コカ・コーラなど大手企業のD2CにMagento Commerceが選ばれる理由
「Magento Commerce」は、アドビが提供するコマースプラットフォームである。顧客に応じた表示内容の出し分けなど、ストアフロントの編集を容易に行える特徴があり、注文管理機能が標準搭載されているため、決済やシッピングを含めたバックオフィス機能を別途開発する必要がない。カスタマイズ性が非常に高く、他のシステムと連携しやすい点も強みのひとつだ。流通金額の大きさに応じ、固定年間費用で支払を行えるため、コストメリットが出やすい価格体系とも言える。
さまざまな業種やビジネスモデルで利用されているMagento Commerce だが、D2Cの分野でもトップ企業から高い評価を受けている。コカ・コーラ社は、同プラットフォームを活用し商品のラベルに好きな名前を印字することのできるキャンペーン「Share Coke」を展開したところ、平均注文額が22%増加したと言う。Canon Australiaでは、Magento Commerce を活用し、プロのカメラマンが自分の撮影した写真を販売できるチャネルを構築。7.5倍のコンバージョン率を計測した。導入企業からの評価だけでなく、Forresterやガートナーをはじめ第三者機関による賞を受賞するなど、EC基盤のリーダーポジションを常に保っている。
アドビでシニアソリューションコンサルタントを務める森田セルジオ氏は、D2Cビジネスのメリット4点を次のように挙げた。
- 直接販売のチャネルを持つことにより顧客のデータを収集しやすくなる
- 各ブランドのロイヤリティを強化しやすくなる
- ユーザーのニーズに応じて商品をカスタマイズすることができる
- カスタマイズした商品の3Dモデルを使い、リッチなコンテンツを作成できる
Magento CommerceがECプラットフォームの必須機能を網羅していることは上図で一目瞭然だが、先に挙げたD2Cビジネスの4つのメリットにこれらの機能がどう貢献するのか、森田氏は順を追って説明した。
D2Cと好相性 Magento Commerceとアドビ製品群の連携プレー
まずは「顧客データ収集」への貢献について。Magento Commerceは購入履歴や返品返金処理など、ユーザーのあらゆる操作を確認できるだけでなく、自社にある既存のCRMシステムと連携しやすいようAPIも提供している。
「顧客情報の分析には、ぜひAdobe Analyticsを活用していただきたいです。Adobe AnalyticsにはMagento Commerce専用のテンプレートがあるため、両者の連携はスムーズに行えます。これらを併用することによって、ECサイトの状況をダッシュボード形式でリアルタイムに分析でき、施策の効果やユーザーの購買プロセスを簡単に見える化できます」(森田氏)
次は、「ブランドのロイヤリティ強化」への貢献について紹介。Magento Commerceはユーザーのセグメントを細かく設定できるため、あらかじめ定められた条件に基づいて、VIPユーザーにはログイン時に特別キャンペーンを実施したり、商品Aを購入したユーザーには商品Bの画面を表示したりするなど、施策の出し分けが可能となる。さらに、MagentoにはCMS機能が搭載されており、ドラッグアンドドロップで簡単にページを構築することも可能だ。前述のセグメント機能とこのCMS機能を組み合わせると、ユーザーに合わせたページビルドによって個別の体験を提供できるようになる。
また、Magento CommerceとAdobe Analyticsの連携が顧客データの収集を加速させるのと同様に、組み合わせて活用することでブランドのロイヤリティ強化を後押しするソリューションもある。今年4月、アドビの提供するAI「Adobe Sensei」を利用したMagento Commerceの商品レコメンデーション機能がリリースされた。個人情報を含まないユーザーの行動データがMagento CommerceからAdobe Senseiに送られ、それをもとにAdobe Senseiが推奨すべき商品を導き出してMagento Commerceに戻すという流れ。これにより、従来式のルールベースによる商品レコメンドでは成し得なかった「ユーザーが本当に求めている商品」のレコメンドができるようになっている。なお、Adobe SenseiはMagento Commerceの画面からコード不要ですぐにインストールが可能だ。
さらに便利な新機能として、アドビのメディア販売サイト「Adobe Stock」とMagento Commerceの連携が挙げられた。動画や音楽など、数百万のクリエイティブ素材を自由に購入できるため、キャンペーンページの構築やリッチ化が容易に行える。
「D2Cにおいてブランド力は重要な意味を持ちます。モールに出店する際は、モールのトンマナに合わせた表現が求められますが、D2Cならブランドが持っている商品をブランドの好きなように提示することができます。Magentoはブランドが自由な表現をするための機能を提供しています」(森田氏)
D2Cビジネスを展開する企業の中には、複数ブランドを運営するところも多いだろう。そんな企業にとって、マルチサイト、マルチ言語、マルチ通貨に対応し、ひとつのプラットフォームで複数のサイトを構築できるMagento Commerceは運用効率の面でも大きなメリットを感じられるはずだ。同じプラットフォーム上でそれぞれの担当者が権限を持つサイトにアクセスできる仕組みとなっているのも特徴となっており、将来的に複数ブランドの展開や新ブランドのローンチを見据える企業にとっても役立つ機能と言える。
「ここまでご説明した機能はMagentoの標準機能です。これらをそのまま使うのではなく、それぞれの企業に合ったフロントエンドやバックエンドにフルカスタマイズできるので、自由な表現が鍵を握るD2Cビジネスの運営には最適なプラットフォームだと考えています」(森田氏)
3Dモデルの活用で商品画像のリッチ化と作成コスト削減が可能に
ここで、森田氏からシニアマネージャーを務める原周一郎氏にマイクが引き継がれ、アドビの3Dマテリアル作成ソフトウェア「Substance」について説明が行われた。
昨今、ECならびにD2Cの領域で3Dモデルを活用したいという引き合いが増えていると原氏は話す。
「3Dモデル自体は昔から存在していましたが、主に製造のプロセスでしか活用されていませんでした。今はテクノロジーが進化し、商品を3DやCGで表現してお客様に展開する流れが生まれています」(原氏)
上記2枚の写真のうち、一方は実際にカメラを使って撮影した画像で、もう一方は3DとCGを使いデジタル加工した画像だ。一見して識別することが難しいほど3Dの技術は進化している。
こうした3Dの技術はコマースの現場でどう活用されているのか。家具メーカーのIKEAは商品点数が非常に多いため、現在カタログやウェブサイトに掲載される商品画像のうち、約9割はデジタルコンテンツに置き換わっていると言う。デジタルコンテンツは複製しやすく、色や質感違いの商品バリエーションを容易に表現できるのが大きなメリットとなる。
SubstanceはAdobe Creative Cloudを構成する製品群のひとつで、CADのデータから質感を書き出し、マテリアルを作成するためのツールだ。こうしたテクノロジーが登場する以前は、ひとつのプロダクトの商品画像を撮影するために大掛かりな機材やプロのカメラマンが集められ、膨大な時間や工数がかけられていた。Substanceを使えば、CADのデータから書き出した質感を3Dモデル作成ソフトに付与するだけで商品画像が完成し、スピーディーにマーケットへ展開することができる。
「撮影コストの削減や時間短縮はもちろん、商品画像をよりインタラクティブに表現できるのもSubstanceの魅力です」(原氏)
柔軟なECプラットフォームのMagento Commerceと、スピーディーかつインタラクティブな商品画像の表現を可能にするSubstance。これらふたつを中心に、他のアドビの製品群と組み合わせることで企業はD2Cビジネスの4つのメリットを存分に享受することができるようになるというわけだ。
「アドビのソリューションはMagento Commerceだけでなく、Adobe PhotoshopやAdobe Illustrator、Adobe Analyticsなど多岐に渡ります。クリエイティブ作成からデジタルマーケティングまでEnd-to-Endでサポートできるのがアドビの強みです」(原氏)