ECzine読者の皆さま、はじめまして。Oisixなどの食品宅配事業を展開しているオイシックス・ラ・大地の白石と申します。
このコラムでは、ここ数年で注目が高まっている「CX = Customer Experience(顧客体験)」について、基礎的な考えかた〜実践的なフレームワークまでをできるだけわかりやすく紹介します。
第1回は、具体的な方法論に入る前に知っておくべき、「CXの大切な基礎知識」についてです。
そもそもCX(顧客体験)とは?
はじめに、これまでの注目ワード同様、さまざま解釈のある「CX」という言葉の意味について、クリアにしたいと思います。わたしの解釈は以下です。
商品/サービスを認知するタイミングを起点とし、その後のすべての体験において、商品/サービスの「機能性」や「価格」といったスペックを磨く活動だけでなく、その商品/サービスを通して得られる「楽しい」「使いやすい」「ドキドキ」などのポジティブな感情を伴う体験を演出・設計すること。
これでは「わかるようで、わからない……」という方も多いと思いますので、優れたCXを持つスターバックスの例とともに以下のポイントについて、詳しく見ていきましょう。
CXを理解する3つのポイント
- スペックを高めるだけでなく、感情を高める演出をする
- 「もう一度体験したい」と思ってもらえるほどの演出をする
- 体験を演出する範囲を正しく理解する
1.スペックを高めるだけでなく、感情を高める演出をする
スターバックスと言えば、もちろん「コーヒー」ですよね。そのコーヒーが持つ「おいしさ」や「価格」「香り」は、そのモノ自体が保有するスペック的な価値となります。
スターバックスは、商品クオリティも高いですが、カップに素敵なメッセージを書いてくれるスタッフの方の対応や、居心地の良い店舗空間にも、つい気持ちが高まりますよね。
CXでは、そうしたモノ自体の価値だけでなく、その商品/サービスを通して得られる「うれしさ」や「心地良さ」といったポジティブな感情の創出を大切にしています。
これは、消費スタイルが「モノからコトへ」とシフトし、より一連の体験としての価値提供が必要な時代となったことが背景にあります。
Oisixでも、モノの価値として、商品の「おいしさ」は、当然大切にしていますが、その商品を育てる農家さんのストーリーを伝えたり、「かぼッコリー」や「トロなす」といった一風変わったネーミングにお化粧することで、食卓で楽しい会話が生まれたらいいな、という願いを込め、食の楽しさが味わえるようなサービスを作っています。
つまりCXで重要なのは、商品/サービスにおけるスペック的な価値だけでなく、その商品/サービスを通して得られる感情を高める設計もするべき、ということです。
CXの「X」は、左右対称の文字で、2本の線によって形作られています。それぞれの線をスペック的価値と感情的価値とし、それらをバランス良く設計することが大切です。どちらかに偏ってしまっては、良いCXとは言えません。