提供開始から3年で数千社がAmazon Payを導入
Amazon Payは、Amazon以外のECサイトでもAmazonアカウントを使って簡単に決済が行えるID決済サービスだ。日本では2015年に「出前館」と「劇団四季」の2サイトで提供開始して以来、約3年を経た現在では導入ECサイトが数千社にまで増えている。決済金額もそれに比例して右肩上がりで成長しているという。
ユーザーはAmazon Payを使うことで、複数のECサイトをAmazonアカウントひとつで利用できるようになる。買い物のたびに住所や支払い情報を入力する必要がなく、最短2クリックでスピーディーに注文を完了することも可能だ。さらに、Amazon Payならではの「安心感」も提供できると井野川氏は説明する。
「初めて訪れたECサイトでクレジットカード番号や個人情報を入力するのは不安に感じる方も多いでしょう。Amazon Payを使えばそれらを入力する必要がなく、決済はAmazon側で処理されるので、安心して購入いただけます。さらに、Amazon Payで購入した商品なら何かトラブルがあった場合にも、Amazonマーケットプレイス保証の対象(※最高30万円まで、一部適用されない商品サービスもあり)となります」
Amazon Payの導入で新規顧客の獲得やCVR改善が期待できる
一方、Amazon Payを導入するEC事業者側にとっては、「新規顧客の獲得」や「コンバージョンレート(CVR)の改善」といったメリットが期待できる。これらは先に挙げたユーザーにとってのメリットの結果として得られるものだ。
その裏付けとして、井野川氏はAmazon Pay導入パートナーであるソリューションプロバイダーの調査データなどを紹介した。
「ソリューションプロバイダー4社の調査(フューチャーショップ、ecbeing、アイピーロジック、GMOペパボ調べ)によると、ゲスト購入者の40~50%がAmazon Pay決済を利用しており、そのうち会員となった購入者の割合は60~80%でした。他の決済手段から会員となった割合は20~25%であり、新規会員獲得率が非常に高いことがわかります」
CVRの改善についても、Amazon Pay未導入企業の月間受注件数の増加率が+10%であったのに対して導入企業は+22%と、2倍ほど高い結果が出たという。(フューチャーショップ調べ)
これらに加えて、Amazon Payでの決済に関してはAmazon本体と同レベルの不正検知が行えることも事業者にとっては大きなメリットとなる。
国内でも実店舗決済を開始!
さらに広がる「コネクテッド・コマース」の世界
「Amazonでは、オンラインやオフライン、デバイスを問わずに、より良いショッピング体験をすべてのお客様にご提供できる『コネクテッド・コマース』の実現を目指しています」と語る井野川氏。そのコネクテッド・コマースを支える基盤となるのが、AmazonアカウントおよびAmazon Payだという。
たとえば、デバイスとしては従来のPCやスマートフォンだけでなく、スマートスピーカーの「Amazon Echo」など「Alexa」搭載デバイスもAmazon Payの決済に対応。すでに、声(音声)の入力だけで日本赤十字への寄付が行えるサービスも始まっている。
また、オフライン(実店舗)での取り組みとして、米国ではリアル書店の「Amazon Books」やコンビニエンスストア「Amazon Go」をはじめ、Amazon以外の店舗でも一部飲食店などでAmazon Payの決済サービスを展開。今年8月には、日本においてもAmazon Payの実店舗での決済サービスを開始した。
国内でのAmazon Payの実店舗決済は、東京都のカフェや食料品店、福岡市の飲食店などでスタートしており、今後も順次サービスを拡大していくという。
AppBank Storeは、なぜAmazon Payを導入したのか
セッション後半では、株式会社AppBank Store 取締役 EC事業部 部長の村田将幸氏をゲストに迎え、同社のAmazon Pay導入事例が紹介された。
「AppBank Store」は、iPhoneを中心としたスマートフォン関連アクセサリーやガジェットを中心に販売するECサイトおよび実店舗を運営。ECサイトは自社ドメインのほか、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの各モールにも出店している。また、特に自社ドメインサイトは、最新のiPhoneケースと関連グッズ・ガジェット&ライフスタイルの最新情報やレビュー記事を配信するオウンドメディア「AppBank Storeマガジン」からの集客に強みを持つ。
井野川 Amazon Pay導入以前の課題をお聞かせください。
村田 多くのEC事業者に共通すると思いますが、「新規顧客の獲得」です。我々はメディア(AppBank)を持っており、そこから一定の集客はできているものの、なかなか購入にまで至らない。新規で来ていただいたお客様のCVRを改善することが最大の課題でした。
井野川 その理由をどのように分析されたのでしょうか。
村田 AppBank Storeのことを知らないお客様にとっては、やはり知らない店でモノを買うことの不安が大きく、カートに商品を入れていただけなかったのでしょう。一方でカゴ落ちも多かったので、情報入力など注文完了に至るまでのフローに問題があると考えました。これらを改善して、新規のお客様にとっても「買いやすい」環境を実現するために、Amazon Payの導入を決めました。
導入後は新規顧客のCVRが1.6倍に向上
井野川 Amazon Pay導入後の効果はいかがでしたか?
村田 CVRが大幅に改善されました。全体では約1.3倍、新規のお客様に限ると約1.6倍になっています。既存のお客様も伸びていますが、やはり新規の伸びが大きいですね。
井野川 実際に利用されたお客様の声などを教えてください。
村田 おかげさまでSNS上では、「買いやすくなった」「面倒な手順が減って便利」といったポジティブな反響をいただいています。
井野川 決済方法全体の中で、Amazon Payはどのくらいの割合で使われていますか?
村田 現状では、クレジットカードを抜いてAmazon Payがもっとも多く決済に利用されています。導入当初の利用率は10%程度でしたが、2017年に予約商品の決済にも対応したところ大幅に利用率が伸びて30%程度になりました。さらに直近では、9月の新型iPhoneの発売を受けて新規顧客が増えたこともあり、利用率は35%を超えています。
新規顧客獲得に向けたマーケティング支援ツールとしてもおすすめ
井野川 導入の難易度についてはいかがでしたか?
村田 開発作業は社内エンジニア1名で、20日程度で完了しました。スムーズに実装できたと思います。また、導入後も新規顧客獲得に向けたAmazon Payの告知強化のアドバイスなど、継続してサポートしていただいています。
井野川 あらためてAmazon Payを利用して感じたメリットを教えてください。
村田 AppBank Storeにとっては単に決済手段のひとつというだけでなく、新規のお客様を開拓するうえで外せないマーケティング支援ツールとして捉えています。費用面では他の決済手段と比べても大きく変わらないので(※Amazon Payの手数料は4.0%、デジタルコンテンツの場合は4.5%)、新規顧客獲得のために有効なツールを探しているEC事業者は、まずマーケティング支援ツール兼決済手段として、Amazon Payを試してみてもよいのではないでしょうか。
井野川 最後に今後、Amazon Payを活用して挑戦したいことやAmazonに期待することなどがあればお聞かせください。
村田 現状は、主にスマートフォンのアクセサリーなどで幅広く新規のお客様を開拓しています。次のステップとして、獲得したお客様それぞれの好みに合ったガジェットや雑貨などの商品を提案し、購入していただき、ロイヤルカスタマー化していくことが課題です。そのために有効なソリューションの提供、たとえばAmazonのデータベースを活用したAppBank Store商品のレコメンド機能などを今後、期待したいですね。