こんにちは、PLAY Inc.の齋藤和幸です。前回の記事では、OMOを実現させるため、VMDが積極的にかかわりたい他部署と、コミュニケーションの際に気をつけておきたいポイントを述べました。
第6回となる今回は、無計画にECを強化したりOMOを急いだ結果、本末転倒な事態に陥っていないか一度立ち止まっていただきたく、メッセージを送りたいと思います。
EC注力ブランドが増、その時実店舗の在庫は?
直近2年間を振り返ってみると、コロナ禍の影響もあって店舗・商業施設の集客が厳しくなり、急ピッチでEC事業を拡大していく企業が増えました。それ以前からしっかりとEC戦略を立てて取り組んでいた企業・ブランドはともかく、「コロナ禍で売上ダウン!ECでカバーしなくては!」と突貫でECを始めた後発組が、まず取り組んだのは「EC在庫量の増加」ではないでしょうか。
言いかたは悪いですが、もともとアパレルには「売上を上げる=在庫量を増やす」といった考えが根付いています。商業施設との商談でも、提示される売上目標に対して、ブランドの営業が提示する施策の多くは「商品投入量(=在庫)を増やす」がほとんどでした。それ以外では、人を増やす、特別なMDを投入する……などでしょうか。
このやりかたが根付いているため、「ECを伸ばせ!」のミッションに対しても、ひとまず「ECへの商品投入量(=在庫)を増やす」施策を打ったところが多いであろうというのも、ご納得いただけると思います。
では、ECに対して増やす分の在庫はどこからくるのでしょうか。そもそも店舗の売上減少による対策としてEC売上の伸長を狙ったため、本来店舗へ届けるはずの在庫がECへと回されました。
当初は緊急事態宣言などで館が閉まり、店舗が営業できていなかったため、ECに在庫を回しても問題ありませんでした。しかしながら緊急事態宣言が解除され、店舗の営業も再開するとなると、店舗でも商品が必要になります。
デジタル化が進む中、ECを縮小するという選択はないでしょうから、ECに回していた分をそのままに店舗へ戻すことは難しい。ならば全体の商品供給量を上げたいところですが、コロナ禍で下がった売上をすべてECでカバーすることはできず、企業全体の売上ダウンは免れなかったところがほとんどですから、こちらも現実的ではありません。
そのため、企業が持つ現状の在庫でやりくりすることになります。やりくりの対象となったのが、配分ランク下位(売上規模・利益率が低い)店舗でした。
しっかりとEC戦略を立てて取り組んでいた企業・ブランドは、EC分を加味したMD計画を立て、発注しています。一方、コロナ禍をきっかけとしたEC後発組は、昨年対比でEC売上300%〜500%といった目標をEC事業部に突き付けました。そして、その目標に対する売上アップ施策=在庫を増やすため、配分ランク下位店舗を犠牲にしてECへと商品を投入したのです。皺寄せを受けた下位店舗は、コロナ禍で来店客が減った上、商品の奥行きも少ないという厳しい状況で運営しなくてはならなくなりました。
店舗で受注してEC在庫から配送したり、ECで注文した商品を店舗で受け取る、店舗とECの連動、すなわちOMO施策は、ひとつの有効な対処法ではありました。しかしながら、リードタイムが通常のECよりも長くなってお客様をお待たせしたり、梱包が見劣りしてしまったりと、うまく機能しない部分もありました。結局のところ配分ランク下位店舗は、コロナ禍によるEC強化により、売上を落とすこととなったのです。