3年前の約束を果たしたHPE
以前から本コーナーで取り上げてきたHewlett Packard Enterprise(HPE)は、2022年6月28日より3日間、アメリカ・ラスベガスで年次カンファレンス「HPE Discover 2022」を開催。3年ぶりのリアル開催で、8,000人が集まりました。
HPEはサーバー、ストレージなどの機器を提供するハードベンダーですが、2018年にCEOに就任したAntonio Neri氏の下、数年計画でサービスカンパニーへの転身を図っています。その流れで、今年のHPE Discoverには特別な意味がありました。というのも、Neri氏は前回リアルでイベント開催した2019年に、「3年以内にすべての製品を『アズ・ア・サービス』として提供する」と約束したからです。
アズ・ア・サービスとは、サブスクリプション形式でサービスとして製品(の機能)を使用できるようにすること。これまでものを売っていたメーカーからすれば、売りかたが大きく変わります。
HPEの場合、機器が備える処理能力やストレージをサービスとして使用できる「HPE GreenLake」というブランドを展開。顧客へのメリットとしては、面倒な初期設定や運用管理、大型の初期投資が不要などといった要素が挙げられます。
Neri氏は基調講演で3年前の約束に触れ、「HPEは現在、すべての製品を“アズ・ア・サービス”として提供している」と語りました。HPE GreenLakeで提供するサービスは70種を超え、利用する顧客は6万5,000社、12万人がプラットフォームを使っていると言います。アズ・ア・サービスの受注は前年比2倍ペースで成長を遂げているそうです。本イベントでは、新たに企業が社内用に構築する仮想化環境をサービスとして利用できる「HPE GreenLake for Private Cloud Enterprise」などを発表しました。
もうひとつ新たに発表されたのが、「分散型エンタープライズ」コンセプトです。店鋪、工場などの現場、自動車などの「エッジ」がインターネットにつながり、そして高性能化する中で生成されるデータが増えています。2025年には新たに生成されるデータの約半分がエッジという予想もあり、HPEは以前から「エッジからクラウドまでをカバーする」としてきました。今回は2021年にCTOに就任したFidelma Russo氏が、分散型エンタープライズを実現するために取り組んでいる技術を紹介しています。
また、同社がAdvanced Micro Devices (AMD)、オークリッジ国立研究所と共同で開発したスーパーコンピュータ「Frontier」が、世界ランキング「TOP500」で見事に1位となったことも発表(ちなみに前回の1位は日本の「富岳」です)。コンピュータメーカーとしての技術力と研究開発のDNAがいまだ健在であることを印象づけました。