2020年に、中期改革プロジェクト「TSI INNOVATION PROGRAM 2024」を発表し、2024年までに企業全体で「常に生き残れる事業体になる」ための変化を遂げると宣言した株式会社TSI ホールディングス。「1st Phase」として掲げていた組織統合を終え、2021年以降は「未来への投資」として人財や事業を育てる仕組み作りやEC・デジタルシフト、新規投資などに取り組んでいる。
同社の中でも先進的な取り組みを行うブランド「ナノ・ユニバース」では、自社アプリを2021年9月にリニューアル。顧客起点でオンラインとオフラインを統合した新たな店舗体験の構築に着手している。同アプリリニューアルと11月から首都圏3店舗を起点に導入を開始する新装置、これらからどう新時代の店舗体験を作り上げるのかを、同社にてDX推進に携わる岸さん、中川さんに聞いた。
2024年までに課題を乗り越え新たな成長を目指す
最も幸せなファッションカンパニー」を目指し、変化を続ける意思表明として発表した「TSI INNOVATION PROGRAM 2024」。同プログラムでは、コロナ禍以前からアパレル業界全体が直面していた市場規模の縮小、店舗売上の減少、大量消費・大量廃棄問題などさまざまな課題を乗り越えた上で、新たな成長を遂げる指針が記されている。
「ブランドや提供する商品だけでなく、企業全体のリデザインを意図してこのプログラムは発表されています。変化することを恐れず、顧客への提供価値をきちんと見直そう。TSIホールディングスの各ブランドが持つ価値を改めて見直し、体現しながらさまざまなアクションを起こしていこう。そのひとつに、ユニファイドコマース戦略が掲げられ、私たちは店舗とECの体験作りの見直しを行っています」(岸さん)
アパレル企業に属する立場から、岸さんは「この5年から10年ほどで、顧客の価値観に大きな変化が起きている」と続ける。自身が感じる「良いもの」を吟味し、長く使えるもの、生活に寄り添ってくれるものを求める顧客が増え、端的に言えば「無駄遣いをしなくなった」と言えるが、商品を販売する視点から見れば、選ばれる努力なしには生き残ることが難しい世の中になっているということでもある。
「必要としてくれている顧客に対し、必要なだけの服を作る。良いものを作り、的確に顧客にお届けする。こうした考えかたに私たちも切り替えなければなりません。当社は多数のブランドを有するため、ブランドごとにきちんと顧客と向き合ったビジネスを作り上げていく必要があります。顧客を知る有用な手段のひとつにデジタルがあると考え、きちんと行動で返していくためにも、デジタル推進を進めています」(岸さん)