こんにちは、PLAY Inc.の齋藤和幸です。前回の記事では、VMD視点で店舗とECの相互送客を実現する方法や、事前期待値の低下を防ぐ見えかたの連携などについて書かせていただきました。今回は、店舗とECで同一商品の展開時期に“時差”があることの問題点やその解決策、VMDが在庫管理にも携わる必要性についてお伝えしていきます。
店舗・ECの販売“時差”を解消 販促効果を最大化しよう
時差とは、店舗に商品が入荷して販売開始するタイミングと、ECでのそれに差が出ることを指しています。この問題については各ブランド、縫製工場などが協力し、努力することで解決に向かいつつあります。しかし、まだまだ商品展開に時差のあるブランドや、ある程度同期できていても100%ではないブランドも多いのではないでしょうか。
まずは、なぜそのような時差が発生するのかをご説明します。店舗は、商品が届くと検品後すぐに販売開始ができます。それに対してECは、商品を撮影したりキャプションを書いたりサイズを測ったり……などと、いわゆるささげ業務と呼ばれる多くの作業が必要となります。
この作業がある分、店舗よりも販売開始に時間がかかるため、同じタイミングで商品が入荷するとどうしてもECの展開が遅くなってしまうのです。各社差はあるものの、一般的にささげ業務開始から販売まで、早くても1週間ほどかかるところが多いのではないかと感じています。
また、店舗とECだけではなく、ECとSNSでの展開にも時差が生じているケースも散見されます。たとえば、Instagramに新商品を投稿する際、商品タグを付与してInstagramショッピングやECへの誘導を行うものの、遷移先の商品詳細ページが更新されておらず、導線が途絶えているなどの状況がこれにあたります。
時差により発生する複数の課題
時差があるなら仕方がない、ECの初速が店舗に比べて遅くても問題ないのでは?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、我々VMDからすれば時差は大問題です。商品の納期は、店舗でのフェアや館販促などの集客にかかわるイベントに合わせて計画される、もしくは納期に合わせてイベントが計画されることがほとんどです。
表には出ないインナーフェアなども含めて、「このタイミングで商品が入荷するので、そこに合わせてお客様の呼び込みをしよう」という集客・販促が、店舗納期を軸に実施されるため、時差が1週間あるとECはその分遅れて展開をすることになります。
この際発生するのが、店舗とECでお客様へのイベント告知が1週間ずれてしまうという課題です。先発となる店舗の告知では、ECへの誘導ができないため訴求効果が半減してしまう。また、後発となるECの告知は、ぱっと見で「1週間前と同じか」と判断されてしまい、深く読んでもらうことが難しくなります。
そして以前の記事で言及したように、VMDは店舗とECの見えかたを連動させることで、イベント訴求における視覚的効果を最大限に発揮できますが、これも実現することができません。さらに、「ECで見た商品を店舗で確認する」といった現代の購買行動とも外れてしまうため、店舗での集客にも悪影響を及ぼすでしょう。
通常時期は店舗とECの相互送客を実施できているブランドも、集客が見込めるイベント時に機能していなければ、大きな機会ロスを生む残念な結果となってしまいます。そのため、店舗とECの時差をできる限り解消し、商品展開を同期することがたいへん重要となります。
時差を解消する方法
それでは、実際に時差を解消する方法を紹介します。これはブランドの状況によって、さまざまではありますが、例としては次の方法が挙げられます。
- 納前(納品される前に検品用として生産される商品)のささげ
- 1点サンプルや各色サンプルのささげ
- 店舗の商品展開をECに合わせる
これらの方法で多く行われているのは、納前やサンプルのささげだと思いますが、どの方法でも店舗とECの時差を解消し、両者が一体となってイベントに集中できるようになります。
実際に時差の解消を実現するにあたっては、EC担当者が主軸となって各部署と連携しながら調整を行うのが理想的ではないでしょうか。私の場合は、自身がECとVMDを担当していたため、MDや生産管理部署と連携しつつ、イベントの対象となる商品の納期と納前の手配を死守してもらうようにお願いをしておりました。
今後、アフターコロナの時代が訪れたとしても、デジタルでの購買に慣れたお客様は店舗とECを適切に使い分けていくことでしょう。そのため、「EC展開が遅いから」という理由でブランドスイッチをされないためにも、これまで以上に時差解消に努める必要があると考えています。