グローバル企業が多数採用する機械学習の不正検知Forterとは
━━まずはForterの説明をお願いします。
野田(Forter) コロナ禍もあり、ここ10年でEコマースは大きく変わったと感じています。10年ほど前は、小売業であれば実店舗が中心でECはまだまだ小さかった。それが今後はさらにECが大きくなっていくだろうと見ています。そんな中、デジタルは非対面特有の課題が出てきている。不正や悪用が増えてしまっています。そこで私たちは2013年にForterを創業し、9年間歩んできました。まずはマイケルから、Forterについての詳しいお話をさせていただきます。
マイケル(Forter) 私はイスラエルの小さな街に育ちました。子どもの頃はお店で欲しいものを選んで受け取り、その後両親がお店に来てお金を払うという取引をしていました。子どもにも両親にもお店にとっても都合が良く、商いの根底に信頼がありました。
ECは非対面であることから信頼を築くのが難しくなり、残念ながら不正決済が増加しています。各事業者様ごと対策をされており、ある一定の基準を定め目視で行うルールベースの施策が主流です。その場合、誤判定が起きたり、問題ない決済にもかかわらず承認されずに販売の機会損失が起きたりしています。私たちは不正はもちろん、商いにおける機会損失が大きな問題だと考えています。
非対面においても信頼ある商いができないだろうか。その考えからサイバーセキュリティの専門家として2013年にイスラエルで創業し、2014年にプロダクトリリースしました。リソースの半分以上はプロダクトに割き、日々精度を高めています。目指すのは、Eコマースすべての信頼を提供するプラットフォームです。事業者様が個別に、この取引は良い・悪いと判断する必要がないところまで持っていきたいと考えています。
創業時の2013年にForterを経由した流通総額が約115億円(グローバル総計、日本円換算)だったところ、2021年は約27兆円に成長しています。2021年にチャージバックを防いだ金額が約900億円、機会損失を防いだ金額は約6,200億円です。これらの成果を評価され、直近で500億円以上の資金調達を行っています。
━━システムの特徴をご説明いただけますか。
マイケル(Forter) 基本的にはエンタープライズ向けに提供しています。ユーザーにデジタルIDを付与し、振る舞いや属性データを蓄積しています。IDは12億に上り、日々増加しています。機械学習を用いて日々判定の精度を高め、それぞれの事業者様用にモデリングして提供します。業種業態ごとにユーザーの振る舞いは異なりますが、業種業態問わず対応できるのが特徴です。
サードパーティからデータを買うことはありませんが、機械学習の精度を上げるにはデータは多ければ多いほど有効です。ECプラットフォームや決済代行業者とパートナーとなることで、データを増やすことができています。ECサイトAのデータをECサイトBに提供するといったことはありません。私たちの一元的なデータとお客様のご要望から、ECサイトAで購入したユーザーがECサイトBで購入する際に取引を成立させるべきか判定を行います。
Eコマースは以前はただ購入の取引を行うだけの場所でしたが、今では中長期的な関係を築くことが重要になっています。それはEコマースにおける大きな変化です。しかし、中長期的な関係を築くために行う施策がさらなるリスクを生む可能性もあります。
たとえばユーザーに利便性を提供するため、アカウントにクレジットカード情報を紐づけると、アカウントを乗っ取る不正が起きやすくなります。新規ユーザーにアプローチするためにお得なクーポンを発行すれば、新規アカウントを無数に作って都度クーポンを受け取ろうとするユーザーもいます。さらに返品のハードルを下げた場合、たとえばアパレルであれば購入して一度着用しただけでその後返品するといった行為も実際に起きています。
このような悪用・濫用を行うユーザーに対し、事業者様ごとどのようにお付き合いをされたいかの基準に基づいてコントロールできるようなプラットフォームになっています。
━━機械学習となるとやはりデータは大きいほうが良いので、グローバル企業であることは重要ですね。
野田(Forter) データの面ではもちろん、事業者様のグローバル展開、越境ECなどにも対応できます。また、たとえ事業者様が国内事業のみの場合でも、不正組織はグローバルに展開していますから、国内ソリューションの場合、不正の対策が限定的になる可能性もあります。もちろん、日本は独自の商習慣もありますからローカライズは重要だと考えています。ありがたいことに引き合いも多数いただいておりますので、日本のビジネスにより柔軟に適応していきたいと考えています。