52週MD・マーケティング×動画連動で新時代の購買体験を作る
イオン、カメラのキタムラなど、さまざまな企業のオムニチャネルを推進してきた逸見さんは、2021年10月にLoop Now Technologiesとのアドバイザー契約締結を発表した。同社は動画マーケティングプラットフォ ーム「Firework」を提供する企業であり、一見すると従来とは異なる領域への挑戦と見られるが、逸見さんはアメリカの動きを踏まえ、「オムニチャネル・OMO推進と動画活用は、切っても切り離せない関係になりつつある」と話す。また、「これはいわゆる専門店を運営する企業に限らず、幅広い商品を取り扱う小売企業(GMS)でも同様」だと続けた。
「日本では、アパレル企業などが率先して動画やSNSの活用を行っていましたが、商品の網羅性を売りにする小売企業では発信できる情報が多岐にわたるため、運用が難しいと考えられていました。しかし、アメリカではすでにSafewayやJewel-Oscoを展開するAlbertsons Companiesなどで動画活用がスタートしています。こうした企業が使っているのが、Fireworkです」
従来の小売はレシピ動画サイトに広告出稿するなど、外部のプラットフォームやリソースを活用して自社や取扱商品の宣伝を行ってきた。しかし本来、情報発信をする際には52週MDとマーケティングを連動させる必要があり、自社で発信の場や機会を持つほうがコントロールのしやすさや顧客接点創出の観点から見ても、大きな成果につながるポテンシャルを秘めている。
また、動画はECでのセレンディピティ創出や店舗で商品選択に迷った際の情報補完といったように、ひとつの情報を複数チャネルに活かすことができるため、 OMOの視点からも非常に有用性が高い。店舗面積が広い、もしくは多層階で売場展開をするGMSは、商品と顧客との出会い創出が欠かせない上、目的の商品の探しやすさといった利便性向上も考えなければならない。動画は双方に寄与する可能性がおおいにあると言える。
「イオンリテールが『レジゴー』を導入するなど、日本のGMSも商品選択後の利便性を高めようと尽力していますが、これを商品選択時にも拡大できるかどうかが、今後の事業成長を左右します。コロナ禍でYouTubeの平均視聴時間は長くなり、動画を見る習慣が顧客の間にも根づきました。5Gが本格的に活用されるようになれば、その動きはより加速するでしょう。CMの延長線上で動画活用をとらえるのではなく、店頭や店舗スタッフによる活用も含めた新しい時代の情報訴求を考えることが大切です」