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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

季刊ECzine vol.14特集「Evolution Fashion Commerce~DX推進で切り拓くアパレルの未来~」

「なくてはならぬ企業」になるため 実店舗スタッフの“編集力”で挑む アダストリアのデジタル接客

 実店舗スタッフの編集力活用で、オンラインでも信頼関係を醸成。「.st」が目指すマルチブランドのコミュニケーションプラットフォームとは。 ※本記事は、2020年9月25日刊行の『季刊ECzine vol.14』に掲載したものです。

 niko and ...やLOWRYS FARMなど、人気のカジュアルファッションブランドをマルチ展開するアダストリア。2014年に自社EC「.st(ドットエスティ)」をオープンし、現在は1,000万人を超える会員数を擁するまでに成長した。「ここまで大きくなったのは、ひとえに実店舗のスタッフの協力のおかげ。実店舗とスタッフの力は当社にとってかけがえのない財産だと実感しました」と語るのは、同社でマーケティング本部長、広告宣伝部長、WEB事業部長を兼務する田中順一さんだ。同社はさらに、各店舗のスタッフのスタイリングを見せる「STAFF BOARD」を開始するなど、個人の販売力、コミュニケーション力をデジタル施策にも活かし、オンライン・オフラインいずれでもショッピングを快適に楽しめるような環境作りに邁進している。その基本的な考えかたや施策を成功させるための工夫、今後の発展の可能性などについて聞いた。

株式会社アダストリア マーケティング本部長 広告宣伝部長 WEB事業部長 田中順一さん

実店舗スタッフの声がけで達成できた会員数1,000万人超え

 .stは、2014年のサイト開設時から、徐々にサービスや取り扱いブランドを拡充。2020年7月現在、計28ブランドが集結し、会員数1,000万人を超える一大ファッションECサイトへと成長した。その節目となったのが、業界内でもいち早く実現させた実店舗とECのアカウント統合だ。.st上では、購入した顧客が自発的に実店舗のIDと統合を行えるよう、マーケティングオートメーションシステムを導入したが、実際に統合を推進する上で大きな動力となったのは、実店舗スタッフによるアナログな声がけであった。

「ID統合の仕組みを作っても、利用されなければ意味がありません。お客様自身でご登録いただく必要があり、登録をうながすのは、お客様が実店舗で買い物をされた際がもっとも効果的と考えました。そこで実店舗でのお会計時にアカウント登録を勧めてもらえるようにブランドと連携をしました。実店舗で働くスタッフにとっては、手間のかかることではありますが、全員がアカウント登録の意味を理解して、本当に真摯に取り組んでくれています。その協力がなければ、この登録者数という成果を得ることはできなかったと思います」

 そして、.stのキラーコンテンツのひとつとして、実店舗とECの連動のみならず新規顧客獲得にも貢献しているのは、実店舗スタッフによるスタイリングページ「STAFF BOARD」だ。

「以前の実店舗スタッフのスタイリング画像は、お客様からはいわば“店舗のスタイリング”という形で見えていたと思います。しかし、SNSの普及やさまざまなツールの登場により、個人がフォーカスされる時代へと変化していきました。こうした動きを受け、2018年に個人のスタイリングをより見せるべく、STAFF BOARDをリリースしました」

 実店舗を主たるステージとしながらも、働く個人にフォーカスした情報を発信する。単に実店舗とECサイトのIDを統合するだけでなく、ブランドの個性を感じられる情報やコンテンツがEC上に揃っているからこそ、顧客も積極的に.st上で情報収集や会員登録、商品購入を行うと推察できる。

「ブランドとお客様の主な接点が、実店舗で働くスタッフ1人ひとりであることはこれからも変わりません。しかし、いまやひとりのスタッフを見ると、オフライン・オンラインどちらの顧客接点も存在しています。そして、お客様にとって両者は、ブランドという世界観で一体となって見えているはずです。顧客側の購買行動に対する変化もありますが、実店舗スタッフが意識を変え、実際に行動に起こしてくれていることは、ECでの売上を大きく伸ばす結果にもつながっています」

 そもそも本部からの依頼に対して、自店という枠組みを超え、会社一丸となって盛り立てることができるのも、「スタッフそれぞれのブランドに対する愛や理解があってこそ」だと田中さんは語る。ブランドを大切に思うからこそ、オンライン・オフライン関係なく「ブランドのファン」を増やしていきたいと考え、自ら積極的に行動に出る。オンラインとオフラインをつなぐための仕組みを整えるだけでなく、こうしたそもそもの文化・風土の醸成に日頃からブランド責任者や現場スタッフが一丸となって取り組んでいるからこそ、.stにも良い影響が起きていると言えるだろう。

「社外向けの企業マーケティング活動ももちろん大切ですが、こうした掛け算を行ううちに、企業ごとの風土醸成や、『社内にどのような雰囲気を作っていくとお客様により喜んでいただけるか』を考える社内マーケティング活動もより重要であると感じています」

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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