スマートフォンの登場後、日本でもテクノロジーを活用したオーダースーツブランドがいくつか出てきたが、「その名を知られている」ではなく、「顧客が何度もリピートしている」という意味で定着しているブランドはそう多くないのではないか。
そんななか、誰もが知る「紳士服コナカ」が営む「DIFFERENCE」は、2019年9月で3周年を迎える異色の存在だと言える。老舗企業がいかにテクノロジー等を活用し、新規事業であるDIFFERENCEを成功に導いたのか。リピートにつながる顧客とのコミュニケーションとは。本事業のゼネラルマネージャーである、中嶋傑さんにお話を聞いた。
オーダースーツの時代が来る10年前の先見の明
大手紳士服専門店のコナカが展開するオーダースーツブランド「DIFFERENCE」にEC業界の注目が集まっている。実店舗ファーストで既製服のスーツを提供してきた同社だが、3年前に立ち上がったDIFFERENCEは、実店舗とアプリの両輪を備え、初回のみ実店舗でプロのテイラーによる採寸を受ければ、2着目以降は初回のデータをもとにアプリでスーツのカスタムオーダーができるという仕組みだ。
クリエイティブディレクター 佐藤可士和氏がトータルプロデュースした実店舗でのリッチな体験と、テクノロジーによる利便性を掛け合わせたDIFFERENCEは、いまキーワードのひとつとして注目される顧客体験(Customer Experience:CX)を実現した、日本企業の数少ない成功例として、各所で紹介されている。
ブランドのローンチは3年前だが、コナカがそこに目をつけたのはもっと早かった。紳士服業界の内外で「オーダースーツ=敷居が高い」というイメージは根強く、売上のほとんどを既製服が占めていた約10年前から「オーダースーツの時代が来る」と予感していたのは、同社の湖中社長だ。
「敷居の高いオーダースーツを誰もが簡単に楽しめるブランドがあったらおもしろいのでは?」と長年温めていたオーダースーツビジネスの構想をいよいよ実現させるために、当時コナカのゼネラルマネージャーとして東京23区、神奈川、埼玉を中心に店舗を統括していた中嶋傑さんをDIFFERENCEのブランドマネージャーとしてプロジェクトをスタートさせた。