「作品」の種類が豊富なCreema この特徴が故に抱えるレコメンドの課題とは
クリエイターとユーザーが直接売買を行うCtoCマーケットプレイス「Creema」。ECサイト・アプリにて、ハンドメイドを中心に現在1,200万点以上もの「作品」を取り扱う。Creemaを運営する株式会社クリーマは、「本当にいいものが埋もれてしまうことのない、フェアで新しい巨大経済圏を確立する」をサービスミッションに掲げ成長を続けており、2010年のサービスローンチから約11年が経った2021年、アプリダウンロード数は1,200万件以上、流通総額は150億円を上回った。
名古屋(クリーマ) Creemaには、現在約22万人のクリエイターが存在し、さまざまな作品を生み出しています。ハンドメイドと言うと手芸・雑貨のイメージを抱く方も多いでしょう。もちろんいわゆる手芸品を出品いただく方も多いですが、ファクトリーブランドが出品するファッションアイテムや革製品、作家・職人がこだわりを持って作った1点ものの器やインテリア作品などもあり、Creemaには本格的なクリエイターによる多様な作品が集まるという特徴があります。私は、こうした多岐にわたる作品の魅力をより多くの方に届けられるよう、CreemaのECサイト・アプリのプロモーション・プロダクト・MD領域を担当しています。コロナ禍においてはユーザー数が大きく伸長しましたが、サービスを拡大する伸びしろはまだまだ大きいと感じています。
「本当にいいものが埋もれてしまうことのない、フェアで新しい巨大経済圏を確立する」というサービスミッションを、1,200万点以上の「作品」を扱うサービスで実現するには、テクノロジーの力も必要となる。ECサイトでユーザーにアイテムを見つけてもらうにはレコメンドの活用が有効な施策のひとつだが、Creemaではそう単純にはいかなかった。それぞれのクリエイターがこだわりを持って作り上げる「作品」の多くは1点もので、在庫は小ロット。通常のECサイトで言うところの「在庫切れ」が頻発する。さらには、クリエイターが生み出す「作品」が、規定のジャンルやカテゴリーにおさまりきらないという特徴もあった。
こうした状況下でもユーザーに適切な「作品」を提案できるよう、高精度のレコメンドを実現すべく努力を重ねてきたクリーマだが、通常のECサイトと同様の方法を採るだけでは、同社が目指すレベルまで精度を高めることが難しかったと言う。
柏村(クリーマ) Creemaでは、ロットの少なさから作品の入れ替わりが激しいため、作品1つひとつから取得できるデータが少ない、すべての作品の特徴を適切に把握することが難しいということもあり、従来自社で行っていたレコメンドに限界を感じていました。
クリーマはこうしたレコメンドの問題を解決すべく、約3年前にサイジニアが提供するレコメンドエンジン「デクワス.RECO」と「デクワス.VISION」をCreemaのECサイト・アプリに導入。「デクワス.RECO」は、サイト内に潜在するアイテムをピックアップする機能があり、数が多いが故にアイテムが埋もれてしまうことを防ぐほか、ユーザーに最適化されたレコメンドをリアルタイムで判断・実行する機能を有する。また、「デクワス.VISION」は、ECサイトが保有するすべてのアイテム画像の解析を行った上で、視覚的に類似した特徴を持つアイテムを探すという方法を採っているため、レコメンドの精度をより高めることが可能となる。
画像解析AIの活用で1,200万の「作品」を瞬時に識別
柏村(クリーマ) レコメンドエンジンの導入にあたっては、数社のツールを検討していました。サイジニア様のツールを採用したのは、「デクワス.RECO」と「デクワス.VISION」のレコメンドのカバー領域が広く、作品のデータをレコメンドに反映する即時性も高いことから、前述したようなCreemaの課題を解決できると考えたためです。また、担当の方がとても親身になって話を聞いてくださったため、導入後のサポートに関しても安心できると感じたことも大きなポイントでした。
吉井(サイジニア) レコメンドでは一般的に、ユーザーが見たもの・買ったもののデータを起点とする行動履歴型の方法を採るものが多いのですが、この方法にはある弱点が存在します。ユーザーがアイテムを購入する際、同じカテゴリーのものを続けて購入することは稀でしょう。これが、たとえば「ジャケットを買った後にそれに合うパンツを買う」といったように、関連性があるアイテムの場合は行動履歴型のレコメンドが役に立ちますが、多くのカテゴリーを跨いでアイテム展開を行っているECサイト・アプリでは、「関係のないアイテムがレコメンドされる」という事態を引き起こしてしまうことがあります。
また、行動履歴型ではユーザーのアクションがなければレコメンドを行うことができないため、アイテム数が多いCreemaでは一度もアクセスされないままに売れ残るアイテムが出てくる可能性があります。当社が提供する「デクワス.RECO」はこうした行動履歴型の弱点を克服する機能を持っているため、多数のアイテムを扱うECサイト・アプリに向いていると考えています。
さらに「デクワス.VISION」では、そもそも行動履歴を必要としないことに加え、アイテムのデザインを分析する画像解析AIの活用により、Creemaの1,200万点以上のアイテムすべてを瞬時に見分けてレコメンドを行うことができます。クリエイターの「作品」は、名前をつけて管理しようとすると難しいですが、画像からはクリエイターの思いなどさまざまな情報を得ることができるため、デザイン性が高いというアイテムの特徴からしても、Creemaでは「デクワス.VISION」の機能が十分に活きていると言えるでしょう。
クリーマは「デクワス.RECO」「デクワス.VISION」に続き、レコメンドメールを送る「デクワス.MAIL」を導入している。同ツールについても、「アイテムの入れ替わりが早いCreemaの特徴に合っている」と吉井氏は言う。
吉井(サイジニア) 一般的なメールのレコメンドでは、メールを作成する段階でレコメンドするアイテムを決めています。しかしユーザーは、配信されてすぐにメールを見るとは限りません。1週間後に目を通すこともあるでしょう。ここで問題となるのは、「メールを開いた際にはレコメンドしたアイテムが売り切れている場合がある」ということです。とくに1点ものが多いCreemaでは、こうした事態が起こりやすい環境だと言えます。「デクワス.MAIL」では、メールを開いた瞬間にレコメンドするアイテムを決定します。そのため、メールを開くのが1週間後だったとしても、その時点で販売可能なアイテムを紹介することが可能となります。
二人三脚で創る「クリエイターの活躍機会」と「セレンディピティ体験」
「デクワス.RECO」「デクワス.VISION」「デクワス.MAIL」を導入したクリーマ。これらのツールは、クリーマの思想を体現するために重要な役割を果たしている。
名古屋(クリーマ) Creemaは、「ものづくりに対して真摯に取り組むクリエイターに、活躍の機会を提供するプラットフォームである」という意識を強く持っています。しかし、自社で行っていたレコメンドやキュレーションでは人が介在する部分が多かったために、作品の選定に偏りが出てしまうケースもありました。現在では「デクワス」の導入により、機械的な判断基準も追加されたことで、すべての作品を比較的フェアな判断基準で表示できるようになったと感じています。
また、Creemaのユーザーに対してさまざまな作品の提案が可能になったため、「探していたものとは違う、新たな出会いを生み出す」というセレンディピティ体験を提供できることも、「デクワス」導入で生じた効果のひとつです。
吉井(サイジニア) ECサイト・アプリでは、離脱せずにアイテムを見てもらうことが非常に大切です。「デクワス」は、「出くわす」という体験を起源として名前がついているのですが、「デクワス」を通して「あっ、こんなのあったんだ」というセレンディピティ体験を提供し、潜在的なニーズを掘り起こす手助けができたらと考えています。クリーマ様はまさにこれを実現すべく「デクワス」を活用してくださっているので、当社としてもたいへん感謝をしています。
クリーマは、ECサイト・アプリのさまざまな箇所で「デクワス」のレコメンドを活用している。それぞれのツールが持つ特徴を最大限に活かしているからこそ、適切な効果を得ることができたと言えるだろう。実際にどのように活用するかは、クリーマとサイジニア両社の綿密なコミュニケーションのもとに決定し、二人三脚で進行してきた。
名古屋(クリーマ) レコメンドの活用方法については当社が意見を出すこともあれば、サイジニア様からご提案をいただくこともあり、ともに相談をしながら決めていきました。
柏村(クリーマ) 何か改善したいと思う部分があった際、気軽にご相談できることがとてもありがたいです。会話ベースの問いかけに対しても具体的なご提案をしていただいています。Creemaは、ほかのECサイト・アプリに比べ独自性が強く、類似するプラットフォームがあまりないため、しっかりと特徴を理解していなければ適切な提案をすることは難しいと思います。サイジニア様が真剣に向き合ってくれているという点においても、とても心強く感じています。
吉井(サイジニア) 当社はひとつの企業に深く入ってお手伝いをすることが多いため、サポート体制が整っています。こうした部分でもクリーマ様のお役に立てていることはとても嬉しいですね。
“個”の時代を生きるクリエイターとユーザーをつなぐCreema
Creemaというプラットフォームを磨き上げることを通じて、一心同体で成長してきたクリーマとサイジニア。良好な関係を築く両社だが、今後クリーマが挑戦したいと考えていることに対してもサイジニアは全力でサポートを行っていく。
名古屋(クリーマ) 当社ではマーケットプレイス運営を中心としたオンライン事業のほかに、クリエイターの祭典「ハンドメイドインジャパンフェス」をはじめとする大型クラフトイベントの開催や、店舗運営などのオフライン事業も行っています。同事業は、クリエイターの熱や作品の魅力をユーザーが直接体感できる場であり、カルチャーの普及・拡大と、ユーザーとクリエイターの関係構築の観点で大切な存在だととらえています。各事業を同時に推進する当社では、「オンラインとオフラインのつながりをいかに持たせるか」という点も、課題設定することが可能な事業ポートフォリオを保持しています。
吉井(サイジニア) 当社のグループ企業であるZETAでは、ユーザーが店頭などで見たものをオンラインから出荷するなど、オンラインとオフラインを紐づけするソリューションも提供しています。OMO推進に関しては、当社を含めグループ全体でサポートをさせていただけたらと思っています。
最後に名古屋氏は、今後個人の情報発信力が増加する、個人で副業を行う人が増えるなどということが進んだ先に到来するであろう、“個”の時代の中でクリーマができること、実現したいことについてこう語る。
名古屋(クリーマ) “個”の時代が来ると言われて久しいですが、今後はその流れがさらに加速するとも考えられる中で、当社はこれまで行ってきたように、ものづくりに携わるクリエイターやデザイナーへの活動支援を通じて、“個”で活躍できる場を牽引・拡大していくという重要な役割を担っていると考えています。
コロナ禍でマスク不足が生じた際には、早い段階でCreemaのクリエイターとともにハンドメイドマスクの製作と普及に取り組んだことで、数多くのマスクがCreemaに出品。当社の調査によると、一時期は我々のプラットフォームがオンラインでもっとも多くマスクを取り扱っている、という状況にもなりました。当社は同取り組みについて、クリエイターの努力に感謝と誇りを感じていると同時に、社会課題の解決に役立つことができたのではないかと自負しています。
このように “個”の力が集結すると、大企業の取り組みよりもスピード感のある、大きな力を発揮することがあります。こうした取り組みを行うためにも、クリエイターが作る作品とユーザーの出会いをいかに創出するかが大切になるでしょう。今後も「デクワス」を活用させていただきながら、クリエイターとユーザー双方を幸せにできるよう、真摯により良いサービス作りに取り組んでいきます。
▼サイジニアが提供するWeb・店舗の売上を拡大するレコメンドソリューション「デクワス」の資料請求は「資料ダウンロードページ」よりお願いいたします。