CFから見えてくるのは「LINEの楽天化」
2000年設立のLINEは、韓国企業NAVER(17年度売上高約4,700億円)の子会社。ポータルサイト「livedoor」を運営していたライブドアを買収していることでも知られる。
現在の経営基盤である「LINE」アプリの提供開始は2011年。その「LINE」上でゲーム、動画、写真、音楽、ニュースなどを提供するサービスを展開し、利用者や広告主から収益を得る、というのがビジネスモデルである。重要視しているのは、月間アクティブユーザー数。国内の月間利用者は7,500万人を超える。
LINEの17年12月期の売上高は、「サービス提供1,543億円」や「物品販売108億円」など、合計は1,671億円である。うち国内販売は7割強、残りは台湾など海外だ。
キャラクターなどの「スタンプ」の販売や「LINEゲーム」内における課金収入、広告などで売上規模を拡大しているわけだが、内訳をさらに詳しく見ておこう。
ネット3社「主要指標」比較
表にしたように、LINEは事業区分として「コミュニケーション・コンテンツ」と「広告」に大別している(18年度は変更)。
「コミュニケーション」は「LINEスタンプ」が中心。「コンテンツ」は「LINEゲーム」「LINEプレイ」などである。その他に分類している「LINEフレンズサービス」を含めて、「コミュニケーション・コンテンツ」部門の売上規模は906億円である。
「広告」部門は、「LINE公式アカウント」「LINEスポンサードスタンプ」「LINEポイント」などを「メッセンジャー型広告」に分類。「タイムライン」「LINEニュース」への掲載は「パフォーマンス型広告」としている。
「NAVERまとめ」や「livedoor」における「ポータル広告」を含め、広告事業売上高は765億円だ。
16年12月期との比較では、コミュニケーション・コンテンツの5.4%増に対し、広告は39.9%増。18年1月-9月における広告収入も前年同期比で46%を超える伸び率を示しており、広告収入は順調に伸びているようだ。
社名の上に示した「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」「投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)」「財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)」を確認してほしい。いずれも5期累計の数値だ。
LINEの5期累計営業CFは600億円、5期累計投資CFは△963億円、5期累計財務CFは1,514億円である。 投資CFの「△」は、社外に出ていった金額を示す。いわゆる赤字(出金超過)である。営業CFの黒字は、本業の活動でキャッシュを獲得したことを示す。財務CFの黒字は、借入金や株式・社債の発行にともなう収入があったことを意味する。
金額の規模はともかく、LINEと楽天は同じパターンである点に注目すべきだろう。営業CFと財務CFがプラス、投資CFは赤字というのは、成長をめざして設備投資や企業買収を積極的に進めている企業に見られるパターンだ。
LINEは上場にともなう新株発行収入が約1,270億円あったこともあり、積極的な投資活動を展開。事実、会社設立からの利益の蓄積を示す利益剰余金は依然として赤字。18年9月末現在は△101億円と、17年12月末と比べると赤字幅が拡大傾向である。 楽天の利益剰余金は、現在でこそ3,000億円を超えているが、黒字に転換したのは設立から13年後の10年12月期(売上高3461億円)。売上規模が2,032億円とLINEと同水準だった06年12月期の利益剰余金は、△568億円(赤字)だった。
ヤフーの場合は、親会社のソフトバンクグループの支援などもあって財務的にも恵まれ、早い時期から利益剰余金の黒字を確保。売上高314億円で初めて連結決算を組んだ2002年3月期の利益剰余金は、102億円の黒字だった。