現します。
タンスのゲン本店アプリがリリース。スマホからの買い物がより便利に
スマートフォンからの購買増加にともない、タンスのゲン株式会社は2021年10月、公式アプリをリリースしました。
スマートフォンのアプリから気軽に購買ができるようになったほか、商品の情報やその他イベントの情報をプッシュ通知で届けることで、ユーザーへの円滑な情報提供も実現しています。
また、SNSとの連携によってユーザーコミュニティの強化にも努めるなど、今後さらなる機能拡張が見込まれる施策です。
タンスのゲン株式会社の気になるトピックス
以下、タンスのゲン株式会社の気になるトピックスをまとめています。
2022年8月11日:タンスのゲン、22年7月期のEC売上高243億円 商品値上げ響き成長は鈍化
家具・家電EC大手のタンスのゲンの2022年7月期におけるEC売上高は、前期比7.4%増の243億9000万円となった。
2022年7月14日:「タンスのゲン」7月15日にネット出店20周年!運営ショップで記念イベントを開催
家具・インテリア×EC事業を展開するタンスのゲンは2022年7月15日(金)に、ネット出店20周年を迎えました。
2022年2月3日:家具、インテリアなどを販売するタンスのゲンが「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2021」ジャンル大賞・総合8位を受賞
2022年1月26日、タンスのゲンが運営している楽天市場内のネットショップ『タンスのゲン 楽天市場店』が、55,000店舗の中からベストショップを決める「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2021」のインテリア・寝具・収納部門ジャンル大賞と、総合8位を受賞しました。
2021年11月25日:タンスのゲン公式アンバサダー始動 「タンスのゲン」と動画クリエイターが共同で商品を開発
「タンスのゲン」では、これまで特定の分野に知見をもつ動画クリエイターやインフルエンサーの方と商品情報の発信や商品開発を取り組んでいたプロジェクトを本格的に「タンスのゲン公式アンバサダー」として始動しています。
まとめ
タンスのゲン株式会社は、EC経験ゼロからスタートしたオンライン販売特化のインテリアメーカーですが、試行錯誤を繰り返すことで、高度に洗練されたEC運用を実現した企業でもあります。
ECモール販売のイメージが強い同社は、近年自社サイトを刷新し、自社アプリを開発するなど、自社サイト専売に向けた取り組みを強化しています。海外にも商品開発・物流拠点を設置し、グローバル展開に向けた施策を進めている点も印象的です。
手探りでECの最適な活用方法を見出す姿勢から学べることは多く、EC事業がトレンドとなっている現在でも、他社との差別化を考えるうえで参考になる企業といえます。同社のEC施策やサービス提供の動向を確認しながら、自社で実行できそうな施策やアイデアがないか、チェックしてみてはいかがでしょうか。